「猿も木から落ちる」ということわざを、学校の授業で習った記憶があるという方も多いでしょう。猿といえば、木登りが得意なイメージがありますが、木から落ちてしまうことは一体どのような意味を表しているのでしょうか? そこで本記事では、「猿も木から落ちる」の意味や使い方、似た意味を持つことわざなどを解説します。
「猿も木から落ちる」とは?
「猿も木から落ちる」は、「さるもきからおちる」と読みます。意味を辞書で確認していきましょう。
木登りがじょうずな猿でも時には誤って落ちる。その道にすぐれた者でも、時には失敗することがあるということのたとえ。弘法にも筆の誤り。上手(じょうず)の手から水が漏れる。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「猿も木から落ちる」とは、「その道に秀でた達人や名人でも、時に失敗することがある」ということのたとえです。木登りが得意な猿でも、たまには失敗して木から落ちる姿から、このようなことわざが生まれました。
猿は運動能力が高く、2メートルほど高いところに飛び乗ることもできるとか。雑食で果物や昆虫、若葉などを好むため、木は猿にとって食料の宝庫とも呼べそうですね。ちょっとした突起や凹みがあれば、電信柱やフェンスでも簡単に登ることができるそうです。
使い方を例文でチェック!
「猿も木から落ちる」は、意味合いがイメージしやすいことわざではあるものの、使い方によっては失礼に当たることも。ビジネスシーンや目上の人が失敗した時には、使わないほうが無難と言えるでしょう。例文を2つ紹介します。
1:猿も木から落ちるということわざもあるし、くれぐれも油断しないようにね。
「猿も木から落ちる」は、木登りが得意な猿でも失敗することがあるのだから、あなたも油断せず気をつけてねと、注意喚起をする時に使います。人は、自分が得意なことだとかえって能力を過信して、「これくらいで失敗するわけがない」と鷹を括ってしまうもの。そんな時ほどミスをしてしまうから、気をつけなさいという戒めですね。
2:大会の優勝候補が、一回戦で敗退してしまった。猿も木から落ちるとはこのことだ。
実力のある選手が、早い段階で負けてしまった時に「猿も木から落ちる」を使うこともできます。ただし、相手を猿にたとえるのですから、言われた相手は気を悪くするかもしれません。試合観戦後につぶやいたり、お客同士で話す分には問題ありませんが、ミスをした選手に直接使うのは控えたほうがいいでしょう。
「猿も木から落ちる」と似たことわざは?
「猿も木から落ちる」と似た意味を持つことわざには「河童の川流れ」「弘法にも筆の誤り」「上手の手から水が漏れる」などがあります。どのように使うのが適切なのか一緒に確認していきましょう。
1:河童の川流れ
「河童の川流れ」の意味は、以下のとおりです。
泳ぎのうまい河童でも、水に押し流されることがある。その道の名人でも、時には失敗することがあることのたとえ。弘法にも筆の誤り。猿も木から落ちる。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
河童は水辺を好み、泳ぎが得意な妖怪だとされています。そんな河童でもたまには失敗して川に流されてしまうことから、このような意味のことわざになったとか。猿や河童にたとえることはユーモラスで笑いを誘いますが、その反面、たとえられた方は気を悪くする可能性も。冗談の通じる親しい人との会話のみで使用した方がいいかもしれませんね。
(例文)
・いつも優秀な彼女が仕事でミスをするなんて、まさに河童の川流れだね。
・経験豊富な師匠が怪我をするなんて、河童の川流れのようだ。
2:弘法にも筆の誤り
「弘法にも筆の誤り」は、「こうぼうにもふでのあやまり」と読みます。意味は以下のとおりです。
弘法大師のような書の名人でも、書き損じることがある。その道に長じた人でも時には失敗をすることがあるというたとえ。猿も木から落ちる。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
弘法大師とは、真言宗の開祖・空海のこと。空海は、書の名人である三筆の1人にも数えられるほどの才能の持ち主であったとか。そんな名人でもまれに間違うことがあるのだから、君が失敗するのも仕方ないと励ますような時に使います。
(例文)
・一度失敗したからといって、そんなに落ち込むことはないだろう。弘法にも筆の誤りという言葉もあることだし。
・弘法にも筆の誤りとはいえど、自分がミスをするのは納得できない。
3:上手の手から水が漏れる
「上手(じょうず)の手から水が漏れる」ということわざを、あまり聞いたことがない方も多いのでは? 意味を見ていきましょう。
どんなに上手な人でも、ときには失敗することがあるというたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「上手」とは、ある物事に巧みな人という意味で、「名人」「達人」とも言い換えられます。ただ単に、達人でも失敗するというよりは、これほど巧みな人でも失敗することがあるのかと驚いた時に、使われる傾向が。失敗に同情することはあっても、相手に対する敬意は失っておらず、皮肉として使われることはありません。
(例文)
・上手の手から水が漏れるという言葉があるが、まさか先生が失敗するなんて思ってもみなかった。
・先輩が3回戦敗退だなんて…。上手の手から水が漏れるということもあるのですね。
最後に
「猿も木から落ちる」とは、「どんな達人でも、時には失敗することがあるということのたとえ」。ユーモラスな表現ではありますが、失敗した人を猿にたとえるのですから、相手によっては「バカにしているのか」と怒ることもあるでしょう。
あくまでも注意喚起として使うことが無難と言えるかもしれません。自分の得意なものほど、気を抜いて「猿も木から落ちる」状態にならないように気をつけたいですね。
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