昔、学校の試験勉強をやらずにテストに臨んだことで、ほとんど解答できずに、さんざんな結果になってしまったという経験を持つ方は多いかもしれません。他にも、ものを盗むなどして逮捕されたというニュースもよく見聞きするものです。
こうした状況を表す表現として、有名なのが「身から出た錆」という言葉。この記事では、この「身から出た錆」という熟語の読み方や意味、その他の類似表現や英語での表現についても、解説します。
「身から出た錆」の意味について
まずは読み方についてですが、「身から出た錆」は「みからでたさび」と読みます。意味は「災いが降りかかり苦労するのも、そもそもは本人の悪行や怠慢が原因となっていること」。原因が他者や外部ではなく、本人にあることを強調しています。
「身から出た錆」は、刀の錆についての話に由来します。「身」は刀と自分の身を表し、「錆」は金属の錆と不名誉な悪い事態のこと。刀の表面的な錆は削って落とすことが可能ですが、錆が刀の深いところにまで達した場合、どうしようもありません。
このことから、錆がまわって刀が使い物にならなくなったのは、本人がメンテナンスを怠ったこと、つまり自分自身にあることを意味します。
「身から出た錆」を使うときの注意点
「あなたの自己責任だ」という相手を批判する厳しい表現になるので、使う時には注意が必要です。一方、困難な状況に陥った本人がこの表現を使う場合、自らの行ないの結果を全て引き受けるという覚悟を示すことになります。
なお、「身から出た錆」は戦国時代からある古い表現で、江戸時代には、いろはかるたにも登場し、広く普及しました。
「身から出た錆」を使った例文
例文を見ながら、「身から出た錆」の実際の使い方を見ていきましょう。
1:「昔、健康管理を怠り、好きなスイーツや揚げ物ばかり食べていたことがあります。その結果、病気になってしまった。まさに、身から出た錆だと反省しました」
好きなものばかり食べていたので、健康管理がいいかげんになってしまい、体調を崩してしまったとのこと。このように、自分があることを怠ったことによって、悪いことが起きることを、「身から出た錆」と表現することができます。
2:「彼は、仕事で成績を上げるために少しずるいことをした経験があります。その後、顧客から悪い印象を持たれ、結局業績は下がってしまいました。身から出た錆なのかもしれません」
何かを怠った以外にも、不道徳なことをした結果、悪い結果が引き起こされたことも「身から出た錆」と表現できます。自分の行動によって、悪い結果になってしまうのを表すのが特徴です。
3:「このプロジェクトの失敗は、私の力不足。身から出た錆として、自ら責任を引き受けよう」
プロジェクトの失敗は自分にあると、述べています。自分自身に対して「身から出た錆」という表現を使う場合、すべての責任を引き受けるという覚悟のニュアンスも出てきますよ。
「身から出た錆」の類語について
次に、「身から出た錆」に似たことわざや類語について解説していきます。
1:「因果応報」
「因果応報」は、「いんがおうほう」と読みます。「前世あるいは過去の善悪の行為が原因となって、その報いとして現在に善悪の結果がもたらされること」という意味です。
仏教用語であり、「善の行為には善の結果」「悪の行為には悪の結果」という意味ではありますが、一般的には「悪いことをすると悪いことが起きる」といったような、勧善懲悪的な表現として用いられるシーンが多いようです。
例文:
・「私は以前、嘘をついてしまい、その後信用を失ってしまいました。因果応報だと思い、今では正直に生きるようにしています」
・「SNSで友人からのメッセージを無視し続けたので、とうとうブロックされてしまった。ある意味、因果応報なのでしかたがない」
2:「藪蛇」
「藪蛇」は「やぶへび」と読みます。意味は、「余計なことをして、かえって自分にとって不都合な結果を招くこと」。
例文:
・「相手企業の内部事情に、藪蛇に関与したら、面倒なことになってしまった」
・「いくら頻繁にやりとりがあるビジネスパートナーであっても、その人のプライベート事情にまで関わるのは藪蛇です」
3:「自縄自縛」
「自縄自縛」は、「じじょうじばく」と読みます。自分の縄で自分を縛ることから、「自分の心がけ・言葉・行為のために、自分の動きを制限することになり、苦しい立場になること」です。
例文:
・「仕事に妥協してはならないと話していたことから、苦しくても仕事で結果を出さないと面目が立たない。まさに、自縄自縛だ」
・「食に対するこだわりが強い彼は、自縄自縛で普通のものを食べようとしない」
「身から出た錆」の英語表現について
「身から出た錆」の英語表現についても見ていきましょう。
英語では、「have it coming」「ask for it」といった表現が使えます。「have it coming」には、「当然の報いがある」という意味がありますよ。「ask for it」も「自業自得」という意味があるので、「身から出た錆」を表現できます。
例文:
・「I had it coming. I should have done my best then(身から出た錆だ。あの時、全力を尽くすべきだった)」
・「You asked for it. You have to accept result that you did(身から出た錆だ。あなたは自分がやったことの結果を受け止めなければならない)」
最後に
「身から出た錆」は「災いが降りかかり苦労するのも、そもそもは本人の悪行や怠慢が原因となっていること」という意味であり、原因が他者や外部ではなく、本人にあることを強調しています。
他人に対して使う場合は、批判するような厳しい表現となるので、注意が必要です。一方、自分自身に対して使う場合は、全ての結果を自分によるものと受け入れることなので、覚悟を示すことになります。
この記事を参考に、「身から出た錆」という表現をうまく使い分けてみてくださいね。
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