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この記事のサマリー
・「猿も木から落ちる」は名人の失敗をたとえた言葉です。
・目上の人への使用は失礼と受け取られる可能性があります。
・「猿も木から落ちる」と似た表現には「河童の川流れ」「弘法にも筆の誤り」「上手の手から水が漏れる」があります。
相手の失敗への言葉選びは難しいものですが、そんな場面で思い浮かぶことわざとして「猿も木から落ちる」があります。名人でも失敗するという意味ですが、使い方を誤ると失礼に受け取られることもあるので、注意点を確認しておきましょう。
この記事では、ことわざの正確な意味、背景、似たことわざとの違いまでを、辞書に基づいて整理し、使いこなすためのポイントをまとめていきます。
「猿も木から落ちる」とは?
「猿も木から落ちる」について、まずは正確な読み方や意味、そしてことわざが表す教訓を確認しましょう。
「猿も木から落ちる」読み方と意味
「猿も木から落ちる」の正しい読み方は、「さるもきからおちる」です。
辞書には、以下のように記載されています。
猿(さる)も木(き)から落(お)ちる
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
木登りがじょうずな猿でも時には誤って落ちる。その道にすぐれた者でも、時には失敗することがあるということのたとえ。弘法にも筆の誤り。上手(じょうず)の手から水が漏れる。
「猿も木から落ちる」は、その道に長けた熟練者や専門家であっても失敗することがある、ということを、猿の意外な失敗に例えたことわざです。
「猿も木から落ちる」の語源
「猿も木から落ちる」は、本来木登りが最も得意な動物である猿が、予期せず失敗してしまうという意外性から、教訓として導かれています。
この表現は『鷹筑波集』(1638年)などの俳諧書にすでに見られ、江戸時代から広く使われてきました。ことわざの裏には、他人の失敗を厳しく責めず、おおらかに受け止める当時の人々の姿勢がうかがえます。
参考:『デジタル大辞泉』、『日本国語大辞典』、『使い方の分かる 類語例解辞典』、『故事俗信ことわざ大辞典』(すべて小学館)

「猿も木から落ちる」の使い方と注意点
ことわざは意味を知っていても、文脈に合わなければ不自然に響きます。ここでは、「猿も木から落ちる」の適切な使い方と注意点を確認します。
「ベテランの佐藤さんが数字を打ち間違えるなんて… 猿も木から落ちる、だね」
いつも正確な人でも、うっかりミスをすることがある、という場面。「驚き」が少し混ざった言い方になります。
「全国大会に出るレベルの彼女がサーブをミスしたのは、猿も木から落ちるってことかな」
実力者の失敗を責めるより、「そういう日もあるよね」と受け止めるニュアンス。スポーツや試合の文脈でよく合います。
「今回の失敗で落ち込まなくていいよ。猿も木から落ちるって言うし、次に生かそう」
失敗した本人を励ます使い方。「失敗=能力不足じゃない」と伝える、前向きな慰めのことわざになります。
参考:『デジタル大辞泉』、『日本国語大辞典』、『使い方の分かる 類語例解辞典』、『故事俗信ことわざ大辞典』(すべて小学館)
「猿も木から落ちる」を使うときの注意点
「猿」にたとえる表現は、場を和ませるユーモアとして働く一方で、受け取り方によっては相手を見下したり、失敗を嘲笑したりする印象を与えることがあります。相手との関係性や場の空気に配慮して用いたい言葉です。

「猿も木から落ちる」と似た意味を持つことわざ
「猿も木から落ちる」と同様に、「どれほど熟練した人でも失敗することがある」という意味を持つことわざを紹介します。
「河童の川流れ」
泳ぎが得意な河童でさえ、時には川に流されてしまうことがあるというたとえです。どんな達人にもミスはあるという意味で、軽快な響きを持っています。
「弘法にも筆の誤り」
書の名人である弘法大師(空海)でも、筆を誤ることがある、という意味です。

「上手の手から水が漏れる」
どんなに巧みな人でも、思いがけず失敗してしまうことがあるというたとえです。穏やかな語感がありますね。
参考:『デジタル大辞泉』、『日本国語大辞典』、『使い方の分かる 類語例解辞典』、『故事俗信ことわざ大辞典』(すべて小学館)
「猿も木から落ちる」に関するFAQ
ここでは、「猿も木から落ちる」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 類似のことわざはありますか?
A. 「弘法にも筆の誤り」「河童の川流れ」「上手の手から水が漏れる」などが挙げられます。
Q2. NGな使い方はありますか?
A. 相手を「猿」にたとえることから、不愉快に感じさせる可能性があります。
最後に
「猿も木から落ちる」は、熟練した人や専門家でも失敗することがあるという、人間味あふれる事実を、ユーモアを交えて伝えることわざです。この言葉をコミュニケーションに役立てる上で大切なのは、相手や場面への配慮を踏まえて使い分けることです。
「猿も木から落ちる」が持つ大らかな教訓を活かし、今日のコミュニケーションに役立てていただければ幸いです。
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