そもそも「丁寧」とは?
私たちは、普段から「丁寧」という言葉を特に考えることなく使っています。「丁寧な仕事ぶりが評価された」「丁寧に作りこまれた工芸品」といったように。
しかしながら、いざ「丁寧」という言葉そのものについて問われると、答えるのに困るのではないのでしょうか。また、意味は分かっても、なぜ「丁寧」と漢字で書くのかという疑問点もありますね。
そこでこの記事では、「丁寧」の意味・由来・類義語、また丁寧な対応とはどのようなものなのかについても解説していきます。
「丁寧」の意味と由来
「丁寧」とは、注意深く念入りであること、または手厚く親切なこと。主に「細かいところまで注意が行き届いている」という意味と、「礼儀が正しい」という意味があります。
ところで「丁寧」には、古代中国の軍隊で警戒の知らせや注意喚起のために使われた楽器という意味もあることを知っていましたか? なぜ戦場の楽器が関係するのでしょうか。
一説には、「丁寧」は元々楽器の名前ではなく、擬音語だったのではないかという指摘があります。楽器の音を意味するものだった可能性があるわけです。しかし、楽器の音を意味する言葉が「注意が行き届いていること」を意味するようになったのは不思議なことですね。
日本語の表現に、「ちゃんちゃん(物事が滞らない様子)」がありますが、これは当初は金属や木材が打ち合わせる音やその様子を意味していたようです。音の意味から様子の意味へと転じたということになります。身近な例を挙げると、「チン」が電子レンジによる調理を意味することに似ています。
「丁寧」に関しても、「ちゃんちゃん」「チン」と同じような転化現象が起きたのかもしれません。つまり、「注意喚起のため楽器の音」から転じて「念入りに注意をすること」になったと見ることもできます。
「丁寧」の類義語
次に「丁寧」に言い換え表現について確認していきましょう。連想類語はいくつもありますが、ここでは一部の類語を紹介します。
1:「入念」
細かいところまで行きとどいていて、丁寧な様子のこと。
例文:
「見落としがないか入念に工事現場をチェックする」
「入念に仕上げられた李朝家具を購入する」
2:「周到」
手抜かりがなく、完全に行き届いていること。
例文:
「当局は、用意周到で人質の救出作戦を実行した」
「この演劇の脚本は相当周到に考え尽くされたものだ」
3:「丁重」
態度や接し方が礼儀正しく、手厚いこと。また、大切に扱うこと。
例文:
「外国使節団を迎賓館にて丁重にもてなす」
「陶磁器は丁重に梱包した後、発送いたします」
「丁寧な対応」について
ビジネスシーンはもちろんのこと、さまざまなシーンで丁寧な対応が必要な場合があります。そんな時、どのように振る舞い、またどのような心構えを持つことが「丁寧な対応」につながるのか見ていきましょう。
1:礼儀正しい言葉遣い
相手と話す時には、言葉遣いはちゃんとしたいもの。尊敬語・謙譲語・丁寧語を的確に使い分け、失礼がないようにしたいところです。上質な言葉遣いができるかなどで、品位にも関わってきます。
また、話す速度にも気を配りたいですね。話す速度が速すぎたりすると、相手が聞き取りにくくなる可能性がありますし、「落ち着きがないのかな」と捉えられるかもしれません。
2:気配り
気配りを通じて、相手が望むことを実現することは大切です。それも、単に相手の要望の表面的な部分ではなく、その本質を見抜き、解決できるようにするのが望ましいでしょう。相手の言ったことをそのまま実現しただけでは、本当に解決したとは言えないケースもあります。
自動車の大量生産を世界で初めて実現したフォード社の創設者ヘンリー・フォードは、次のような言葉を残しています。
「If I had asked people what they wanted, they would have said faster horses.(もし人々に望むものを聞いたら、彼らはより速い馬がほしいと答えただろう)」
駿馬を求める顧客には、「速く移動したい」という要望が根底にある。駿馬そのものがほしいというわけではない。到達点は、一般庶民には高嶺の花だった自動車を低コストで生産することだった。そのような解釈で受け継がれています。
相手の本当の要望は、見えにくいものです。相手とのコミュニケーションなどを通じて、根源的な問題を突き止め、それを解決する手段を提供する(あるいは期待以上の成果を出す)ことは、丁寧な対応と言えるでしょう。
ただし、問題の本質を突き止めても、自分の能力次第では対応できないこともあったりします。まずは、自分ができる範囲の丁寧な対応を考えていきましょう。
3:誠実さ
丁寧な対応にあたっての大事なものとして、誠実さが挙げられます。これがなければ、対応もなおざりになりがちです。特に、自分が忙しくなればなるほど、また非常時になればなるほど、誠実かどうかは見えやすくなるもの。いわば、メッキが剥がれるというわけです。ましてや、詐欺師のように下心があれば、表向きは良くても対応そのものは丁寧・親切と言えるのかどうか、疑問でしょう。
誠実性は、儒教において「仁義礼智信」の「信」として重要な要素の一つとされています。誠実というのは、丁寧な対応のみならず、日常生活においても重要な価値観と言えるでしょう。
最後に
丁寧な対応においては、礼儀正しい言葉遣いや要望の本質をつかむ気配り、そして誠実さが大切です。言葉遣いについては、いろいろな敬語を覚えなければなりません。要望の本質を理解するには、徹底して考え抜く必要性が出てきます。そして、誠実さは日ごろから相手を下に見るような考え方を持っていては、なかなか身につかないもの。日常的に丁寧でいることを心がけていきたいですね。
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