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「おいしゅうございました」の意味
かつて「おいしゅうございました」が、某料理番組で出演者のセリフとして有名になったことを覚えている人もいるのではないでしょうか? 昔の世代の人なら「おいしゅうございました」と日常生活でも話すかもしれませんね。
そんな「おいしゅうございました」ですが、平たくいうと「美味しかったです」という意味。おもに女性が使う、ていねい表現とされています。ただ、日常生活で多用される表現ではないようです。
そもそも「おいしい」ってどういう意味?
「おいしい」という言葉の語源について紹介します。「おいしい」は、もともと「お」と「いしい」という2つの言葉だったのだそう。「お」は接頭語。接頭語とは、ある言葉の最初につけてニュアンスを付け加えたり、語調を整えたりする言葉です。
では、「いしい」とはどういう意味なのでしょうか。「いしい」は形容詞の「美し(いし)」に「い」が付いたものです。「いし」には、「好ましい」「見事だ」と意味があり、そもそもは褒め言葉として用いられていたとか。
それを、女性が食べ物を褒める際、「お」がついて「おいし」となったようで、古くは女性だけが使っていたそうです。
現在でも、「おいしい話」と言ったりしますね。これは、「いし」の「好ましい」という意味からきている使い方だと言えます。
「おいしゅうございました」の言い換え表現とは?
「おいしゅうございました」は日常ではあまり使われていません。では、改まった席で「おいしかった」と言いたいとき、どんな風に言うのがいいのでしょうか?
1:「おいしくいただきました」
もっとも簡単な言い換えは「おいしくいただきました」でしょう。「おいしい」はそのままとし、「食べる」を「いただく」という謙譲語にした形ですね。「おいしく食べた」をへりくだっていうのが「おいしくいただきました」という表現です。
同じような表現で「おいしく頂戴しました」という表現もあります。「頂戴する」も「受け取る」の謙譲語なので、相手を敬う形で「おいしかった」と伝えることが可能。
ここで注意したいのが、「召し上がる」という表現です。「召し上がる」は、「食べる」の尊敬語にあたります。自分より目上の人に向かって、たとえば「食べてください」というときには「お召し上がりください」と言いますが、自分がおいしく食べたときに「おいしく召し上がりました」というのは、自分で自分を敬っていることになりますので、誤りです。
2:具体的に褒める
「おいしかったです」をそのまま言い換える場合は「おいしくいただきました」となりますが、別の手段として具体的に褒めるという方法もあります。たとえば、「こんなにコクのあるチーズははじめてです」といった具合に、何に自分が感動したのかを具体的に述べるのです。
食レポのように気の利いた言葉でなくても、感じたことをそのまま伝えた言葉には、相手も思いを感じられるもの。反対に、思ってもいないことをツラツラと述べるほうが場をしらけさせてしまうかもしれません。素直な感想でお礼の気持ちを伝えましょう。
「おいしゅうございました」と言われたら?
では、反対に「おいしゅうございました」「おいしくいただきました」と言われたら、どう返すのが妥当なのでしょうか。
1:「お粗末さまでした」
謙遜のニュアンスをもった返事の仕方としては、「お粗末さまでした」という言い方があります。実際は粗末なものではないのですが、このようにへり下ることで、相手への更なる敬意を示すのです。
2:「お口にあってよかったです」
友人や知人、会社の同僚などには「お口にあって良かったです」という言い方ができます。この表現は「口」に接頭語「お」をつけ、さらに「よかったです」は「よかった」に「です」をつけたていねい表現。実際に口に出してみるとわかると思いますが、フランクな印象です。目上の人には控えましょう。
3:「喜んでいただけて、何よりでございます」
目上の人には、「お気に召していただきまして、ありがとうございます」や「喜んでいただけて、何よりでございます」などの表現がおすすめです。お礼の気持ちを伝えることで、相手を敬うことができます。
「おいしゅうございました」の英語表現は?
英語には、謙譲語や尊敬語というものがありませんので、考え方はシンプルです。「美味しゅうございました」と言いたいときは「おいしかった」でいいのです。
・That was very delicious.
・That was very beautiful.
・It was good.
などが一般的ですね。「yummy」という表現もありますが、「おいちい(おいしい)」の意味でかなり子どもっぽい印象を与えます。よほど仲が良くない限りは控えたほうがよさそうです。
気をつけたい敬語表現は?
「おいしゅうございました」のように、使い方に気を付けたい敬語表現もついでに紹介しますね。
1:「よろしかったでしょうか」
飲食店などでよく聞かれますが、正しくは「よろしいでしょうか」。改まった雰囲気を出すためになんとなく過去形にしてしまっているのかもしれませんが、人によっては違和感を持つ表現です。ビジネスシーンでも比較的よく使う表現ですので注意してください。
2:「とんでもございません」
こちらもよく耳にしますね。「とんでもございません」という言い方は今では広く使われていますが、強い抵抗感を示す人もいます。本来の使い方をよく認識し、安易な使用は避けたほうがよいでしょう。別の表現に変えてもいいかもしれません。
3:「了解しました」
上司に対して「わかった」と言いたいとき、あるいはメールなどで指示をもらったときに、「了解しました」と返していないでしょうか。「了解」は敬意のない表現なので、ビジネスシーンでは「承知しました」「かしこまりました」と言ったほうがいいでしょう。「了解」の場合でも「了解いたしました」などと語尾にひと工夫するといいですね。
最後に
ていねいな表現というのは、使い慣れないと不安なものです。自信がないがゆえに慇懃無礼に見えたりすることもあります。上手な立ち振る舞いをしている人をよく観察し、スマートな振る舞いを真似してみることから始めてはどうでしょうか?
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