「思慮分別」とは?
「あの人は思慮分別がある」というように使われる、「思慮分別」という言葉。大人になると「思慮分別」のある行動や振る舞いを求められる機会も多くなるものです。そこで今回は、「思慮分別」の意味や使い方、類語・対義語、英語表現についてみていきましょう。
「思慮分別」の意味や読み方
「思慮分別」とは、「物事の道理や善悪などを注意深く判断すること」。目の前の問題に対して、冷静かつ慎重に判断を下すことを言います。日常生活における「思慮分別」のある人とは、落ち着いた振る舞いができる人とも言えるため、褒め言葉として受け取っていいでしょう。
ちなみに、「思慮分別」の正しい読み方は、「しりょふんべつ」。「しりょぶんべつ」と読むと「種類ごとに分ける」という意味となるため誤りです。続いて、「思慮分別」の言葉の成り立ちを紐解いていきましょう。
「思慮分別」の語源・由来
「思慮分別」は、「思慮」と「分別」という熟語に分けられます。「思慮」は、「思慮深い」というように、「十分に考え、思うこと」。その時の状況や相手のことを考えて慎重に適切な判断を下すことを言います。また、「分別(ふんべつ)」は、「物事の善悪や損得をよく考えること。道理をわきまえていること」。よって、「思慮分別」とは、「物事をよく考え、判断すること」という意味になるのです。
使い方を例文でチェック!
「思慮分別」は、ポジティブな意味としてもネガティブな意味としても用いられる言葉です。その場の状況に応じて適切に使い分けられるようになりましょう。
1:会社の代表として思慮分別がある行動をとった。
「思慮分別」のある行動は、大人として求められる振る舞いの一つと言えます。特に、重要な判断を下すことが求められる会社のトップや上役には、「思慮分別」のある行動や振る舞いが欠かせません。感情に振り回されず、スマートに適切な判断を下す能力が必要です。
2:彼女はまだ若いが、思慮分別のある人だ。
「思慮分別」は人の性格や振る舞いに対して使われます。「思慮分別」がある人は、相手を気遣う発言や行動をとることができるため、周囲からの印象もよく一目置かれる存在であることも。また、感情に振り回されず冷静な判断ができるので、仕事のミスが少ないことも信頼できるポイントです。
3:弟は感情的になると思慮分別のない言動をとるので、私たちは困ってしまう。
「思慮分別がない」は、ネガティブな意味としても使われます。身勝手な振る舞いをして周囲の人を困らせるような人のことを、「あの人は思慮分別がない」と表現することがほとんどです。怒った時やお酒を飲んだ時などに軽はずみな行動をとって信用をなくしてしまうこともあるでしょう。
類語や言い換え表現とは?
「思慮分別」は四字熟語なため、場合によっては使いにくいと感じることもありますよね。そんな時に覚えておきたい言い換え表現を紹介します。
1:思慮深い
「思慮分別」はやや硬い表現なので、会話の中では「思慮深い」と言い換えるといいでしょう。「思慮深い」とは、「物事を注意深く十分に考えるさま」。思考力があり、物事を慎重に判断することができる人に対して使われます。なお、「思慮深い」は「思いやりがある人」という意味で使われることがありますが、そのような意味はないため注意しましょう。
・思慮深く冷静な彼女は後輩から慕われている。
2:熟慮断行
「熟慮断行(じゅくりょだんこう)」とは、「よく考えた上で思い切って行うこと」。「熟慮」は、「よくよく考えること」。「断行」は、「困難や反対を押し切って強い態度で実行すること」。たとえ難しい状況であってもそれに屈せず、思い切って行動することを「熟慮断行」と言うのです。
・弟は昔から軽はずみな行動をとることがなく、熟慮断行の人だった。
対義語とは?
「思慮分別」の対義語には、「思慮に欠ける」「軽挙妄動」などが挙げられます。軽はずみな行動をとってしまう、周囲に迷惑をかけた人を非難する時に使われることが多い表現です。それぞれの意味を詳しくみていきましょう。
1:思慮に欠ける
「思慮分別」や「思慮深い」と反対の意味を持つのが、「思慮に欠ける」という言葉。その場の状況や相手の気持ちを考えず、軽はずみな行動をとってしまうことを言います。「思慮に欠けた」行動をとると、周囲に迷惑をかけたりトラブルの原因になることも多いため、ネガティブな意味として用いられることが多いようです。
・思慮に欠ける行動は慎みなさいと父に叱られた。
2:軽挙妄動
「軽挙妄動(けいきょもうどう)」とは、「深く考えずに、軽々しく行動すること」。軽率な行いをする人の振る舞いを表す言葉です。大人になってもこのような行動をしてしまう人は、他人からの信用を得るのが難しいかもしれません。物事を熟慮する「思慮分別」とは正反対の言葉ですね。
・先生は生徒たちの軽挙妄動を戒めた。
英語表現とは?
「思慮分別」を英語で表現する際には、「consider」が適切です。「consider」は、「熟考する、よく考える、判断する」という意味なので、同じようなニュアンスで用いることができます。また、「careful consideration」で、より注意深く考えることを伝えられるでしょう。
・He considered fully before carrying out the plan.(彼はその計画を実行する前に十分考えた)
・He considered the cost before buying a new car.(彼は新車を買う前に費用のことをよく考えた)
・He is considering whether he should go to France.(彼はフランスへ行くべきかどうか熟考している)
最後に
「思慮分別」とは、「物事の道理や善悪などを注意深く判断すること」。よく考えることと、正しく判断することという2つの意味が含まれた四字熟語です。一般的に「思慮分別」がある人は、計画を立てて行動し、どのような場面でも冷静に対応することができるので、相手から好印象を持たれます。社会人に必要なスキルの一つとして、「思慮分別」のある振る舞いを身につけましょう。
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