目次Contents
この記事のサマリー
・「虻蜂取らず」は2つを同時に追ってどちらも得られない意味の慣用句です。
・「虻蜂取らず」の読み方は「あぶはちとらず」です。
・「虻蜂取らず」の類語は「二兎を追う者は一兎をも得ず」が代表的です。
仕事でも日常でも、目の前に魅力的な複数の選択肢があると、「あれもこれも手に入れたい!」と思ってしまうものですよね。ところが結果として、どれも中途半端になってしまったという経験を持つ人は少なくないのではないでしょうか?
そんな状況を端的に表す言葉が「虻蜂取らず」です。
この記事では、「虻蜂取らず」の意味や由来、例文での使い方、類語、英語における表現などについて解説していきましょう。
「虻蜂取らず」とは?
まずは、「虻蜂取らず」の読み方と意味を確認しましょう。
「虻蜂取らず」の読み方と基本の意味
「虻蜂取らず」の読み方は「あぶはちとらず」です。辞書には、以下のように記載されています。
虻蜂(あぶはち)取(と)らず
二つのものを同時に取ろうとして両方とも得られないこと。欲を出しすぎると失敗することのたとえ。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
複数の選択肢を追いかけた結果、結局どれも実らなかった場面で、「虻蜂取らず」と表現します。
「虻蜂取らず」の成り立ち
「虻蜂取らず」は、古い文献にも見られる慣用句ですが、成り立ちについて明確な由来は示されていません。
古くは「虻も取らず蜂も取らず」と言ったことが記録されており、江戸期から近代にかけて多くの文献に登場します。では、なぜ虻と蜂の両方を取ろうとするのかについては、ことわざだけでは断定できないと示されています。
参考:『日本国語大辞典』、『故事俗信ことわざ大辞典』(ともに小学館)

「虻蜂取らず」の使い方|具体的な例文で理解する
次に「虻蜂取らず」を使った例文を見ながら、具体的な使い方を紹介します。
「二つの企画を同時に進めた結果、虻蜂取らずになってしまいました」
複数の業務やプロジェクトを同時に進めようとして、結果としてどれも思いどおりの成果が出なかった状況を振り返るときに使います。
応用例:「今回の進め方は虻蜂取らずでした。次回は一つに集中します」
「複数の学習計画を立てたものの、虻蜂取らずに終わりました」
計画を詰め込みすぎたことから、どれも中途半端に終わってしまい、成果につながらなかったときにも当てはまります。
応用例:「あれもこれもと欲張ると、虻蜂取らずになるから、まずは優先順位を決めよう」
虻蜂取らずの類語・対義語
「虻蜂取らず」と近い意味を持つ言葉や、反対の概念を持つ言葉を整理することで、この言葉への理解を深めます。
類語|「二兎を追う者は一兎をも得ず(にとをおうものはいっとをもえず)」
「二兎を追う者は一兎をも得ず」は、「虻蜂取らず」とほぼ同じ意味を持つことわざです。
意味は、二つの目的を同時に追いかけると、どちらも手に入れられないことを表します。
西洋から幕末期に日本へ伝わったとされ、短期間で普及したそうです。そのため、古くからあった「虻蜂取らず」は徐々に使われなくなっていったそう。
対義語|「専一(せんいつ・せんいち)」
「専一」とは、他を顧みず、ただ一つの物事に力を注ぐことを意味します。
「虻蜂取らず」が分散による失敗を示すのに対し、「専一」は、一つのことに集中する姿勢を表します。
対義語|「一心不乱(いっしんふらん)」
「一心不乱」は、心を集中して、一つだけに向き合うさまを示す言葉です。同時に複数を得ようとして失敗する「虻蜂取らず」と対照的な方向性を持っています。
参考:『デジタル大辞泉』、『故事俗信ことわざ大辞典』(ともに小学館)

「虻蜂取らず」の英語表現
「虻蜂取らず」に近い意味を持つ英語表現を整理します。
“fall between two stools”
辞書でも挙げられる表現に“fall between two stools” があります。
これは直訳すると「二つの椅子の間に落ちる」という比喩で、二つのことを同時に得ようとした結果、どちらにも落ち着かず、かえって失敗する状況を指します。
例文
“By trying to serve two masters, he ultimately fell between two stools.”
(二人の主人に仕えようとした結果、彼は結局、虻蜂取らずに終わった。)
“chase two hares and catch neither”
“chase two hares and catch neither” は、「二匹の野うさぎを追ってどちらも捕まえられない」という意味です。
複数の目標を同時に追うことの難しさ、そして最終的にすべてを逃してしまう結果を教訓としています。
例文
“If you try to major in both science and art at the same time, you risk chasing two hares and catching neither.”
(もし科学と芸術の二つの分野を同時に専攻しようとすれば、虻蜂取らずになる。)
参考:『プログレッシブ和英中辞典』、『プログレッシブ英和中辞典』(ともに小学館)

「虻蜂取らず」に関するFAQ
ここでは、「虻蜂取らず」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「虻蜂取らず」の由来や語源は明確に分かっているのですか?
A. 辞書では明確な語源は示されていません。
古くは「虻も取らず蜂も取らず」と言われた記録がありますが、なぜ虻と蜂を同時に取ろうとするのかまでは断定できないとされています。
Q2. 反対の意味にあたる表現はありますか?
A. 「専一」や「一心不乱」が挙げられます。
複数を同時に追う「虻蜂取らず」と対照的な方向の語として扱えます。
Q3. NGな使い方はありますか?
A. 相手を批判する意味合いで使うと、不快に受け取られる可能性があります。
自分の振り返りとして用いた方がいいでしょう。
最後に
二つのことを同時に進めた結果、どれも思うように実らなかった場面を端的に示す言葉が「虻蜂取らず」です。
この言葉は、欲張らずに一つに集中することの重要性という教訓を私たちに与えてくれます。
辞書の定義に沿って意味や類語、使い方を押さえておくことで、会話やメールでも迷わず使えるようになります。状況を整理したいときや振り返りの場面で、この言葉を活用し、次の行動へのヒントにしてみてください。
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