「おじさん構文」「おばさん構文」などというワードを聞いたことがある方は多いでしょう。最近若者の間で使われる「○○構文」というフレーズですが、その中に「ヒス構文」があります。今回は、ヒス構文について詳しく見ていきましょう。
ヒス構文とは？
ヒス構文という言葉に聞き覚えがある方もいるかもしれません。例文を紹介する前に、まずは意味から確認していきましょう。
ヒス構文は「ヒステリックな構文」を略した言葉です。ここでいうヒステリックとは、意味を飛躍させたり、自分の都合で解釈を変えたりすること。あるカップルの会話を例にしてみると、「友達の彼女、可愛かったんだよね」に対して「あー私は可愛くないもんね、ごめんね」というような返答が、ヒス構文にあたります。簡単に言えば、被害妄想的な構文ということですね。
ヒス構文は、友達やカップルの間でも使われる言葉ですが、特にお母さんが子どもに対して言うヒステリックなセリフは「お母さんヒス構文」と呼ばれています。最近は、ヒス構文メーカーといって、AIに適当なセリフを打って送信するとヒス構文が返ってくるというサイトも登場しており、エンタメとして楽しまれている側面も見られるでしょう。
ヒス構文が流行した理由
ヒス構文は「JC・JK流行語大賞2023コトバ部門」で2位にランクインしています。一体なぜこのワードがここまで浸透したのでしょうか？
元々、若者の間では自虐的な言動を「ヒスる」「ヒスが入る」というように表現していました。そんな中で「ヒス構文」という言葉を定着させたのは、お笑い芸人ラランドのサーヤさん。ラランドの公式YouTubeでは「お母さんヒス構文」をネタにした動画が発信されており、子どもに攻撃的なお母さんのヒステリックな返答が紹介されています。この動画が元ネタとなり、ヒス構文という言葉が浸透し始めたのだそう。
彼らの動画が称賛されている理由には、ヒス構文に共感性とユーモアが組み込まれていることが挙げられるでしょう。お母さんヒス構文として紹介されている一例には、「友達の家で飲んだ麦茶、美味しかったな〜」という子どもの発言に対して「あ、お母さんの入れる麦茶より友達の家の麦茶の方が美味しいってこと？ じゃあもう養子にもらわれなさい」というものがあります。
このような構文に対して、視聴者からは「リアルすぎる」「自分の家だけじゃないのが分かって安心した」などというコメントが寄せられているそう。家庭でのヒステリックな対応にストレスを感じていた人達も、ユーモアを含めた共感性の高いヒス構文を見ることで気が楽になると言います。
お母さんヒス構文は、子ども側だけでなく、お母さん側からも高い共感性を集めているようです。お母さんヒス構文に限らず、ヒス構文は友達やカップル同士の会話でも使われています。
ヒス構文における5つのタイプ
ラランドの動画では、ヒス構文が5つのタイプに分けて紹介されています。それぞれのタイプについて詳しく見ていきましょう。
1：論理飛躍型
その名の通り飛躍した論理にたどり着いてしまうヒス構文のこと。ラランドの動画では、猫を飼っている実家に帰る時に「猫アレルギーだから帰省できないな」と言うと、「じゃあ子猫を今すぐ捨てろって言うの？ じゃあ虐待するような人のところに預ければいいんだ」というような構文が紹介されています。一般的な返答よりも飛躍しているのが分かりますね。
他にも家族で外食した際、父が娘に「ギリギリまで勉強して頑張ったな」と言ったことに対して母が「私が無理矢理連れ出したってこと？」と返答する構文も紹介されています。
2：論点すり替え型
例文としては「外の子どもがうるさいなあ」と言ったことに対して「あんたが集中していないからじゃないの？ だから成績伸びないのよ。あんた今お母さんのこともうるさいと思ってるでしょ」というものがあります。共感を求めていただけなのに、文句と捉えられてしまって最終的に論点も変わってしまうという構文ですね。
3：自己否定型
これは自身を過剰に否定することで、相手から「そんなことないよ」という言葉を引き出そうとする構文です。「お母さんバナナ分けて」と言った子どもに対して「私はバナナも食べちゃいけないんだ。それとも産後太りに対する嫌味？」という例文が挙げられています。
これはカップル間でもよく見られる構文で、「あー私って不細工なんだ。そうだよね私が世界で一番の不細工だもんね」などと過剰に自分を否定することで、彼氏の「そんなことないよ、世界で一番可愛いよ」という言葉を待っているのですね。
4：大胆結論型
娘がお母さんのシャンプーを勝手に使ってしまった時に「お母さんはシャンプー使えなくなってもいいってこと？ 丸坊主にしてボディソープで頭洗えばいいんだ」というような例文が紹介されています。そこまで言ってないのに、大胆な結論を勝手に作り出されてしまうという構文ですね。
他にも「キンキンした声で怒らないで」に対して「じゃああなたのために死ねばいいのね？ それとも性転換？」というような、究極の二択を突き出す例文も動画で紹介されています。
5：大量連射型
これはとにかく大量の言葉を相手に浴びせかけることで、相手に反論する隙を与えないという構文です。文の内容がヒステリックというよりは、早口で長い文章を息継ぎなしで言うことがポイント。
動画内では「挨拶しないってことはお母さんのこと人間だと思ってないんでしょ、挨拶できない人は人間じゃないのでご飯あげません、犬や猫にまであげるご飯はありませんので」という文が紹介されています。
ヒス構文の例文を紹介
ここまでは、主にお母さんヒス構文の例文を紹介してきました。以下では、友達やカップルの間で見られるヒス構文の例を解説していきますね。
1：デートに遅れるってことは、私との時間を出来るだけ減らしたいのね。私はゴキブリ以下の価値ってことね。
2：ごめんごめんって言うけど、本当に思ってるの？ 私との会話早く切り上げたいだけだよね。あ、どうせ今も私のこと面倒くさいって思ってるんでしょ。はいはい、さっさと消えていなくなりますよ。
3：頑張れ？ 普段から私は頑張っていないってこと？ じゃあ明日から一日中フルーツでも売り歩いて脚が動かなくなって倒れてしまえばいいのね。
最後に
元々ヒステリックな内容を非難する意味で使われていたヒス構文ですが、最近では大げさすぎてクスッと笑えるようなヒス構文を、会話にまぜて楽しむスタイルが若者の間で流行しています。LINEではヒス構文のスタンプを購入して使う若者もいるそう。ラランドの動画にはユーモアのあるヒス構文がたくさん紹介されているので、興味のある方はぜひ見てみてくださいね。
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