ビジネスシーンで「手弁当」という言葉を耳にしたことはありますか? 言葉の響きから、単なる「弁当」を連想するかもしれませんが、この言葉には単なる「弁当」を超えた、驚きの意味が隠されています。
なぜ「手弁当」がビジネス用語として使われるのか、その背景と活用法を知ることで、あなたの仕事に対する考え方や見え方が少し広がるかもしれません。まずは、「手弁当」の意味から紐解いていきましょう。
「手弁当」の意味は?
今では主に中高年の男性が使う「おっさんビジネス用語」の一つにも数えられている、「手弁当」という言葉。日常的にはあまり聞きなれないかもしれませんが、「手弁当」という言葉には予想外の意味が隠されています。まずは、意味から確認していきましょう。
「手弁当」の基本的な意味を知ろう
まずは「手弁当」の意味を辞書で確認します。
て‐べんとう〔‐ベンタウ〕【手弁当】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
1 自分で弁当を用意して持っていくこと。また、その弁当。
2 自費で、あることのために働くこと。「―で選挙の応援をする」
「手弁当」とは、実際の弁当を持参するという意味のほかに、「自分で費用や労力を負担して仕事をする」という意味を持っているということがわかりました。特に、ビジネスの場で自らの経費を負担して行動する際に使われることが多いでしょう。
「手弁当」の使い方を例文で学ぶ
「手弁当」という言葉の意味を理解したら、次は具体的な使い方について例文から学んでみましょう。
例文1:「プロジェクトに手弁当で協力する」
上記の例文は、プロジェクトに無償で労力や時間を提供することを意味しています。単に参加するだけでなく、自らのリソースを投入して貢献する姿勢が強調されているのです。
例文2:「初回ですから、手弁当で応援いたします」
この例文は、初めての取り組みやイベントにおいて、ギャラや報酬を求めずに無償で協力する姿勢を表しています。相手との信頼関係を築くために、まずは無償で協力することを示す場面で使われる表現です。
「初回ですから」という前置きがあるということは、2回目以降は「手弁当ではないよ」というニュアンスも含まれているでしょう。
例文3:「今回は試験的な取り組みですので、手弁当でお手伝いさせていただきます」
こちらも、無償で協力する意向を伝えています。「手弁当でお手伝いさせていただきます」というフレーズは、プロジェクトの成功に向けた積極的な姿勢を表現していますね。
「手弁当」の言い換え表現とその使い分け
「手弁当」という言葉は聞きなれない方も多いかもしれません。言い換え表現を知っておくことで、場面に応じて適切に使い分けることができますよ。
自腹
「自腹」とは、自らの費用を負担すること。自費を出すところまでは一緒ですが、「手弁当」は「働くこと」まで含んでいるので、その点が異なりますね。カジュアルな場面で使われることの多い言葉です。
例文:研修費用が出なかったので、自腹で参加することにした。
身銭を切る/懐を痛める
「身銭を切る」、「懐を痛める」という表現も、自らの資金を投入することを指します。ただし、こちらも「働き」までは含んでいません。
例文:プロジェクト成功のために、私は身銭を切って必要な機材を購入しました。
急な出費で懐を痛めてしまったが、どうしても必要な経費だった。
無償奉仕
「無償奉仕」は、「無償」と「奉仕」という言葉から成り立っています。「無償」は、報酬を求めないこと。「奉仕」は、利害を離れて尽くすことを意味します。
報酬を求めずに労力を提供するところは似ていますが、「無償奉仕」は特にボランティア活動や公共のための行動に使われることが多い言葉です。
一方で「手弁当」はビジネスシーンで使われる言葉ですから、「今回は自腹だけど、将来はよろしくね」という思惑が隠されている点が異なります。また、相手に「他の人には、もう頼めないわね…」とか「こんなにしてもらったんだから、次はちゃんとお支払いしないと」といったオブリゲーションを感じさせる強い思惑もあるでしょう。
例文:地域の清掃活動は、住民たちが無償奉仕で協力し合っている。
「手弁当」の英語表現は?
「手弁当」という言葉を英語で表現するのは少し難しいですが、「at one’s own expense」という表現が使えるでしょう。「費用は自分持ちで」という意味を持ちます。以下に、例文を紹介します。
I will contribute at my own expense to ensure the success of the event.
(イベントの成功に向けて、手弁当で力を貸します)
「contribute」は貢献する、「ensure」は確実にするという意味を持っています。
このようなのフレーズを覚えておくと、海外とのビジネスシーンでも役立つはずですよ。
最後に
「手弁当」という言葉は、単なる弁当のことでなく、ビジネスシーンで長年使われてきた言葉だということがわかりました。言葉の使い方や背景を知ることで、ビジネス的な戦略も垣間見えるようでしたね。現在使われている言葉の中には、完全に一致するものはないということも興味深いところです。
「おっさんビジネス用語」の一つとも言われていますが、学ぶべきところもあるのかもしれません。
TOP画像/(c) Adobe Stock