共感とは
「嫌なことがあった」「仕事で失敗して落ち込んでいる」。こんな時、一緒に怒ったり、悲しんだりしてくれる人がいるだけで、感情が和らぐものですよね。共感してくれる人がいるだけで、日々の生活が過ごしやすくなるとも言えます。ここからは、共感と同感との違い、類語、共感力の効果を解説します。
共感とは、他人が喜ぶのを見ると一緒に喜び、他人が悲しむのを見ると一緒に悲しむというように、他人と同じ感情や、考え、意見を持つこと。英語では「empathy」と表現します。
相手が、ある感情(嬉しい・悲しい・辛いなど)を体験している時、その感情の表れを見て、自分も同じような感情を体験することを言います。相手の感情を見ずに、「あの人はきっと辛いだろう」と勝手に自分で推測して悲しむというのは共感しているとは言えません。
自分勝手な解釈で相手を思いやるのではなく、相手の感じている気持ちや考えに寄り添う姿勢がとても大切です。
共感力を身につけるメリットは?
話をうまく聞いてくれたり、何も言わないのに気持ちを分かってくれたりする人、周りにいませんか? その人は、「共感力」が高いと言えます。ここでは、共感力が高いとどんなメリットがあるのか、見ていきましょう。
1:チームがまとまる
一昔前のリーダーは、「俺についてこい!」と先頭に立って、チームを引っ張っていくタイプが多かったのではないでしょうか? 最近では、チームメンバーの気持ちに寄り添い、一緒に伴走してくれるリーダーが、チーム力を高めると言えます。
困っていることやうまくいかないことを傾聴し、チームメンバーの悩みに寄り添います。そうすることで、信頼をえることができ、より一層チームの結束も高まるのです。
2:取引先のニーズに合った提案ができる
共感力が高い人は、相手の気持ちを察する力が高いので、顧客のニーズもしっかりと把握できると言えます。商談中に「こんなことに困っているのでは?」「あんなことが必要だ」と、顧客のニーズに合った提案ができるでしょう。
顧客からは、「自社のことを考えてくれている」と信頼も厚くなるはず。安心して任せることのできるパートナーだと、仕事を頼まれることも多くなると言えます。
3:人間関係が良好になる
人間関係がうまくいかない原因の1つに、会話のすれ違いが挙げられます。相手が言ったことと、自分が理解したことに違いがあり、お互いの気持ちにずれが生じてしまうことも。
相手の気持ちや意見を、自分事のように感じることができれば、上司や部下、同僚との意思疎通も円滑になることでしょう。意見交換も盛んになり、あらたなビジネスの展開に広がるとも言えます。
共感と同感の違いは?
共感と似た意味を持つ言葉に、同感があります。英語では「sympathy」。共感は、相手の気持ちを察することがメインなので、主語は「相手」。共感は、自分が感じた「相手の気持ち」を伝えることになります。
一方、同感は、自分の気持ちがメインなので、主語は「自分」。相手に伝えるのは、「自分の気持ち」です。同感は、相手が考えていることや思っていることに対して、自分の気持ちを伝えます。
友人から悲しい話を聞いた時、共感の場合は「(あなたは)悲しいよね」という表現を使います。同感の場合は「(私はあなたと同じで)悲しいよ」という表現になります。
「共感」と「同感」は、「相手の気持ち」と「自分の気持ち」のどちらに軸があるかで、ニュアンスが異なってきます。
共感の類語は?
共感と似た意味を持つ言葉にはどんなものがあるのでしょうか? ここでは3つ紹介します。
1:共鳴
共鳴は、他人の考えや行動に、自分もそうであると感じることです。共感が、他人の考えや感情を、自分もその通りだと感じることに対し、共鳴は対象が行動にあります。ある考えを伴った行動に賛成して、実際の行動に移す場合に使うことが多いです。「彼の活動に共鳴して、行動した」という使い方をします。
2:意気投合
初対面の人なのに、なぜか気が合い、話が大いに盛り上がった、という経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか? 意気投合とは、お互いの心がぴったり一致することを言います。「投合」は、気持ちが互いにぴったり合うこと。気持ちが一致する仲間との出会いは、とてもありがたいものですね。
3:以心伝心
禅宗の用語で、ことばや文字を用いずに仏法の極意が師から弟子へと伝えられること。ここから転じて、以心伝心とは、何も言わなくても心が互いに通じ合うこと、を言います。示し合わすことなく、友人と同時にメッセージを送り合ったという経験はありませんか? 心が通じ合っているからこそ、起こりうる嬉しい事象ですね。
共感性羞恥心とは?
共感性羞恥心は「きょうかんせいしゅうちしん」と読みます。他人が怒られたり、失敗したりして恥をかいている時、まるで自分事のように恥ずかしいと感じる感情のことを言います。
同僚が上司に怒られているのを見ていられない、まち中で人が転んだ姿を見て自分も恥ずかしくなった、カフェで隣の席の人が、コーヒーカップを落とし、店中から注目された、など日常的に共感性羞恥心を覚えるシーンは多く存在します。
共感力が高い人ほど、共感性羞恥心が高いと言えます。それゆえに、日常生活に息苦しさを感じてしまうことも。周りの人を気にかけ、その人と同じように恥ずかしさを感じるのは、心身ともに疲れてしまいますね。
一方で、自分とは無関係の他人の気持ちにも寄り添うことができるのは、共感性羞恥心の強みとも言えるのではないでしょうか。「人の機微に敏感で、気遣いができる」「洞察力に優れている」と捉え、良い面に目を向けるといいでしょう。
最後に
共感について理解できましたか? 相手の気持ちになって、感情に寄り添うことは、ビジネスだけではなく、プライベートでも必要なことですね。まずは、相手の話をしっかりと傾聴し、気持ちを受け止めること。視線やうなずき、表情や声のトーンにも気をつけて、「あなたの話を聞いています」という態度も大切です。
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