「為人」の読み方は「ひととなり」
「為人」の読み方は、「ためひと」ではなく「ひととなり」です。人が持つ生まれながらの性質や、人柄などを表します。他者を評価するポジティブな場面のほか、ネガティブな場面でも使用できる言葉です。
もともと「為」という漢字には、何かを成し得たり何かのために行ったりという意味のほか、「~となる」という意味があります。
「為人」は難読漢字の1つといえるため、正しい意味や読み方、使い方などを押さえておきましょう。
・彼女の丁寧な言動1つひとつに、その為人がうかがえる
・トラブルに狼狽し責任を他者に押し付ける彼の姿に、為人を垣間見た気がする
ひと‐と‐なり【人となり/為=人】
出典:小学館 デジタル大辞泉
生来の性質。人柄。「誠実な—」
「為人」の類語や言い換え表現
「為人」には、さまざまな類語や言い換え表現があります。
・人柄(ひとがら)
・性格(せいかく)
・器量(きりょう)
・気性(きしょう)
・人間性(にんげんせい)
それぞれを正しく使い分けられるよう、ここでは意味や使い方、「為人」とのニュアンスの違いなどを確認していきましょう。

「人柄(ひとがら)」
「人柄」とは、その人に備わった性質や品格のことです。「為人」と非常に似たニュアンスを持ちます。違いは、とくに人の優れた部分を指す点といえるでしょう。
「人柄」は、人のよい性質に対して用いるのが一般的です。以下のように、他者を褒める言葉として使用してください。
・彼女は、誰とでも打ち解ける人柄のよい人物として知られている
・上司の立派な人柄に心を打たれた
「性格(せいかく)」
「性格」とは、その人の行動に現れる独自の感情や意志のことです。
「為人」が生まれながらの性質を指すのに対し、「性格」は心理的な特性や行動パターンなど、具体的な事象を指すと傾向にあります。
また「性格」という言葉は、人だけでなく物事に対しても使われます。
・彼女は、いつも笑顔を絶やさない明るい性格の人物だ
・仕事の新たなパートナーとなった彼だが、1日目にして早くも性格が合いそうだと感じている
・比較検討が必要なのはわかるが、そもそも両者は性格が異なるのではないだろうか
「器量(きりょう)」
「器量」には、以下のように複数の意味合いがあります。
・ある事をするのに、ふさわしい能力やその人が身に付けている品性
・おもに男性の才能に対する世間からの評価
・おもに女性の顔だち
・何かを上手に行うことや、行う人
「為人」と似ているのは、当人の能力や特性を指す点です。
ただし、これらは「為人」のように生まれ持ったものである必要はありません。その人の努力や鍛錬により身に付けたものも「器量」には含まれます。
さらに、「器量」は男性と女性それぞれの優れた点を言い表します。
顔だちが美しい人を「器量好し(きりょうよし)」と呼ぶなど、言葉の活用法も覚えておきましょう。
・彼女は、リーダーとしての器量を備えた人物だ
・上司は営業成績トップに輝いた彼の肩を叩き、「営業担当として器量を上げたな」と声をかけた
・彼女は、地元でいちばんの器量好しといわれている
・平家物語の一節「笛の御(おん)器量たるによって」は、笛を吹く技術のすごさを表している
「気性(きしょう)」
「気性」も、「為人」と同様に生まれつきの性質を表します。異なるのは、性質がしっかりしていることや、気が強いことも表す点といえるでしょう。
悪い意味でばかり用いる言葉ではありませんが、人の優れた部分を指す「人柄」や、さまざまな感情を表す「性格」とは、ややニュアンスが異なります。
使用時は前後の文脈も含め、相手に失礼のないよう気を付けましょう。
・時と場合に応じ、激しい気性は抑えたほうがいい
・彼女は小さなことにはこだわらない、さっぱりとした気性ですね
「人間性(にんげんせい)」
「人間性」とは、人間らしさのことです。人が人間として、生まれ持った性質を表します。
「人間性が優れている」と他者を評価する際に使うこともあれば、「人間性にもとる行為だ」とその行いを批判することも。
「もとる」は、「悖る」または「戻る」と書き、道理に反することです。ほかにも「人間性を疑う」など、さまざまな形で活用できます。
・彼女はいつも周囲に気を配り、相手の意見を尊重するなど人間性に優れた人物だ
・大切な人に嘘をついても平気だなんて、彼の人間性を疑う
「為」を使った難読漢字
「為」を使った難読漢字には、「為体(ていたらく)」や「為出来す(しでかす)」などがあります。
いずれも、日常生活で目にする機会は少ないかもしれません。正しく読み書きできるよう、意味や使い方をチェックしましょう。

「為体(ていたらく)」
「為体」とは、物事のありさまや様子のことです。「為」の字を使わずに「体たらく」と表記することもあります。
「為体」は、ネガティブなニュアンスで用いられるのが一般的です。おもに他者をののしったり、自分自身を軽蔑したりする意味合いが含まれます。
・あれほど注意したのに同じミスを繰り返すなんて、何という為体だ
「為出来す(しでかす)」
「為出来す」とは、通常では考えられない大きなことや、大失敗をすることです。「仕出かす」と表記することもあります。
「為出来す」は、「やる」や「する」の口語である「やらかす」や、困難をやり遂げる「やってのける」と似た意味を持つといえます。
会話で使用する際は、大きなことをするという意味のなかでも、「失敗」というネガティブなニュアンスを含むことを理解しておきましょう。
・何を為出来すかわからないと思うと、最後まで安心できない
・いつも温厚な相手をこれほどまで怒らせるなんて、とんでもないことを為出来したものだ
「為人」と類語の違いを知り正しく使い分けよう
「為人」は「ひととなり」と読み、その人が生まれ持つ性質を表します。「性格」をはじめ、「人柄」や「器量」など、さまざまな類語が挙げられる言葉です。
シーンによっては「為人」ではなく、類語への言い換え表現が適しているかもしれません。それぞれの意味やニュアンスの違いを知り、日常会話やビジネスシーンで正しく使い分けましょう。
メイン・アイキャッチ画像:(c)Adobe Stock