「頂戴いたします」の意味とは?
ビジネスシーンにおいて、何気なく使っている敬語。そんな敬語の中には、間違っている表現なのに「正しい」と捉えられ、定着してしまっている使用例が多くあります。
敬語は、話し手が聞き手に敬意を示すことのできる、日本語の大切な表現。今回は、そのなかでも間違えやすい「頂戴いたします」の意味や使い方についてまとめました。正しい敬語表現を理解して、上品な言葉遣いを身につけていきましょう。
「頂戴」とは、「もらう」の謙譲語です。「賜ること・いただくこと」という意味。また、食べることをへりくだって言う場合にも使うことが出来ます。
「いたします」は、「する」の謙譲語です。自分の動作を控えめに表現して、改まった気持ちを伝えることで、聞き手に対する敬意を示すことが出来ますね。
「頂戴いたします」は二重敬語? 既に定着も…
「頂戴」も「いたします」も、謙譲語です。ですから、すでに敬語になっている言葉に同じ種類の敬語を重ねて使うことは、二重敬語に当たります。本来は誤った表現ですが、ビジネスの様々な場面で普通に用いられてしまっていますね…。
しかし、受け取り手によっては、不快に感じる場合があるのも事実。二重敬語となっていることを理解し、適切な表現を使っていきましょう。
「頂戴いたします」を使う時の注意点
二重敬語であることを理解する
先述しましたが、「頂戴いたします」は二重敬語。ビジネスマナーとしては、出来る限り、「頂戴します」と言い換えましょう。
ただし、謝罪やトラブル対応のような場面では、より丁寧な表現を使うことが有効な場合があります。「いたします」は、自分の動作を控えめにいう謙譲語です。自分に非があることを認め、相手に敬意を示すことが出来る場合もあるのではないでしょうか?
本来は二重敬語であることを理解した上で、場面によって使い分けられると良いですね。
頂戴する「もの」があるか
電話の応対でよく使われるフレーズ、「お名前を頂戴できますか?」は、誤りです。「名前を頂戴する」とは、名前そのものを頂くという意味になります。正しくは、「お名前をお願いします」です。より丁寧に伝えたい場合は、「お名前をお伺いできますか」と言うと良いでしょう。
贈答品や書類等の「物」があるときや「お褒めの言葉」「相手の時間」を頂いた際に、「頂戴します」と使うことが出来ます。
「頂戴します」と「お預かりします」
ビジネスシーンでは、名刺や書類、様々なものを受け取る場面がありますね。例えば、担当者が外出中に書類を受け取った場合、どちらを使えば良いでしょうか? この場合は、書類を代理で受け取っているため、「お預かりします」と言いましょう。話し手が担当者である場合は、「頂戴します」と言うことができます。
「頂戴いたします」の使い方を例文でチェック
実際のフレーズを例に、正しい表現を確認していきましょう。
1:「名刺を頂戴いたします」
正しくは「名刺を頂戴します」です。ただし、あなたが業務の担当者ではなく、受付担当者ならば「名刺をお預かりします」と言いましょう。初めて来社した方を対応する各担当者は名刺を「頂戴する」と表現しますが、受付担当者は名刺を「預かる」だけだと考えられているからです。
2:「千円頂戴いたします」
正しくは、「千円頂戴します」です。ただし、支払う代金によっては、「頂戴します」が誤った表現になります。代金をちょうど払っている場合は、「頂戴します」。お釣りがある場合は、「お預かりします」と覚えましょう。
これは、お釣りを渡すまで、代金をお預かりしているという意味合いになります。お金を受け取ったときは、「頂戴します」と「お預かりします」を適切に使い分けましょう。
3:「天皇陛下から、ありがたいお言葉を頂戴いたしました」
こちらは正しい「頂戴いたします」の使い方です。かつて、最高敬語という、日本語において最上級の敬意を表す言葉がありました。天皇陛下へは最高敬語が用いられます。単語単位での敬意の重複をいう二重敬語と最高敬語は異なるものですが、敬語と敬意を重ねた結果、見かけ上は二重敬語ともなり得るのです。
この例文の場合は、最上級の表現「お言葉を賜る」を使用しても良いでしょう。
最後に
今回は、「頂戴いたします」について、例文を交えながらご紹介しました。いかがでしたでしょうか?
「頂戴します」は、ビジネスシーンにおいて、よく使う表現です。会話だけでなく、メールで書類を受け取った際にも、「頂戴しました」「頂戴しておりません」と記載することが可能。
ただ、「受け取りました」と記載するよりも、ずっと印象が良くなるハズ。「頂戴」した物や時間に感謝し、相手に敬意を示すことの出来る表現。活用できる場面が多いからこそ、正しい意味を理解して使用しているか否かが、重要なのではないでしょうか?
また、二重敬語のような過ぎた敬語は、人によっては不快感を与えるということも心得ましょう。相手や場面に配慮して、敬語を使い分けることが出来れば、素敵な印象を与えるだけでなく、人と人とのコミュニケーションを円滑にします。社会人として、状況に応じた適切な言葉遣いを身につけてくださいね。
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