この記事のサマリー
・「正鵠を射る」の意味は、物事の要点を正確に突くこと。
・「正鵠を得る」も同義で、どちらを使っても誤りではありません。
・類語は「核心を突く」「図星を突く」「的を射る」などがあります。
ビジネスシーンで「その意見は正鵠を射ていますね」と言われたことはありませんか? この言葉は、物事の要点を正確に突いたことを指す表現です。あまり日常的ではありませんが、知的で洗練された印象を与えます。
この記事では、辞書の情報を元に、「正鵠を射る」の意味、語源、「正鵠を得る」との違い、使い方や英語表現を紹介します。
「正鵠を射る」の意味と使い方
「正鵠を射る」の正しい読み方と意味、語源を確認しましょう。
「正鵠を射る」の読み方と意味
「正鵠を射る」の正しい読み方は「せいこくをいる」です。「せいこう」と読むのは慣用読みなので、注意しましょう。意味は、物事の急所を正確につくこと。
辞書では、以下のように説明されています。
正鵠(せいこく)を◦射(い)る
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
物事の急所を正確につく。正鵠を得る。「―◦射た指摘」
「正鵠を射る」の語源と由来
「正鵠」の「正」は鳥、もしくは正(鴟鳥)を描いた革の的を指します。「鵠」は鳥、もしくは鵠(くぐい)を描いた革の的を指します。一説には、「正」は「正しい」、「鵠」は「すぐ」という意味もあるようです。
このことから、「正鵠」とは、弓の的の中心にある黒い点を指します。そこから、弓で的の中心を正確に射抜く行為をたとえとして、「正鵠を射る」という表現が生まれたと考えられます。
文献例としては、梶井基次郎『Kの昇天』(1926年)に「若し私の直感が正鵠を射抜いてゐましたら」とあります。これは、感覚がまさに核心を突いていたという意味で用いていますよ。
「正鵠を得る」との違い
「正鵠を射る」と「正鵠を得る」は、どちらも「物事の急所を的確につく」という意味で、いずれも正しい表現です。
このほか、「正鵠(せいこく)」を使った表現には、「正鵠を失わず」や「正鵠に当たる」といった語もあります。
「正鵠を失わず」:的の中心を外さないことから、要点を確実につく意。
「正鵠に当たる」:矢が的の中央に当たることを意味します。
いずれの表現も、「正鵠」が「物事の核心」を象徴する言葉である点で共通しています。
「正鵠を射る」の使い方と例文
「正鵠を射る」は会議や討論の場で要点を的確に押さえているときに使います。慎重な議論や分析が求められる場面で、言葉に重みをもたせたいときに効果的です。
例文:
「彼の発言は正鵠を射ており、全員が納得した」
「質問が正鵠を射ていて、議論が一気に深まった」
「新入社員の提案は、正鵠を射る内容だった」
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)

「正鵠を射る」の類語・言い換え表現
「正鵠を射る」と似た意味を持つ表現を紹介します。いずれも、話し手が本質や核心を突いていることを伝えるのに役立ちます。
「核心を突く」
「核心」とは、物事の中心となる大切な部分を指します。そこを「突く」ということで、「正鵠を射る」と同様に、要点を的確に捉えている様子を表します。
例:「彼の指摘はまさに核心を突いていた」
「図星を突く」
「図星」とは、本来は弓の的の中央にある黒い点を意味します。そこを突くことで、相手の本音や急所を見抜いたときに使います。
例:「そんなことないと言ったが、本当は図星だった」
「的を射る」
「狙い通りに矢を当てる」意味から転じて、「要点を押さえる」「的確である」といった意味で使います。
なお、文化庁の「国語に関する世論調査」では、「的を射る」が本来の言い方とされていますが、「的を得る」も広く使われており、表現に揺れがあることが示されています。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)

「正鵠を射る」の英語表現
「正鵠を射る」に近い英語表現には、次のようなものがあります。
“be right to the point”
“be right to the point” は、「的を射る」といった意味を持ちます。
例文:That analysis was right to the point.
(その分析は正鵠を射ていた。)
参考:『プログレッシブ和英中辞典』・『プログレッシブ英和中辞典』(小学館)

「正鵠を射る」に関するFAQ
ここでは、「正鵠を射る」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「正鵠を射る」と「正鵠を得る」はどちらが正しいですか?
A. どちらも正しい表現です。
『デジタル大辞泉』や『日本国語大辞典』(ともに小学館)では同義語とされており、いずれも「物事の急所を正確につく」という意味を持ちます。
Q2. 「正鵠を射る」の読み方を間違えやすいと聞きますが?
A. 正しい読み方は「せいこくをいる」です。
「せいこうをいる」と読むのは慣用読みなので注意しましょう。
Q3. 類語にはどんな言葉がありますか?
A. 「核心を突く」「図星を突く」「的を射る」などがあります。
最後に
「正鵠を射る」という表現は、本質を突く力を象徴する言葉です。会話や文章の中で使えば、発言に説得力が加わり、知的な印象を与えることができますよ。
言葉の背景や正しい使い方を理解することは、自分の表現力を磨く第一歩。伝えたいことを、的確に届けるための一言として、覚えておきたい表現です。
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