皆さんは、「長い物には巻かれろ」という表現を聞いたことはありますか? 目上の人や上司との関係について悩みを相談した時に、友人や同僚から「長い物には巻かれろと言うし…」などと諭されたことがある方もいるかもしれません。そこで本記事では、「長い物には巻かれろ」の意味や使い方、類語・対義語などを解説します。
「長い物には巻かれろ」とは?
「長い物には巻かれろ」とは、どのような意味を指すのか辞書で確認してみましょう。
勢力・権力のある者には、逆らわないほうが得である。長い物には巻かれろ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「長い物には巻かれろ」とは、「権力のある人には、逆らわない方が得である」という意味。たとえ、上司や目上の人の意見に間違いがあったとしても、それを指摘するのではなく、素直に従った方がいいという意味合いがあります。
ここで言う「長い物」とは、「自分よりも勢力・権力がある人」のことを指します。このことから、「長い者には巻かれろ」と書いてしまいがちですが、誤りなので気をつけてくださいね。
使い方を例文でチェック!
「長い物には巻かれろ」は、なんとなく聞き覚えがあっても、どんな時に使うのが正解なのかわからない… と思いがちな表現ですよね。知り合いから実際に使われる可能性もあるので、事前に把握しておきましょう。
1:「長い物には巻かれろとも言うし、部長の意見に逆らわない方がいいんじゃない?」
働いていると、目上の人や上司の意向に賛同できないことが出てくることも。果たして、自分の意見を伝えた方がいいのか迷うこともありますよね。そんな悩みを家族や友人に相談した時に、「長い物には巻かれろと言うし…」と諭されることもあるでしょう。無闇に意見して反感を買うよりは、大人しく従っていたほうが無難という意味です。
2:「長い物には巻かれろ」を信条にしている弟は、きっと大成しないだろうな。
組織で働いている人の中には、「長い物には巻かれろ」を処世術として心得ている人も。余計なトラブルに巻き込まれないように、目上の人の意見に従うのは賢い手ともいえるかもしれませんが、人によっては媚びへつらっているように見えて、情けないと感じることも。そんな複雑な気持ちを表した一言です。
類語や言い換え表現は?
「長い物には巻かれろ」と同じような意味を持つ言葉には、「付和雷同」「寄らば大樹の陰」があります。どんな意味なのか、一緒にチェックしていきましょう。
1:付和雷同
「付和雷同」は、「ふわらいどう」と読みます。「不和雷同」と書くのは誤りです。意味を見ていきましょう。
[名](スル)一定の主義・主張がなく、安易に他の説に賛成すること。「多数派に―する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
自分としてのしっかりとした考えがなく、ただやたらに他人の意見に賛成することを「付和雷同」と言います。他人の意見に賛成しているからといって、何か根拠があり深く共感しているわけではありません。「多数派だから」「なんとなく」という理由で、周囲の勢いに同調することを指します。
(例文)
・民意が付和雷同した。
・多数派に付和雷同する人は、案外多いものだ。
2:寄らば大樹の陰
「寄らば大樹(たいじゅ)の陰(かげ)」の意味は、以下の通りです。
身を寄せるならば、大木の下が安全である。同じ頼るならば、勢力のある人のほうがよいというたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「寄らば大樹の陰」は、「頼りにするなら、勢力のある人の方が得策である」という意味。「長い物には巻かれろ」のように、相手に教訓じみたことを言う時に使われます。まず第一に他人を頼ることを考えており、自分の力でどうにかするという意識はあまり感じられません。権力のある人をうまく利用して、自分もいい思いをしたいという思惑が感じ取れますね。
(例文)
・寄らば大樹の陰とも言うし、Aさんと同じ部署に入った方がいいよ。
・寄らば大樹の陰と思い、大企業に入った。
対義語は?
「長い物には巻かれろ」は、権力のある人には従った方がいいという意味。そのため、目下の人が目上の人に対して逆らうことを指す言葉が、反対語として当てはまるでしょう。ここでは、「蟷螂の斧」「楯突く」「食ってかかる」の3つの言葉を紹介します。
1:蟷螂の斧
「蟷螂の斧」は、「とうろうのおの」と読みます。一体どんな意味でしょうか? 確認してみましょう。
《カマキリが前あしを上げて、大きな車の進行を止めようとする意から》弱小のものが、自分の力量もわきまえず、強敵に向かうことのたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
力の弱い者が強者に立ち向かうことを、「蟷螂の斧」と言います。カマキリは、威嚇のポーズをとることで、相手に立ち向かいますが、自分よりも大きなものに対して無力な存在です。このことから、力量や良策を持たず、無防備なまま相手に立ち向かうたとえとして用いられるようになりました。
(例文)
・山田部長に刃向かうことは、蟷螂の斧を振るうようなものだ。
・同僚のA君は先輩に蟷螂の斧を振るった。
2:楯突く
「楯突く」の意味は、以下の通りです。
[動カ五(四)]《古くは「たてづく」か》目上の人に対して逆らう。従わずに文句を言ったりして反抗する。たてをつく。「上官に―・く」「親に―・く」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
目上の人に反抗したり、口答えをすることを「楯突く(たてつく)」と言います。組織のリーダーに逆らったり、思春期の子供が親に反抗する時などに、「親に楯突くもんじゃない」と言ったりしますね。権力のある人に従おうとする「長い物には巻かれろ」とは正反対の言葉です。
(例文)
・リーダーに「お前、俺に楯突く気か」と凄まれた。
・主人に楯突くなんてやめた方がいいよ。
3:食ってかかる
「食ってかかる」の意味は、以下の通りです。
食いつくように、激しい言葉と態度で向かっていく。「審判に―・る」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
相手に対して、怒りをぶつけたり、殴りかかろうとしていることを「食ってかかる」と表現します。大抵は、自分より上の立場の、先輩や親などに反抗する時に使われる傾向がありますね。今にも、飛びかかってきそうな勢いのある表現です。
(例文)
・命令してばかりで何もしない先輩に食ってかかった。
・教師の厳しい指導に、B君は食ってかかった。
最後に
「長い物には巻かれろ」とは、「勢力や権力のある人には、逆らわない方が得策である」という意味。目上の人に意見するかどうか迷っている時に、「でも、長い物には巻かれろと言うし…」と、自分自身を納得させる時などに使用します。
対人関係で余計なトラブルを避けることは必要ですが、何も言わず指示に従い続けると、相手の言いなりになってしまう可能性も。時と場合に応じて、適切に自分の意見を伝える方法も身につけておきたいものですね。
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