目次Contents
この記事のサマリー
・「漸次」の正しい読み方は「ぜんじ」。「ざんじ」と読むのは誤りで「暫時」と混同しやすいため注意。
・意味は「だんだん」「しだいに」。
・ビジネスシーンでは「漸次改善する」「漸次導入する」など、段階的な進行を表す際に用いられます。
日常生活やビジネスの場で、耳にしたことはあるけれど正しく説明できない言葉のひとつに「漸次」があります。漢字の見た目が難しく、読み間違いや誤用が起きやすい言葉でもありますよ。
例えば会議の席で「漸次改善していきましょう」と言われたとき、「漸次ってどういう意味だろう?」と戸惑った経験がある人も少なくないでしょう。
この記事では、「漸次」の正しい読み方や意味、似た言葉との違い、ビジネスや会話での使い方までをわかりやすく解説します。
「漸次」とは? 正しい読み方と意味を整理
まずは基本となる「漸次」の読み方と意味を押さえましょう。誤読も多いため、正確に理解することが第一歩です。
「漸次」の正しい読み方
「漸次」は 「ぜんじ」 と読みます。
しかし、日常会話では「ざんじ」と読み間違えるケースが見受けられます。「ざんじ」は「暫時(ざんじ)」という別の言葉を指すため、注意しましょう。
「漸次」の意味と成り立ち
「漸次」とは、「だんだん」「しだいに」という意味を持ちます。つまり、ある状態がゆっくりと進んで変化していくことを指します。
辞書では次のように説明されていますよ。
ぜん‐じ【漸次】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
[副]しだいに。だんだん。「老齢人口が―増加する」
漢字を分解して、それぞれの意味を確認しましょう。
まず、「漸」という漢字は、「先に立って、少しずつ進んでいく」ことを表します。読み方は音読みで「ぜん」、訓読みは送り仮名を付けて「漸く(ようやく)」となります。
この「漸」と、二番目や順序を表す「次」が結びつき、「漸次(ぜんじ)」という言葉を構成しています。
参考:『新選漢和辞典 Web版』(小学館)

「漸次」と「暫時」の違いと覚え方
続いては「漸次」と混同しやすい言葉、「暫時」について解説します。どちらも時の流れを表す言葉ですが、意味は異なりますので、チェックしてください。
「漸次」と「暫時」の違い
「暫時」の読み方は「ざんじ」です。「しばらくの間、わずかな時間」を意味します。「暫」は「しばらく、わずかの間」を表し、音読みで「ざん」、訓読みは送り仮名を付けて「暫く(しばらく)」や「暫し(しばし)」と読みます。
「漸次」と「暫時」の覚え方
「漸次(ぜんじ)」と「暫時(ざんじ)」は、読み方も混同されやすいので、注意しましょう。そこで、「漸」と「暫」から始まる他の言葉を紹介します。一緒に覚えることで、違いを記憶してみてください。
まずは、「漸」から始まる言葉から。「漸進(ぜんしん)」は「順を追ってだんだんに進むこと」で、「漸次」と意味が似ています。この言葉を使った「漸進的変化」は、「少しずつ変化する」ことを意味しますよ。
続いて、「暫」を使った言葉です。「暫定(ざんてい)」は、「一時的、仮の」という意味。この言葉を使った「暫定順位」は、「順位が確定するまでの一時的な順位」を意味しますよ。
漢字単体の意味を知り、そこからいくつか言葉を関連付けると、覚えやすくなります。知らない言葉に出会っても、読み方や大まかな意味が予想しやすくなりますね。

使い方を例文でチェック
「漸次」を使った具体的な例文を紹介します。ビジネス文書の中などでさり気なく使えると、かっこいいですね。チェックしてみてください。
再開の日程は、工事の進み具合により漸次お知らせいたします。
今後の予定について知らせる例文です。スケジュールがはっきりしない時など、状況次第で段階的に対応することを表します。
対象エリアの漸次拡大を計画しています。
今後の計画について、時期を明言せずに説明する例文です。明確な時期に触れないものの、計画を進める意思があることを表します。
周辺環境は漸次的に改善されてきました。
少しずつ変化があったことを説明する例文です。大きく急な変化ではなく、時間をかけて改善されたことを表します。
類語や言い換え表現にはどのようなものがある?
続いて、「漸次」の言い換え表現をいくつか紹介していきます。相手や場面に合わせて、使い分けてみてください。
緩やかに(ゆるやかに)
動きや勢いが激しくない様子を表します。一般的でわかりやすい表現になります。
例文:「景気は緩やかに回復しています」
徐々に(じょじょに)
「徐」は「おもむろ、ゆるやか」の意味です。「徐々に(じょじょに)」で、少しずつ進行したり変化したりする様子を表します。
例文:「天候は週末にかけて徐々に下り坂になるでしょう」
次第に
少しずつ目立たない程度に変化していく様子を表します。
例文:「新しい環境にも次第に慣れていくでしょう」
おいおい
「後ほど、時間をおいて」という意味です。使うシーンによっては、いつになるかわからない、という曖昧なニュアンスが含む場合もあります。
例文:「このことは、おいおい説明しますから」
対義語にはどのようなものがある?
次は、「漸次」の対義語もチェックしておきましょう。
急に
突然の状況の変化を表し、日常会話でもよく使われる表現です。
例文:「急に雨が降ってきた」

突然
予期しないことが急に起こる様子を表します。
例文:「突然のご連絡をお許しください」
速やかに
「可能なかぎり早く」という意味です。
例文:「終了後は速やかに退出してください」
少しかしこまった表現で「可及的速やかに」があります。「可及的」は「かきゅうてき」と読み、「できる限り」という意味です。
「漸次」に関するFAQ
ここでは、「漸次」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「漸次」と「暫時」は同じ意味ですか?
A. 違います。
「漸次(ぜんじ)」は「だんだん、しだいに」という変化の進行を表す言葉。一方「暫時(ざんじ)」は「しばらくの間」を意味します。読み方も混同しやすいため注意が必要です。
Q2. ビジネスメールで「漸次」を使ってもいいですか?
A. 問題ありません。
ただし、改まった文面では自然ですが、カジュアルな社内チャットでは少し堅苦しく感じられることも。「徐々に」「段階的に」など平易な表現と使い分けるといいでしょう。
最後に
「漸次」という言葉は、一見すると難しい印象がありますが、正しい読み方と意味を理解すれば、ビジネスや日常会話で生かせる表現です。「漸次改善する」「漸次回復している」といった使い方を覚えておけば、報告や説明に説得力を加えることができます。
誤読や混同には注意しつつ、知的で洗練された言葉としてぜひ使いこなしてみてください。
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