ビジネスシーンで、同僚などが「〇〇さんはいつも平身低頭だよね」と言うのを耳にしたことはありませんか? 字面から何となく意味を推測できるものの、自信を持って意味を説明できる人は少ないかもしれません。一体「平身低頭」とは、どのような姿を指すのか一緒にチェックしていきましょう。
本記事では、「平身低頭」の意味や使い方、類語、対義語などを解説します。
「平身低頭」とは?
「平身低頭(へいしんていとう)」の意味は、辞書にこのように記載されています。
[名](スル)ひれ伏して頭を下げ、恐れ入ること。また、ひたすらわびること。「―して謝る」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「平身低頭」とは、「身を屈めて、頭を下げて恐縮すること」。上司や取引先の人などに対して、ペコペコと頭を下げてお礼をしたり、ひたすら謝っている様子を表しています。「平身」は、「身を屈めること」。「低頭」は「頭を低く垂れること」。頭や腰を曲げて、体全体で恐縮している様子を伝える四字熟語です。
使い方を例文でチェック!
「平身低頭」はビジネス用語ではありませんが、謝罪の場面で用いられることから、ビジネスシーンでよく登場する言葉です。実際にどのように使うのか例文で確認していきましょう。
1:お客様から「アルバイトの態度が悪い」とクレームがあり、店長が平身低頭して謝った。
仕事でミスをしたり、トラブルに見舞われた時は、相手に誠意を込めて謝罪をするもの。身を屈めて、ひたすら頭を下げて謝っている様子は、まさに「平身低頭」と言えるでしょう。単に頭を下げて謝っているのではなく、心からお詫びの気持ちを持っている場合に使うのが適切です。
2:被害者に納得してもらえるまで、平身低頭の姿勢で謝罪を続ける所存です。
「平身低頭」は四字熟語なのでややかしこまった印象を与えます。会社が重大なミスを犯してしまった場合には、誠心誠意問題と向き合うというニュアンスで「平身低頭」が使われることもあるでしょう。謝罪会見などで用いられる表現でもありますね。
3:いつも威張っている先輩も、部長の前では平身低頭の有り様だ。
職場などでは、人によって態度を変える人もいますね。後輩などの前では威張っており、態度が大きいにも関わらず、上司の前では人が変わったように腰が低くなり、恐縮している人もいるでしょう。上の立場の人に媚びへつらう姿を見て、「上司の前では平身低頭の有り様だよ」と揶揄する時にも使われます。
類語や言い換え表現は?
「平身低頭」のように、相手に対して謝罪をする様子を表す言葉には、「ひれ伏す」「許しを乞う」「三拝九拝」などがあります。1つずつ意味を確認していきましょう。
1:ひれ伏す
「ひれ伏す」の意味は、以下の通りです。
[動サ五(四)]顔が地面に付きそうになるほど身を低くして頭を下げる。平伏する。「神前に―・す」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「ひれ伏す」とは、両手をついて、頭が地面や畳につくほど下げて、礼をすること。自分よりも明らかに格が上で、頭が上らない相手に対して使うことがポイントです。顔が地面につきそうになるくらい身を低くすることで、相手への深い敬意や恐れ畏まっていることが想像できますね。
(例文)
・子分は親分の足元にひれ伏した。
・「私の前にひれ伏しなさい」と王様は言った。
2:許しを乞う
「許しを乞(こ)う」とは、自分の非を相手に詫びること。「お願いだから許してほしい」と相手に懇願するときに使います。「平身低頭」のように、言葉自体に頭を低く下げるという意味はありませんが、何度も頭を下げたり、お辞儀をする姿がイメージできる表現ですね。
(例文)
・兄は、お嫁さんにひたすら浮気した許しを乞うていた。
・父親は母に、昨晩深酒してしまった許しを乞うていたが、結局許してもらえなかった。
3:三拝九拝
「三拝九拝」は、「さんぱいきゅうはい」と読みます。どのような意味なのか確認していきましょう。
[名](スル)
1 三拝の礼と九拝の礼。
2 何度もお辞儀をすること。「―して金を借りる」
3 手紙文の末尾に書いて、きわめて厚い敬意を表す語。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「三拝九拝」は、本来手紙分の末尾に用いる敬意の語ですが、現代では何度もお辞儀をすることという意味で用いられます。「平身低頭」が謝罪の意味が強いのに対して、「三拝九拝」は、感謝の意味合いが強い傾向があるようです。
(例文)
・ギャンブルに負けて、両親に三拝九拝してお金を借りた。
・門限を破ってしまい玄関の鍵を閉められてしまったので、「お願いだから家に入れてほしい」と三拝九拝して頼み込んだ。
対義語
頭を低く下げて、ひたすら詫びていることを意味する「平身低頭」の対義語とは、どのようなものでしょうか? 一緒に見ていきましょう。
1:威張る
「威張る」の意味を改めて確認していきましょう。
[動ラ五(四)]威勢を張って偉そうにする。えばる。「部下に―・る」「手柄を―・る」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
他人に対して、強さを見せつけたり、偉そうなことを言っていると、「あの人は威張っている」と非難されることも。基本的に態度が大きい人に対して使われるため、腰が低い「平身低頭」とは、正反対の言葉と言えますね。
(例文)
・彼は昇進してから同僚に対して威張るようになった。
・弟は、クラスで一番人気のAちゃんと付き合うことになったと威張っていた。
2:傲慢不遜
「傲慢不遜(ごうまんふそん)」とは、「謙遜ではなく、おごり高ぶり人に屈することのないこと」。「人を見下すこと」を意味する「傲慢」と、「思い上がること」である「不遜」を組み合わせた言葉で、あまりいい意味ではありません。
「自分が偉い、正しい」と思い込んでいると、たとえ自分に非があったとしても、簡単には謝罪しないケースも多いもの。ひたすら謝る「平身低頭」とは、正反対の言葉と言えますね。
(例文)
・彼は傲慢不遜な人なので、周囲から距離を置かれている。
・「その傲慢不遜な態度を改めた方がいいよ」と友達から指摘された。
最後に
「平身低頭」とは、「ひれ伏して頭を下げ、恐れ入ること」。恐縮することという意味がありますが、お願いごとをしたり、感謝を伝える場面ではほとんど用いられません。基本的には、自分の非があり、相手に対して謝罪をする時に使うと覚えておくといいでしょう。類語や対義語も合わせて覚えてみてくださいね。
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