「五月雨」とは?
五月雨とは、どんな雨なのでしょうか? 読んで字のごとくでありませんので、思い込みのないように気をつけて。
「五月雨」の読み方と意味
「五月雨」は「さみだれ」、と読みます。「さ」は五月(さつき)の「さ」、「みだれ」は水垂れを表します。また「さつきあめ」とも。いずれも響きも字面も美しいですよね。
意味はその字の通り、5月に降る雨のことですが、気をつけたいのが、この5月は旧暦であることです。旧暦は新暦よりおおよそひと月あとになりますから、正しくは6月に、それも降り続く雨のことを指します。
つまり、「梅雨の時期の長雨」を指す言葉です。5月の雨を「五月雨」と表現するのは、間違いなので覚えておきましょう。また、物事がだらだらと続くたとえとして、「五月雨戦術(さみだれせんじゅつ)」などと使われることもあります。
「五月雨」はビジネスシーンでも使える言葉
五月雨をビジネスシーンでも使える、と聞けば疑問に思うかもしれませんが、「五月雨式(さみだれしき)」なら納得では? 「五月雨式」の意味は、梅雨時の降り続く雨になぞらえて、「断続的に物事が行なわれること」、「一度では終わらず途切れながら、何度か続けて行なうこと。またはそういうやり方」です。
「五月雨式」(「五月雨」)の使い方を例文を用いて紹介
たとえば、「五月雨に」という使い方もありますが、一般的に、特にビジネスシーンでは「五月雨式に」と使うほうがよいでしょう。また「五月雨式」には、だらだらと、という意味もあるようにネガティブにとらえる人もいるかもしれませんが、謝罪の一言を添えるなど工夫することで、相手の気持ちを和らげる効果も期待できます。
1:「五月雨式に失礼いたします。(この書類もご確認くださいませ)」
メールを続けて送信した場合などに、相手への気遣いとお詫びの気持ちを伝えられるのが、この表現です。また、「五月雨式のご連絡になり申し訳ございません」など、五月雨式の〇〇、という風にも使えますよ。
2:「五月雨式に納品してよろしいでしょうか」
何かを順次、納品したいときなどは、あらかじめこのように合意を得るようにしましょう。
3:「五月雨式で結構ですので、進捗状況を報告してください」
「五月雨式で結構ですので、進捗状況を報告いただけましたら幸いです(幸いに存じます)」一度に事が済むのが難しいことはわかっている、でも行動はしてほしい、というときにも「五月雨式」は便利。下の例文は、社外向けのていねいな表現です。
4:「五月雨式に失礼いたしました。これが最後の質問です」
相手に対して続けて何かをしたときに、お詫びの気持ちを入れつつ、「これが最後です」と伝える例文です。
5:「五月雨式に会議が続いて、みんな疲れています」
会議、話し合い、試合などが続く場合にも「五月雨式」と表現できます。なかなかに疲れる状況、ということですね。
「五月雨式」の類語表現は?
「五月雨式」にはいくつかの類語があります。そのなかで、ビジネスシーンにふさわしい言葉と使い方をいくつか紹介しましょう。
1:「続けざま」
「続けざま」は、物事が次々に起こる、同じ事を続けて行なう、という意味です。
「続けざまに失礼いたします。(添付の書類にもお目通しください)」とすると、「五月雨式に失礼いたします」とほぼ同じ意味になります。
2:「立て続け」
「立て続け」とは、すぐあとに続くこと、連続すること。続けざまに似ていますが、それよりも間を置くことなく、すぐに、というイメージが強くなります。
「立て続けに失礼いたします」「立て続けに申し訳ございません」とすると、五月雨式に、続けざまに、とほぼ同じ意味合いながら、さらに間を置くことなく連続してメールを送った場合などに、恐縮する気持ちを表すことができます。
「立て続けに会議があって疲れたよ」会議のあとにすぐ会議があった、という状況がわかりますね。
似た表現に「矢継ぎ早」がありますが、使い方によっては相手に催促する印象を与え、焦らせてしまったり、失礼な印象を与えることもありますので、使い方には十分気をつけましょう。
3:「度々(たびたび)」
「度々(たびたび)」は、物事が何度も繰り返される様子のこと。ビジネスシーンでもプライベートでもよく聞くのではないでしょうか。メールや電話、口頭でも使いやすい言葉です。
「度々申し訳ございません。先ほどお電話(メール)した件ですが」先ほども電話やメールをした件で、追加したいことや訂正がある場合の例文です。「度々のご連絡を失礼いたします」とも言いますね。
「度々ご連絡をいただきましてありがとうございます」「度々〇〇していただいてありがとうございます」「〇〇様には度々お世話になっております」など、「度々」は、していただいたことへの感謝を表すこともできます。
4:「断続的」
「断続的」は、途切れ途切れに続く様子。まさに時折止みながらも降り続ける五月雨のようですね。
「断続的に情報が入る予定です(ので注意してください)」は、途切れ途切れに情報が入るので、一旦間が空いても「これで終わり」と油断しないでくださいね、と促す意味になります。
「断続的に話し合いが続いたが結論は出なかった」は、休憩を挟みながらも話し合いが長く続いたことを表しています。「断続的な話し合いの末、結論が出た」のようにも使えますよ。
最後に
「五月雨」は梅雨の頃の長雨のこと。この、いつまでも続く雨になぞらえた言葉が「五月雨式」で、主にビジネスシーンで使用されていることがわかりました。使い方の例として「五月雨式で結構です」、「五月雨式に申し訳ございません」などがあるように、「五月雨式」はビジネスであっても気遣いを伝えられる言葉。相手やその場を和ます効果も期待できますので、上手に使えるようになりたいですね。
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