「深謀遠慮」の読み方と意味
「深謀遠慮」という言葉を見て、見慣れない言葉だなと感じる人は多いでしょう。日常会話やビジネスシーンでもほとんど見ない四字熟語かもしれませんね。
中国の思想家が記した書物が由来とされるこの言葉は、スピーチや講演などで使われることがあります。意味や使い方を把握しておくことで、より内容を理解できるでしょう。
まずは、辞書で調べた意味と読み方を紹介します。
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【深謀遠慮】
読み方:しんぼうえんりょ
遠い将来のことまで考えて周到にはかりごとを立てること。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「深謀」とは、深く考えて立てたはかりごとを表す言葉。はかりごととは、物事が上手くいくように考えた計画や方法、目論見などを指します。「遠慮」は、言葉や行動を慎み控えることをイメージするかもしれませんが、この場合は遠い将来のことを思慮に入れ、考えをめぐらすという意味。
上記から、「深謀遠慮」は「先のことまで思慮に入れて深く考え、物事が上手くいくよう計画する」と言うことを表します。
「深謀遠慮」という言葉を、すんなりと読める人はそういないでしょう。ぜひ読み方も記憶にとどめておいてください。
由来は中国の書物
「深謀遠慮」の由来は、中国の学者であり政治家でもあった、賈誼(かぎ)による中国の書物『過秦論(かしんろん)』だとされています。『過秦論』は、秦王朝(紀元前905年から紀元前206年)の政策を批判する内容ですが、この中の一説に「深謀遠慮」が登場します。
法治国家を重んじる秦に対して、先のことまで深く考えないことを批判する際に「深謀遠慮」が使われているわけですが、これが日本にも伝わり今に至ります。
「深慮遠謀」という言葉もある
「深謀遠慮」と、漢字表記などがとても似ている「深慮遠謀」。「しんりょえんぼう」と読みます。「深慮」は深い考えや、深く考えをめぐらすことを指し、「遠謀」は通し将来まで見通したはかりごとという意味。辞書では「深謀遠慮」と同義とされていますので、言い換え表現として使えるでしょう。
「深謀遠慮」の使い方
ここからは、「深謀遠慮」の使い方を見ていきましょう。例文とともに紹介します。
例文を紹介
《例文》
・部長の発表した計画書を読み込むと、深謀遠慮であることがわかる
・彼女の深謀遠慮な性格に助けられ、チーム状態が上がった
・彼の仕事に対する深謀遠慮な姿勢に憧れる人は多い
「深謀遠慮」は、人となりや性格、仕事に取り組む姿勢を表す際に使えます。
《例文》
・歴史をたどると、大きく時代が動いた裏には深謀遠慮の策があったと考えられる
・勢力争いや権力争いはもちろんのことだが、恋愛にも深謀遠慮があるようだ
何かしらの作戦や策略には、深謀遠慮が関係することがほとんどでしょう。特に歴史を揺るがす大きな出来事には必ずあるのかもしれませんね。
「深謀遠慮」という言葉を日常的に使うというのは、それほど多くないでしょう。しかし、会話はもちろん、スピーチなどで登場することもありますので、使い方も把握しておくといいですね。
「深謀遠慮」と似た言葉
「深謀遠慮」と似た四字熟語を紹介します。語彙力アップにつながりますので、ぜひチェックしてください。
「思慮分別」(しりょふんべつ)
「思慮分別」とは、物事の道理や正邪・善悪などを注意深く判断することを意味します。また、その能力や判断を指すことも。「思慮」は、注意深く心を働かせて考えることやその考えを指し、「分別」は物事の道理をよくわきまえていることです。
この言葉は「深謀遠慮」と似た意味を持ちますが、「先を見通す」というニュアンスは含まないと言えるでしょう。
《例文》父は、思慮分別のある行動をとることができる人だった
「千思万考」(せんしばんこう)
「千思万考」は、あれこれと思いをめぐらすことを表す四字熟語。また、その思いや考えを指すこともあります。「千思」は、いろいろ思うこと、「万考」はさまざまに考えをめぐらすという意味です。
「深謀遠慮」と近い意味を持ちますが、「先を見通して計画する」という意味合いは含まないと言えるかも。その点は注意する方がいいですね。
《例文》私がA課長を尊敬するのは、千思万考の人だからです
「百術千慮」(ひゃくじゅつせんりょ)
「百術千慮」は、いろいろと方法を考え、思慮をめぐらせることという意味。「深謀遠慮」とかなり近い意味を持つと言えます。「深謀遠慮」は深く考えることを指しますが、「百術千慮」はいろいろな方法を考えることを指すため、その点が違いになるでしょう。
《例文》部長は百術千慮で指示を出すため、スタッフは確実に成長する
「深謀遠慮」と反対の意味を持つ言葉
「深謀遠慮」と反対の意味を持つ言葉を紹介します。
「軽挙妄動」(けいきょもうどう)
深く考えずに、軽々しく行動することを意味します。「軽挙」は軽はずみな行ないを意味し、「妄動」は考えもなくむやみに行動することを表します。軽々しく分別を書いた行動をした際に使われる四字熟語です。
《例文》彼の明るさは素晴らしいが、軽挙妄動などころが気にかかる
「短慮」(たんりょ)
四字熟語ではありませんが、「短慮」も反対の言葉にあたるでしょう。考えがあさはかなことや思慮の足りないこと、そのさまを表します。
《例文》結果を見ると、彼女の決断は短慮だったと言わざるをえない
四字熟語はおもしろい?
漢字四文字で構成される四字熟語を難しいと感じる人もいるでしょう。しかし、伝えたいことをたった四つの漢字で表現できるというところに、四字熟語のおもしろさがあると言えます。
四字熟語には、かっこいいと感じさせる言葉や元気の出る言葉もあります。自分の目指す姿や生き方、希望などを表現している四字熟語を見つけ、座右の銘やポリシーにするというのもいいですね。
知らない四字熟語を見つけたら、「知らない」で終わるのではなく、意味を調べてみるのがおすすめ。それを繰り返すことで、語彙力や表現力が高まるはずです。ぜひ座右の銘や自分のスローガンとなる四字熟語を見つけてください。
最後に
「深謀遠慮」について紹介しました。見慣れない四字熟語であり、日常で使うことはそれほど多くないかもしれません。この言葉はスピーチや講演などで登場することがあるので、意味や使い方を把握しておくといいですね。四字熟語にはさまざまなものがあるため、知らない熟語も多いでしょう。見慣れない四字熟語を見つけたら調べるようにするのも楽しいかもしれません。
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