「年貢の納め時」とは?簡単に基礎知識を解説
「年貢の納め時」の読み方は「ねんぐのおさめどき」です。結論を先延ばししようとしている相手に対し、覚悟を持って決めるようにうながす際などに使います。
それでは、年貢の納め時とはどのような言葉なのか、基礎知識をさらに確認しましょう。ここでは、詳しい意味や語源・由来、江戸時代の年貢の納め時はいつなのか、使い方・例文を解説します。
意味は「物事をあきらめなくてはならない時」
年貢の納め時の意味は、「物事をあきらめなくてはならない時」です。もともとは「悪事をしつづけた者が捕まって罪に服する時」のことを指していた表現が転じて、「物事をあきらめなくてはならない時」「物事を決心をする時」の意味で使われるようになりました。
年貢の納め時は、これまで続けてきた物事に見切りをつける決心をするような場面で使われます。
年貢の納め時の語源・由来
年貢の納め時の語源は、平安末期から江戸時代まで実施されたといわれる「年貢」です。年貢とは農民に課した租税のことで、年貢を納める時がくれば米や現金などを領主に受け渡していました。
年貢は納めざるをえなかったことから、年貢の納め時という言葉が使われるようになったようです。また、年貢は内心嫌々ながらも妥協して払うもの。これまでのような自由がなくなってしまうことに対し、諦めや諭すようなニュアンスがある言葉といえます。
江戸時代の年貢の納め時はいつ?
実際、江戸時代におこなわれていた年貢は、夏から冬までが納め時だったようです。江戸時代に、深輪村(現在でいう埼玉県北葛飾郡杉戸町)の名主に渡した領収書が残っています。
夏に納める畑の年貢のことを「夏成(なつなり)」といいます。夏成の納期は麦の収穫期に合わせていて、新暦でいう7月下旬前後に納めていました。
また、秋に収める年貢を「秋成(あきなり)」といいます。秋成は米の収穫時期に合わせて数回納めていました。果実の成熟が早い品種は新暦でいう9月下旬前後、それよりも成熟が遅い中稲(なかて)は新暦10月下旬前後が収穫の始まる時期だったようです。
その後、年貢の総額と最終的な納期が村に通知されます。年貢の皆済期日は「冬成(ふゆなり)」といい、旧暦12月に設定されました。
年貢の納め時の使い方・例文
年貢の納め時の使い方を、簡単な例文で確認しましょう。
・この街で起こった犯罪の犯人は、長い間逃亡していたが、最近になって自首してきた。もう年貢の納め時だと感じたようだ
年貢の納め時の関連語もチェック!
年貢の納め時の関連語も、あわせてチェックしていきましょう。
年貢の納め時の類語・言い換え表現
年貢の納め時の類語・言い換え表現は、たとえば以下のものがあります。
・腹を括る(はらをくくる)
・万事休す(ばんじきゅうす)
・一巻の終わり
・諦め時
「腹を括る」とは「覚悟を決めること」を指す言葉です。この場合の「腹」とは「気持ち・心・気力」、「括る」とは「決意を固めること」を意味します。
また、「万事休す」とは「もはや施す手段がなく、万策尽きる」ことを指す言葉です。
年貢の納め時の対義語表現
一方で、対義語表現は以下のとおりです。
・二の足を踏む(にのあしをふむ)
・起死回生(きしかいせい)
「二の足を踏む」とは「ためらうこと」「尻込みをすること」を指します。「二の足」とは歩き出してから二歩目のことです。
結婚に関して使う際の年貢の納め時とは?
年貢の納め時という言葉は、結婚に関して使われるケースもしばしば見られます。以下の例文のように、独身生活を楽しんでいたり、理想とするパートナーを追い求めたりして結婚するかどうかの結論を先延ばしにしていた人が、最後の覚悟を決める言葉として使われるようです。
・いろいろな女性との噂が絶えなかったあの人が、とうとう結婚するようだ。彼も年貢の納め時だな
とはいえ、昨今は結婚や恋愛のスタイル、考え方も多様化しており、結婚することが当たり前と考えられる風潮ではなくなっているため、このような使い方には気をつけたほうがいいかもしれません。
年貢の納め時という言葉を正しく理解しよう
年貢の納め時は、物事に見切りをつけるような場面で使われます。
年貢の納め時の類義語・言い換え表現としてあげられるのは、「腹を括る(はらをくくる)」「万事休す(ばんじきゅうす)」「一巻の終わり」などです。また、対義語表現には「二の足を踏む(にのあしをふむ)」などがあります。
言葉の詳しい意味や使い方、関連する表現などをあわせて確認し、正しく使える言葉を増やしましょう。
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