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2022.11.23

「おっしゃられる」は正しい敬語? 概要や本来の使い方、言い換え表現を解説

「おっしゃられる」は、「言う」の尊敬語「おっしゃる」の後ろに、尊敬語の「~られる」が続いたもの。二重敬語ですが、習慣として広く定着しています。この記事では、「おっしゃられる」の概要や本来の使い方、言い換え表現について解説します。

「おっしゃられる」という表現は正しくない?

日本語には、敬語表現として尊敬語や謙譲語、丁寧語があり、使い方が難しいと感じる方も多いのでは? 時には「間違いないはず」と思っていた言葉遣いが、実は「間違っていた」というケースもあるのです。できる限り「なんとなく」使うことは避けたいもの。

さて、日常生活において「おっしゃられる」という表現に触れている方は、少なくないのではないでしょうか。「おっしゃられる通り」「おっしゃられた」などと、目上の人が話した時に使うシーンが、一般的だと思います。しかしながら、「おっしゃられる」は本来の表現ではありません。

この記事では、「おっしゃられる」の概要や本来の使い方、言い換え表現を紹介していきます。

そもそも「おっしゃられる」とは?

まずは、「おっしゃられる」を分解していきましょう。そもそも「おっしゃられる」とは、「言う」の尊敬語「おっしゃる」の後ろに、尊敬語の「~られる」を続けた二重敬語。基本的に、二重敬語は誤った使い方です。

しかし、「おっしゃられる」のような二重敬語については、文化庁の文化審議会答申『敬語の指針』(2007年)において、次のような趣旨で言及されています。「一般に適切ではないとされているが、言葉によっては習慣として定着している」とのこと。

また、習慣として定着している二重敬語の例には「お見えになる」「お召し上がりになる」「お伺い申し上げる」「お伺いする」などが挙げられています。

文化審議会の答申から判断できるように、二重敬語は言葉によっては慣習として定着しているわけです。実際、「おっしゃられる」は二重敬語ですが、既に巷で広く使われています。インターネット上に公開されている、パネルディスカッションの採録や、討論会の議事録においても「おっしゃられる」を確認することができますよ。

「おっしゃられる」という表現は、二重敬語であることを考慮すると、本来の使い方ではないのかもしれませんが、絶対に使ってはいけないとも言い切れないようです。なぜなら、習慣として定着しているから。また、人によってはあえて尊敬語の「~られる」をつけて、より丁寧に表現したいということもあるでしょう。

ところで、「おっしゃられる」は漢字で書くと「仰られる(おっしゃられる)」。意味はほぼ同じですが「仰せられる(おおせられる)」とは、漢字の読み方が異なります。見た目が似ているので、間違えないように気を付けましょう。

デスクで働く男性の横から話しかける女性
(c)Shutterstock.com

「おっしゃられる」の本来の使い方について

それでは、「おっしゃられる」は本来、どのように使われるのでしょうか。既に述べたように、「おっしゃられる」は「言う」の尊敬語「おっしゃる」の後ろに、尊敬語の「~られる」を続けたもの。これは、二重敬語の状態ですね。

つまり、「おっしゃる」とするだけで尊敬表現になっているわけです。したがって、「先生のおっしゃる通りです」などと表現すれば、それで敬意を表したことになります。

「おっしゃられる」の言い換え表現について

「言う」の尊敬表現は、「おっしゃられる」だけではありません。言い換え表現も確認していきましょう。

1:「仰せられる(おおせられる)」

「仰せられる(おおせられる)」は、「命ずる」の尊敬語ですが、「言う」の尊敬語でもあります。目下の人に対して言葉をおかけになる、というニュアンスがあるようです。

一説には、「仰せられる」は「おおす(仰)」に受け身・尊敬の「~られる」がついた形であるとされています。命令を受ける立場の人を主にした受け身の意味から、目上の人が「お命じになる」という意味になったのだとか。さらに、命令のニュアンスが弱くなって「おっしゃられる」という意味に転じたとのこと。説によれば、「命ずる」から「言う」という意味が生じたと解釈できそうですね。

例文:
「主は私たちに真理を仰せられる」
「殿下は懸念事項を念頭に、次のように仰せられた」

2:「宣う(のたまう)」

一説によると「宣う(のたまう)」は、動詞「のる(宣)」に動詞「たまう(賜)」がついた、「のりたまう」が変化したものとされています。目上から目下という、告げ知らせる行為の意味が原義とのこと。ここから、目上の人の「言う」動作を敬う意味が生じた、もしくはシンプルに「申し聞かせる」という意味が生じたとも言われています。

現代では、敬語としてではなく、「言う」をからかった表現として使われるケースもあるようです。どちらかと言えば、ネガティブなニュアンスになります。

例文:
「あの男は自分を優遇するようにと、好き勝手に宣っている」
「不平不満ばかり宣う彼には、もうあきれ果てている」

最後に

微笑みかけながら男性に話しかける女性
(c)Shutterstock.com

以上、「おっしゃられる」についてでした。実は「おっしゃられる」は二重敬語だったのです。「おっしゃる」が元々の形ですが、習慣となった「おっしゃられる」もさまざまなシーンで広く使われていますね。

言葉は使われていくうちに、概念や言葉遣いが変化していく傾向があります。今、私たちが使っている多くの敬語も、数十年・数百年と時間を経るにつれて、全く違ったものに変わっているのかも…。例えば本来「お前」は貴人を指す言葉でしたが、今では同等・目下の人に使う表現になっています。

それにしても、敬語は普段から使い慣れているものの、やはり難しいですよね。尊敬語と謙譲語を組み合わせるということもあり、改めて日本語は複雑だと感じる人も多いのではないでしょうか。

「ご苦労様です」「ご参加されますか」「お客様が参りました」「拝見していただきますか」など、使い方に注意したい言葉遣いはたくさんあります。使い込んで、慣れていくしかありません。常日頃から、敬語の使い方には注意を払いたいものですね。

TOP画像/(c)Shutterstock.com

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