この記事のサマリー
・二律背反は、哲学で相互に矛盾する二つの命題が同等の妥当性をもって主張されることを意味します。
・似た言葉には「アンビバレント」や「トレードオフ」などが挙げられます。
・英語表現には ‟antinomy” が挙げられます。「二律背反」は ‟antinomy” の訳語です。
「二律背反」って、ただの矛盾のこと? 似ているようで実は少し違います。本来は、どちらの主張もそれなりに正しいといえるのに、論理的には同時に成り立たず行き詰まる状態を指します。
この記事では意味を整理し、具体例を確認。矛盾・ジレンマ・トレードオフとの違い、英語表現もおさえていきます。
「二律背反」とは?
まずは「二律背反」の意味と読み方から確認していきましょう。
読み方と意味
「二律背反」は「にりつはいはん」と読み、哲学で相互に矛盾する二つの命題が、どちらも同等に妥当だと主張できるのに、論理的には両立しない状態を指します。
辞書では次のように説明されていますよ。
にりつ‐はいはん【二律背反】
哲学で、相互に矛盾する二つの命題(定立と反定立)が同等の妥当性をもって主張されること。アンチノミー。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「二律背反」で大切なのは、単に食い違っているというより、どちらの主張にもそれなりの根拠があり、なおかつ同時には成り立たないために結論が出しにくくなる点です。

「二律背反」の例
「二律背反」は、哲学で相互に矛盾する二つの命題が、どちらも同等に妥当だと主張できるのに、論理的には両立しない状態を指します。ここでは具体的な例を見ていきましょう。
《例1》時間に始めがあるかどうか?
《例2》自由と必然
《例3》絶対者の存在の有無
《例4》「世界は有限である」と「世界は無限である」
これら4つの問いに答えるのは、なかなか難しいですね。哲学者のカントは、「人間の知能的能力の限界を超えているからである」と説明しています。
参考:『日本大百科全書』、『日本国語大辞典』(ともに小学館)、『世界大百科事典』(平凡社)

「二律背反」に似た言葉は?
ここからは「二律背反」に似た言葉を紹介します。それぞれの意味を把握しておくと活用できる場面が出てくるでしょう。
アンビバレント【ambivalent】
1人の人間の中で相反する意見を持つさまや、相反する感情が同時に存在するさまを意味する言葉。例えば、親に対して感謝の気持ちを抱くと同時に、憎悪の気持ちも抱くといった状態は「アンビバレント」と表現するのが適切です。
恋愛において相手を愛しているが苦しめたいと感じるなど、相反する感情が同時に生じる場面でも「アンビバレント」をよく使います。
《例文》
彼に対しては、愛憎渦巻くアンビバレントな感情を持っている
ジレンマ【dilemma】
2つの相反する事柄の板挟みになることを表す言葉。論理学では、2つの仮言的判断を大前提とし、その判断を小前提で選言的に肯定、または否定して結論を導き出す三段論法としても使われています。
この言葉は知っている人も多いかもしれませんね。ジレンマにより、どちらとも決めかねる状態に陥るというのは、よくあることといえるでしょう。
《例文》
仕事をがんばりたいが、家庭のことも手を抜きたくないというジレンマに悩む人は多い
トレードオフ【trade off】
失業率を低下させようとすると物価の上昇圧力が強まり、物価を安定させようとすれば失業率が高まるというように、一方を追求すると他方が犠牲になるような両立しえない経済的関係のこと。
「二律背反」と似た場面で語ることがありますが、トレードオフは「どちらかを取れば、もう一方は失われやすい」という交換関係を指します。
《例文》
高品質な物を低価格で提供するというのは、ある意味トレードオフといえる

板挟み(いたばさみ)
板と板との間に挟まれて身動きできない意から、対立する2者の間に立ってどちらに付くこともできず、苦しむことを表します。
《例文》
上司と部下の板挟みになり、悩んでしまう中間管理職が多いのは昔からだ
矛盾(むじゅん)
「矛盾」は、つじつまが合わないこと全般を広く指す言葉です。一方「二律背反」は、哲学で相互に矛盾する二つの命題が、どちらも同等に妥当だと主張できるのに、論理的には両立しない状態を指します。
日常において、つじつまが合わない場合は「矛盾」を使う方が自然でしょう。
《例文》
発言の矛盾を突かれて話せなくなった私をフォローしてくれたのは、怖いと思っていた部長だった
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
「二律背反」の英語表現は?
「二律背反」の英語表現についてチェックしましょう。英語で「二律背反」に対応する語としては、‟antinomy” が挙げられます。「二律背反」は ‟antinomy” (アンチノミー)の訳語であるからです。
一方、‟dilemma“(ジレンマ)は「二者択一の板挟み」を表す語で、似た状況の説明に使われることはありますが、「二律背反」と同義語として置き換えると意味がずれる場合があるでしょう。
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)
最後に
「二律背反」は、日常では「矛盾っぽい状況」にも使われますが、もともとは、哲学で相互に矛盾する二つの命題(定立と反定立)が同等の妥当性をもって主張されることを指します。
状況に合わせて「矛盾」「ジレンマ」「トレードオフ」も選べると、言葉がすっと届きやすくなるでしょう。
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