この記事のサマリー
・「医者の不養生」は、正しいと分かりつつ自分では実行しないことのたとえとして使われます。
・医者に限らず、使うことができます。
・類似のことわざには「紺屋の白袴」「大工の掘っ建て」「坊主の不信心」などが挙げられます。
健康を害した時などに「それは、医者の不養生だよ」と言われたことはありませんか? 聞き覚えはあるものの、実際どのように使えばいいのか迷う言葉でもありますよね。
そこで、この記事では、「医者の不養生」の意味や使い方、似たことわざ、英語表現を確認していきます。
「医者の不養生」とは?
まずは、読み方と意味から確認していきましょう。
読み方と意味
「医者の不養生」の読み方は、「いしゃのふようじょう」。患者に養生するように説く医者が、実は不摂生なことをしていたり、他人にはりっぱなことを言うのに自分は実行しないことのたとえとして使われます。
辞書では次のように説明されていますよ。
医者(いしゃ)の不養生(ふようじょう)
人に養生を勧める医者が、自分は健康に注意しないこと。正しいとわかっていながら自分では実行しないことのたとえ。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
医者に限らず使えることわざです。相手を指して言うだけでなく、「自分も気をつけよう」という戒めとして使われることもあります。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)

使い方を例文でチェック!
「医者の不養生」とは、どのような場面で使われることわざなのでしょうか? ここでは3つ紹介します。
内科の佐藤先生は生活習慣病だったそうだ。医者の不養生とはこのことだね。
普段患者に健康指導をしている立場の医者が、生活習慣病と診断されてしまったという例です。仕事で忙しく、自分のことに構っていられなかった結果、不健康な生活を送ってしまうこともあるでしょう。
時間管理の研修をしている人物が、いつも締め切りぎりぎりなのは医者の不養生と言われても仕方がない。
「正しいとわかっていながら自分では実行しないこと」のたとえとして使っています。医者に限らず、他人に教える立場の人ができていない場合に使えます。
子どもには「スマホばかり見てはいけない」と注意しておきながら、親のほうが食事中も画面を見ているのでは、医者の不養生だ。
人に注意している内容を、自分では守れていない例です。家庭内の会話でも使いやすいですね。

類語や言い換え表現は?
「医者の不養生」に似た意味を持つことわざは、「紺屋の白袴」「大工の掘っ立て」「河童の川流れ」があります。それぞれの意味を確認していきましょう。
紺屋の白袴
「紺屋の白袴」は、「こうやのしろばかま」もしくは「こうやのしらばかま」と読みます。意味は以下の通りです。
紺屋(こうや)の白袴(しろばかま)
紺屋が、自分の袴は染めないで、いつも白袴をはいていること。他人のことに忙しくて、自分自身のことには手が回らないことのたとえ。こうやのしらばかま。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「紺屋」とは、染め物屋のこと。昔は着る物を染め屋に持って行き、染めてもらうという習慣がありました。染め物屋は、お客の着物を染めるのに忙しくて、肝心な自分の着るものを染める余裕がないことから、「紺屋の白袴」ということわざができたとか。
仕事に精を出しすぎて、自分のことに手が回らないという点が、「医者の不養生」と似ていますね。
(例文)
・デザイン会社なのに自社のホームページは何年も放置されたままで、まるで紺屋の白袴だ。
大工の掘っ建て
「大工の掘っ建て」は、「だいくのほったて」と読みます。どんな意味があるのでしょうか?
大工(だいく)の掘(ほ)っ建(た)て
人のために立派な家を建てる大工が、粗末な掘っ建て小屋に住んでいる。他人の世話ばかりしていて、自分のことに無関心であったり、手が回らなかったりすることのたとえ。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
いつも家を建てている大工が、自分の家は粗末であることを「大工の掘っ建て」といいます。他人のことばかりを優先して、自分のことは後回しなことが「医者の不養生」と似ていますね。
(例文)
・立派なマンションを建てているのに、自分の住むところには無頓着だなんて、まるで大工の掘っ立てだよ。

坊主の不信心
「坊主の不信心」の読み方は、「ぼうずのふしんじん」。意味を確認してみましょう。
坊主(ぼうず)の不信心(ふしんじん)
仏道を修行しているはずの僧が、仏を信じないこと。医者の不養生。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
僧が仏を信じないとは、まさしく「医者の不養生」の類語だといえますね。
(例文)
・コンプライアンスの重要性を社内で何度も話している上司自身がルールを守らないのだから、まさに坊主の不信心だ。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)
英語表現は?
「医者の不養生」に近い意味を持つ表現は海外にもあります。
最も近い表現に “A physician often neglects his own health.”(医者は自分の健康をおろそかにしがちだ。)という言い方がありますよ。
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)
「医者の不養生」に関するFAQ
ここでは、「医者の不養生」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「医者の不養生」の読み方は?
A. 「いしゃのふようじょう」と読みます。
Q2. どんな場面で使う言葉?
A. 正しいと分かっているのに自分では実行できていない状況を表すときに使います。
Q3. 「河童の川流れ」と同じ意味で使っていい?
A. 同じではありません。「河童の川流れ」は「名人でも失敗する」という意味で、実行しないたとえとは焦点が異なります。
最後に
「医者の不養生」とは、「人に養生を勧める医者が、自分は健康に注意しないこと」。転じて、「正しいとわかっていながら、自分では実行しないことのたとえ」として用いられます。
「医者」という言葉がついていることから、お医者さんに対してのみ使われる言葉だと思われがちですが、それ以外でも使用できます。「紺屋の白袴」「大工の掘っ立て」「坊主の不信心」など、職業にまつわることわざも一緒に覚えてみてはいかがでしょうか。
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