この記事のサマリー
・動機づけとは、行動を起こし、一定の方向へ向かわせて続ける心理的な過程を指す言葉です。
・動機づけには、外側の要因による外発的動機づけと、興味や関心による内発的動機づけがあります。
・外発的動機づけは行動のきっかけになりやすい一方、与え方しだいで意欲が続きにくくなる面もあります。
なぜ、頑張りたいのに動けない日があるのか? 反対に、何も言われなくても自然と体が動いてしまうのは、どうしてなのでしょう? そんな身近で切実な感覚の奥には、「動機づけ」という心理学の考え方があります。
仕事でも学びでも、気持ちと行動の間で揺れるときに知っておきたい言葉です。いつもの自分を少し違う角度から見つめるきっかけとして、読み進めてみてください。
「動機づけ」とは?
まずは意味から確認しましょう。
意味
人が行動を起こし、それを続けていく背景には、何らかの理由やきっかけがあります。心理学でいう「動機づけ」とは、そうした行動を生じさせ、一定の方向へ向かわせ、持続させる過程のことです。英語では「motivation」と表しますね。
辞書では、次のように説明されていますよ。
どうき‐づけ【動機付け】
《motivation》心理学で、生活体に行動を起こさせ、目標に向かわせる心理的な過程をいう。内的要因と外的要因の相互作用で成立する。モチベーション。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
動機づけは、内的要因と外的要因の関わりの中で成り立つ概念です。詳しくは後述します。

外発的動機づけについて
外発的動機づけは、報酬や評価、賞賛、罰の回避といった外的要因によって行動が促されることです。外発的動機づけは、日常でもイメージしやすい概念。「昇給や表彰を目指して努力する」、「締め切りに間に合わせるために集中する」といった行動はその一例といえます。
仕事や学習の場面では、外発的動機づけが行動のきっかけになることがあります。ただし、それだけだと行動が長く安定して続くとは限りません。外から与えられる刺激に頼りすぎると、その刺激に慣れたときに効果が薄れることもあるでしょう。
さらに、報酬の与え方や関わり方によっては、もともと持っていた興味や自発性を弱めてしまう可能性もあります。外発的動機づけは、行動を促す手がかりの一つとして捉えつつ、内発的動機づけとの関係もあわせて考えることが大切です。
内発的動機づけについて
内発的動機づけは、興味や関心、知的好奇心など、自分の内側から生じる要因によって行動が促されることです。活動そのものに意味や楽しさを感じており、その行為自体が目的になっている点に特徴があります。
内発的動機づけがあると、人は自発的に取り組むものです。知りたい、やってみたい、もっとできるようになりたいという気持ちは、行動を続ける支えにもなります。こうした動きは、自分の成長を実感することや、「自分はできる!」という感覚にもつながっていくでしょう。
参考:『有斐閣 現代心理学辞典』(有斐閣)

動機づけに関係する理論について
動機づけに関しては、心理学から理論が提唱されています。いくつかの理論を見ていきましょう。
欲求5段階説(マズローの法則)
アメリカの心理学者マズローが提唱した欲求5段階説は、人が何を求めて行動するのかを段階的に捉える考え方として知られています。人間の欲求を、生理的欲求、安全欲求、所属と愛情の欲求、承認欲求、自己実現欲求の5つに整理した理論です。
一般には、より基礎的な欲求が満たされることで、その先の欲求へ関心が向かいやすくなると説明されます。動機づけを「やる気の強さ」だけで捉えるのではなく、その背景にどのような欲求があるのかを考える手がかりとして、この理論は今も広く知られています。
衛生理論
衛生理論は、アメリカの心理学者ハーズバーグによって提唱された理論です。ハーズバーグは、仕事に対する満足を高める要因と、不満を生じさせる要因は同じではないと考え、前者を動機づけ要因、後者を衛生要因として区別しました。
動機づけ要因には、仕事の達成感、責任、成長実感などが含まれます。こうした要因は、仕事への前向きさや満足感につながりやすいものです。一方、衛生要因には、会社の方針、管理方法、労働条件、職場環境などが挙げられます。これらは整っていないと不満につながりますが、整えたからといって、それだけで強い意欲や満足が生まれるとは限りません。
この理論のポイントは、「不満を減らすこと」と「意欲を高めること」は同じではない、と分けて考えるところにあります。仕事への前向きさを考える際に、環境整備だけで十分なのか、それとも達成感や成長実感まで含めて見直す必要があるのかを考える視点になります。

動機づけを高める方法
動機づけを高めることは、マネジメントの一つといえるでしょう。動機づけを高める方法としては、目標設定やフィードバック、面接や研修などが挙げられますね。ここでは、動機づけを高めるいくつかの方法を解説しましょう。
目標設定
実現可能な範囲において具体的な数値や期限を設けることで、やる気を向上させる・達成感を見込むことが可能になります。当人の能力よりも少し上のレベルの目標を設定し、「頑張れば達成できるかもしれない」と思うことで、動機づけにつながるでしょう。
反対に、あまりにも実現可能性に乏しい目標を設定してしまうと、そこに至るまでのプロセスを描くことができなくなり、モチベーション低下につながることもあります。
フィードバック
取り組みに対して、適切なタイミングと内容でフィードバックを行うことは、動機づけを支える上で有効です。自分の工夫や成長が見えると、「できるようになってきた!」という実感を持ちやすくなります。
また、改善点と評価点の両方がわかることで、次に何を意識すればいいかが明確になります。ただ評価を伝えるだけでなく、行動の意味や変化を本人が理解できる形で返すことが、次の行動につながりやすくなります。
成長機会の提供
成長の機会があると、人は新しい知識や技能を身につけやすくなります。その過程で、自分の変化や前進を実感できると、仕事や学びに対する前向きさが育ちやすくなります。成長機会の提供は、単に能力開発のためだけでなく、自発的に取り組もうとする気持ちを支える意味でも重要です。
例えば、社内勉強会への参加を促すことや、学び直しの機会を設けることは、成長実感につながりやすい取り組みです。本人が「やらされている」のではなく、「できることが増えている」と感じられる環境を整えることが、動機づけの後押しになります。
「動機づけ」に関するFAQ
ここでは、「動機づけ」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「動機づけ」とは、簡単にいうと何ですか?
A. 人が行動を起こし、その行動をある方向へ向かわせ、続けていく背景にある働きのことです。単なる気分や根性の話ではなく、行動を支える要因として捉えると理解しやすくなります。
Q2. 「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」の違いは何ですか?
A. 「外発的動機づけ」は、報酬や評価、賞賛、罰の回避など外側の要因で行動が促されることです。「内発的動機づけ」は、興味や関心、知的好奇心など、自分の内側から生まれる気持ちによって行動することを指します。
Q3. 動機づけは仕事以外にも使える考え方ですか?
A. はい。仕事だけでなく、勉強、習慣づくり、趣味、学び直しなどにも関わる考え方です。人がどうして動けるのか、どうすれば続けやすくなるのかを考える場面で、幅広く役立ちます。
最後に
「動機づけ」は、誰かを無理に動かすための強い言葉ではなく、人がどうして動き、何があると続けやすくなるのかを考えるための手がかりです。
仕事でも日常でも、その仕組みを知っているだけで、自分にも周囲にも向ける目線がやわらかくなり、うまくいかない日にも必要以上に責めずにすみますよ。
TOP・アイキャッチ画像/(c)Shutterstock.com



