皆さんは「蕎麦屋の出前じゃないんだから」と言われた時に、意味を理解できるでしょうか? 「おじさん言葉」「若者言葉」というジャンルがあるように、近年では年代別で使う言葉のギャップが注目されるようになってきました。「蕎麦屋の出前」も、ジェネレーションギャップを感じるフレーズの1つでしょう。本記事では、意味や使い方について解説していきます。
「蕎麦屋の出前」とは? 会話の糸口になる豆知識
「蕎麦屋の出前」という言葉に聞き馴染みがない方も多いかと思います。まずは、意味や由来から確認していきましょう。
「蕎麦屋の出前」の本当の意味とは?
「蕎麦屋の出前」とは、単に蕎麦屋のデリバリーを表しているわけではありません。本来の意味は、進捗を問われた際に、現状とは違う曖昧でいい加減な返答をすること。例えば上司に「来週締め切りって言ってた資料、もう出来てる?」と聞かれた時、まだ何も手をつけていないにも関わらず「もうすぐ完成しそうです!」と答えるというような感じです。誰しも一度は経験があるかもしれませんね。
「蕎麦屋の出前」の語源は?
ではなぜ「蕎麦屋の出前」と呼ぶのでしょうか? その語源は蕎麦屋にあります。この言葉に馴染みがあるのは昭和世代ですが、この世代の出前といえば蕎麦がメジャーでした。蕎麦屋に出前を頼んだけれど届くのが遅く、電話をかけて確認してみると、明らかにまだ作り始めていないのにも関わらず「今出ました」「もう出来ます」などという曖昧な返事が返ってきたのだそう。
このような理由から、進捗状態をごまかす行為を「蕎麦屋の出前」と呼ぶようになったといいます。現代のデリバリーといえば、ファーストフードのように素早く調理できるものが多いですよね。それに加えて、配達状況は位置情報で確認できるなど、ひと昔前とは大きなギャップがあります。そのため「蕎麦屋の出前」は若者に馴染みのない言葉なのかもしれませんね。
「蕎麦屋の出前じゃないんだから」ってどういう意味?
ビジネスでもよく使われるこのフレーズ。上司との会話で「蕎麦屋の出前じゃないんだからさ」と、言われたことがある人もいるのではないでしょうか? この表現は、どちらかというと皮肉を込める時に使います。何かを尋ねられた時、適当な返事や明らかに嘘だと分かるような返事をしてしまうと「蕎麦屋の出前じゃないんだから」と言われてしまうかもしれません。
中には軽い冗談として使う人もいますが、上司からこのセリフを言われたことがあるという方は、信頼を欠く言動をしている可能性があるので注意が必要です。他にも、他社とやり取りをしていて、すぐに送ると言われていた資料が全く届かなかったりすると「蕎麦屋の出前みたいね」などと、上司から共感を求められるかもしれません。会話をスムーズに繋げるためにも、意味を理解しておくといいでしょう。
英語で説明できる?「蕎麦屋の出前」を外国の友人に紹介する方法
「蕎麦屋の出前」のように、曖昧な返事を意味するフレーズは海外にもあります。例えば、上司にプロジェクトの進捗状態を問われた時、進み具合がどうであれ「I’m on it.」と答える人が多いでしょう。このフレーズは、上司から頼み事をされた時や、指示を受けた時に使います。「今から取りかかります」と「今やっています」のどちらの意味でも使うことができるため、ある意味曖昧なニュアンスを持つフレーズですね。
近年、日本に訪れる海外の人々が増えており、日本語への注目も高まってきています。もしかすると「蕎麦屋の出前ってどういう意味?」と聞かれることもあるかもしれません。そんな時は「To answer you did something even you didn’t it, when someone ask you the progress status of things.(進捗具合を聞かれた時に、まだやっていないことをやっていると返答すること)」と説明するといいでしょう。
「蕎麦屋の出前」を使った日常会話のヒント
ここからは「蕎麦屋の出前」を実際の会話で上手く使うコツを解説していきます。
「蕎麦屋の出前」と言えば落語? 話題を広げるエピソード
落語では、蕎麦に関する演目が多く見られます。例えば、蕎麦屋で勘定をごまかして逃げる滑稽話「時そば」は広く知られた演目の1つでしょう。同じように「蕎麦屋の出前」も演目の1つとして披露されることがあります。手早く食べられる蕎麦屋の出前を頼んだのにも関わらず、出前が全く届かず、蕎麦屋に催促の電話を入れても「もう出てます」とお決まりのセリフを言われてしまう。
今のデリバリーの方が便利ではあるものの、置き配のようにサッと届けて去る現代のスタイルは、昔に比べると寂しさを感じる部分もあります。昔はよく利用されていた蕎麦屋を、現代と比較して語られる落語は広い年齢層に人気だといえるでしょう。落語に興味のある方は、話題の1つとして「蕎麦屋の出前」も知っておくといいですね。
「蕎麦屋の出前」ビジネスと日常生活での使い分け
ビジネスにおいて、他社と共同プロジェクトを進めていたり、なにかやりとりをしている時に「蕎麦屋の出前」を耳にすることがあるかもしれません。やり取りをしている他社から「明日には資料を送ります」と言われていたのに、全く送られてこない時に、同僚の間で「まるで蕎麦屋の出前みたいですね」と冗談まじりに言うことがあります。
一方日常生活では、「今やるよ」と言いつつ全く行動しない友人に、「蕎麦屋の出前か!」と、ツッコミとして使うことができるでしょう。
「蕎麦屋の出前」は、ビジネスでは第三者について、日常生活では話してる相手に対して使います。ビジネスにおいて、話してる相手にこの表現を使ってしまうと失礼にあたるので、目上の人に対して使うのは避けましょう。
最後に
コロナ禍の影響もあって、今の時代はデリバリーがどんどん進化しています。その中でも、蕎麦屋に直接出前を頼む人は少なくなってきていますよね。時代によって文化は変わりますが、言葉は受け継がれていきます。「蕎麦屋の出前」のように、今とは少し違う文化が感じられる言葉を知るのも面白いですね。
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