「聖人君子」とはどういう意味?
「聖人君子」は、「せいじんくんし」と読みます。意味を辞書で確認してみましょう。
知識や徳の優れた、高潔で理想的な人物。「―のような振る舞い」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「聖人」は、「知恵があり、慈悲深い人」や「徳の高い僧」のこと。「君子」は、「学識や人格が優れた、立派な人」を指します。深い教養と人としての徳を併せ持つ、人格者のことを指す言葉だと言えるでしょう。
使い方を例文でチェック!
「聖人君子」は、主に素晴らしい人物を目にした時に口にする言葉です。どのように使うのが適切なのか、確認しておきましょう。
1:聖人君子とは、まさに彼のような人のことを言うのだろう。
世の中には、教養があり誰からも尊敬される「聖人君子」のような人がいるものです。そんな輝かしい人を目の前にして、「聖人君子とはまさに、この人のことを言うのだろう」と感心する人もいるでしょう。非の打ち所がないくらい、優れた人物だと言うことですね。
2:聖人君子じゃないんだから、先輩にだって下心はあるでしょう。
皆のお手本となるような人物は、時として浮世離れした存在としてみられがちです。あまりに優れていることから、「あの人は、異性にあまり興味がなさそう」「やましい感情は抱かなそう」などと、勝手な憶測が飛ぶこともしばしば。周りがそのような噂をしている時に、「聖人君子じゃないんだから」と言って、誰かが否定することもあるでしょう。
言い換えれば、「徳の高いお坊さんじゃないんだから、彼にだって恋愛感情はあるでしょう」というような意味合いになりますね。
3:あなた、聖人君子にでもなったつもり?
まるで自分が偉い人になったようなスタンスで、人を助けたりアドバイスをしていると周囲から反感を買うことも。この例文のように、同情されて助けられていることを、ありがた迷惑に思う人もいるかもしれませんね。
「聖人君子」の注意点
「聖人君子」はあまり頻繁に見聞きする言葉ではないため、誤った使い方をしてしまう可能性も。ここでは、「聖人君子」を使う際に注意したいポイントを3つ紹介します。
女性には使わない
「聖人君子」は、女性に対しては使いません。遥か昔、中国の儒教では、偉大さや崇高さを併せ持った人物を「聖人」と呼んだとか。道徳心を持ち誰からも尊敬される聖人は、高僧や時代の最高指導者などに対して使われました。当時そのような役職に就くのは男性が一般的であったため、今でも「聖人君子」は男性に対してのみ使われます。
ちなみに、品や教養のある女性のことは、「聖女」や「淑女」と呼ばれますね。
「聖人君主」は間違い
「聖人君子」を勘違いして、「聖人君主」と言っている人も中にはいるようです。「君主(くんしゅ)」とは、「世襲により、国家や領地を治める最高位の人物」。わかりやすく言えば、「王様」や「皇帝」になりますね。「聖人君主」という四字熟語は存在しないため、注意しましょう。
皮肉として使われることも?
先ほどの例文では、「聖人君子」は主に褒め言葉であることを紹介しましたが、時として皮肉として使われることもあります。「聖人君子」は、人格者を表す言葉でありますが、その一方で、「頭が固い」「真面目すぎる」という意味で用いられることも。褒め言葉として使用する際は、皮肉だと思われないよう気をつけたいですね。
類語や言い換え表現は?
「聖人君子」の類語としては、「雲中白鶴」「清廉潔白」「品行方正」などの四字熟語があります。それぞれどのような意味なのか、一緒にチェックしてみましょう。
1:雲中白鶴
「雲中白鶴」は、「うんちゅうはっかく」と読みます。「雲中」とは言葉通り「雲の中」。「白鶴」は「白い鶴」のこと。白い動物は、古くから神の使いとして特別な存在とされてきました。鶴の他にも、白蛇や白虎などがその例です。どこか俗世とは離れた聖なる存在であるということから、人格が優れた人物に対しても、「雲中白鶴」が用いられるようになったようです。
(例文)
・山にこもって作陶を続けるその作家は、まるで雲中白鶴のような人である。
・彼は雲中白鶴のような人物だ。
2:清廉潔白
「清廉潔白(せいれんけっぱく)」の意味は、以下の通りです。
[名・形動]心が清くて私欲がなく、後ろ暗いところのないこと。また、そのさま。「―な(の)政治家」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
心と行動が清く、私利私欲のない人のことを「清廉潔白」と表現します。嘘をついたり、不正をすることがなく、清く正しく生きている姿が、「聖人君子」とよく似ていますね。周りのお手本となる人物像です。
(例文)
・医師である彼は、どこまでも清廉潔白な人である。
・弱き者を守る弁護士として、清廉潔白でありたい。
3:品行方正
「品行方正(ひんこうほうせい)」の意味は、以下の通りです。
[名・形動]行いがきちんとしていて正しいこと。また、そのさま。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
真面目で正しい行ないをする人を見て、「彼は品行方正だね」と評価する時などに使用します。組織の中の規律をしっかりと守り、皆の模範性となるような人物を指す場合が多いでしょう。「聖人君子」のような、人として徳が高いというよりは、決められた規則を忠実に守る行動に重きを置いた言葉です。
(例文)
・学級委員長の田中君は、いつでも品行方正だ。
・部長の品行方正な振る舞いは、私たちの鏡です。
最後に
「聖人君子」とは、「知識や徳の優れた、高潔で理想的な人物のこと」。素晴らしい人格者を見た時に、「聖人君子とはあの人のことだろう」と口にします。基本的には、肯定的な意味として使われますが、場合によっては皮肉として用いられることも。いくつかの注意点に配慮しながら、使ってみてはいかがでしょうか?
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