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「秋雨」の意味や読み方
「秋雨」は「あきさめ」または「しゅうう」と読み、秋に降る雨を意味します。俳句に用いる「季語」のひとつです。
あき‐さめ【秋雨】
出典:小学館 デジタル大辞泉
秋に降る雨。しゅうう。《季 秋》「—や水底の草を踏み渡る/蕪村」
季語とは特定の季節を表す言葉のことで、春に降る雨「春雨」(はるさめ)は、春の季語にあたります。
その年によって前後しますが、秋雨は8月末から10月初旬にかけて降るものを指す傾向にあり、穏やかに長く降り続ける点が特徴といえるでしょう。
天気予報で耳にする「秋雨前線」とは
「秋雨前線」とは、暖かい空気と冷たい空気がぶつかる境目のことです。秋が近付くと、北の冷たい空気は南へと移動します。南は、夏の暖かい空気が停滞した状態です。それぞれの空気がぶつかる場所が「前線」と呼ばれます。
「秋雨前線」は、東日本に弱く長い雨を降らせるのが特徴の一つです。また、台風が近づくと前線が刺激され、台風から離れた場所でも大雨が降りやすくなるといわれています。
「秋雨」以外の秋の雨の呼び方
秋の雨は、「秋雨」以外に以下のような名称で呼ばれています。
・秋入梅・秋黴雨(あきついり)
・秋の雷(らい)・秋雷(しゅうらい)
・秋時雨(あきしぐれ)
・秋霖(しゅうりん)
・御山洗(おやまあらい)
いずれも秋の長雨を表す言葉ですが、なかには初秋、晩秋に適したものも。日常生活で活用できるよう、それぞれの違いについて確認しましょう。

秋入梅・秋黴雨(あきついり)
梅雨のように長く降り続く秋の雨のことです。読み方は「あきつゆいり」が変化したものだといわれています。
「秋入梅」も「秋雨」と同様に秋の季語です。江戸中期の書物にはすでに登場しており、古くから存在する言葉であることが分かります。
秋の雷(らい)・秋雷(しゅうらい)
そもそも雷は夏に発生することが多いとされ「雷」も夏の季語です。「秋の雷」、「秋雷」とすることで初秋の雷を表す秋の季語になります。
秋雨前線に沿って起こる雷は、ときに激しい雨を伴うことも。季節が移り変わり、秋の深まりを感じる時期に適した言葉といえるでしょう。
秋時雨(あきしぐれ)
秋の終わりに降る雨のことです。そもそも「時雨」(しぐれ)には「秋の末から冬の雨にかけて降る雨」という意味があります。
時雨はザーザーと降るのではなく、パラパラと通り雨のように降る点が特徴。秋晴れの合間に突然降り出したかと思うと、すぐに止むような雨も「秋時雨」と呼ばれます。
秋霖(しゅうりん)
「秋雨」のように、秋の長雨を意味する言葉です。「秋雨」との違いは、秋の初めに降る雨を指す点にあるといえるでしょう。
また「秋霖」は、気象庁が用いる解説用語として登録されています。日常生活でよく耳にする天気予報用語ではないかもしれませんが、知識のひとつとして覚えておきたいですね。
参考:気象庁「季節現象」
御山洗(おやまあらい)
「御山洗」とは、富士山麓地方で旧暦の7月26日ごろに降る雨のことです。「御山」とは富士山のことで、旧暦7月26日は現代の初秋にあたります。
この時期、富士山は閉山を迎えます。かつては閉山とともに山の神が去り、祭りの前後に雨風や吹雪をもたらすといわれていました。現在は、多くの登山者で汚れた富士山を洗い清める雨とされています。
「秋雨」を使った俳句と秋の季語
季語である「秋雨」は、古くから俳句に用いられてきました。ここからは、現代に名を残す俳人たちが詠んだ句を見ていきましょう。
また、「秋雨」のような秋の季語も紹介します。かしこまったメールや手紙の挨拶文に使える語句も出てくるため、ぜひ目を通してみてください。

「秋雨」を使った俳句
・秋雨や俵編む日の藁一駄 / 河東碧梧桐
・朴を打つ秋雨手裏剣の如く / 川端茅舎
・秋雨や田上ミのすゝき二穂三穂/ 飯田蛇笏
・秋雨や身をちぢめたる傘の下/高浜虚子
河東碧梧桐(かわひがしへきごとう)の句にある「一駄」(いちだ)とは、馬一頭に背負わせる荷物量のことです。かつて、穀類や芋、木炭を入れる「俵」(たわら)は、藁(わら)や「かや」などで編まれていました。
「秋雨」を季語にした俳句は、読み手に秋の情景を思わせます。飯田蛇笏(いいだだこつ)の句に登場する「すすき」は、秋の七草のひとつです。
「俵編」(たわらあみ)も秋の季語であり、秋雨が降り続き農作業ができない間、収穫に備え俵を編む様子がうかがえます。
「秋雨」のような秋の季語
「秋雨」のような秋の季語には、以下の言葉が挙げられます。
・望月/月
・身に染みる
・晩秋
季語は俳句だけでなく、日常生活や時候の挨拶などでも用いられます。ここでは1つひとつの意味について確認していきましょう。
望月・月
「望月」とは、旧暦の「十五夜の月」のことです。特に、旧暦8月15日の月は「中秋の名月」と呼ばれます。
中秋の名月を愛でる風習は、平安時代に中国から伝わったといわれています。旧暦では7月〜9月を秋とし、真ん中にあたる8月15日を中秋としたとか。
旧暦8月15日にあたる日は、現代の9月〜10月初旬です。また、中秋の名月は必ずしも満月ではありませんが、「望月」には「満月」という意味も含まれています。
身に染みる
「身に染みる」は「しみじみと深く感じる」という意味をもつ言葉です。また、「秋の冷気が強く感じられる」という意味もあり、この場合は秋の季語になります。
俳句では「身に染む」の形で用いられることも。風が冷たくなり、季節が秋から冬へと移り変わる様子を表す季語です。
晩秋
「晩秋」は、秋の終わりを表す言葉です。旧暦9月の別名でもあり、11月の時候の挨拶に用いられます。
時候の挨拶とは、挨拶状や手紙の冒頭に来る礼儀文のことです。11月の時候の挨拶には「晩秋の候」のほか、「深冷の候」や「初霜の候」などがあります。いずれも冷え込みが厳しくなり、季節が冬へと移り変わる時期に適した表現です。
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秋を感じる言葉「秋雨」を日常生活に取り入れよう
「秋雨」は、秋に降り続く長雨を表す言葉です。秋の季語のひとつであり、俳句などに用いられます。
また、秋の雨にはさまざまな呼び名があります。それぞれ少しずつニュアンスが異なるのも、四季のうつろいが感じられる日本ならではといえるかもしれません。
秋を感じる「秋雨」をはじめ、季節を表す言葉を日常生活に取り入れていきましょう。
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