自己否定は誰でもしてしまうもの
自分で自分を否定的に捉えてしまうことは、誰しも一度は経験したことがありますよね。特に、他人と比較して、自分の評価を低くしてしまう場合が、多いのではないでしょうか。この記事では、キャリアコンサルタントの櫻井宏美さんと一緒に、自己否定について考えていきましょう。
職場でストレスを感じているOggiブレーンの方から、こんなお悩みをいただきました。
「雑誌やインスタを見ると、資格取得などで勉強されている方が多く、自分には何もないな、と悲観的になってしまいます」(Yさん・39歳・女性/宮城県)
雑誌やSNSでは様々な方が、自分の得意なことやチャレンジしたことを披露していますね。そんなキラキラした光景を見ていると、焦る気持ちも起こるもの。そんな時はどんな風に捉え直せばいいのか、櫻井さんにお話をおうかがいしました。
「他の人が前向きに進んでいる姿を見て、『私には何もない…』と、ネガティブに考えてしまわれているのですね。他人と自分を比較して、後ろ向きに考えてしまう人は、自己否定をしてしまいがちです。しかしながら、Yさんはご自身の心の状態に、“気づいている”ということが、素晴らしいことだと思います。
以前、同じような悩みを抱えた方がいらっしゃいました。その方は何も資格を持っておらず、学生時代の同級生が仕事で成長し、資格取得や勉強に励んでいる姿に触れ、自分で自分を卑下されていました。
特にやりたいことがあるわけでもなく、自分でもどんな資格を取ればいいのか、わからないという状態。そこで、資格は脇に置き、まずご自身がどんなことをしている時が一番楽しいか、尋ねてみました。
自分の好きなことに集中していると、人は他の人と自分を比較しにくくなることが多いからです。
その方は、花を生けるのが好きだ、ということに気づかれました。そこで、まずは、フラワーアレンジメントの教室に通われて、少しずつ自分の好きなことに集中できる時間を持つようになりました。
その後、フラワーアレンジメントの講師を目指すコースに進まれ、現在は、講師として活躍されています。
『自分を卑下することが全くなくなったとは言えませんが、他人と比較することも少なくなり、少し自信がつきました』と、嬉しそうにお話しされていました」(櫻井さん)
全ての方に同じことが当てはまり、上手くいくかというと難しいかもしれませんが、アクションを起こさないと同じ状態が続いてしまうだけです。
「まずは、行動することが大切です。自分が好きなことを紙に書き出す、ということからでも構いません」と櫻井さんは言います。自分の好きなことを見つけて、集中できるきっかけを掴む行動から始めてみてはいかがでしょうか?
ここからは、自己否定の原因や、そういう考えに陥る人の特徴を見ていきましょう。
自己否定とは?
自己否定とは、自分で自分を否定することです。仕事をしていても、「自分にはできない」「失敗するに決まっている」と前向きな気持ちになれない状態になります。そうなると、周りとのコミュニケーションがとりにくくなったり、何かに挑戦することが怖くなったりして、行動に移せなくなる場合も多いものです。
自己否定が強いこと自体は、病気とはいえません。しかし、自分で自分を否定するあまり人と気軽に話せない、憂うつな気分、仕事を続ける自信が持てなくなるといったことが長く続く場合は、心の病気にかかっている可能性も考えられます。周りの人に相談できる環境を、整えておくことが大切ですよ。
自己否定の原因は?
自己否定に陥る原因はさまざまです。本人の心の持ちようとも考えられますが、それだけではないことも。ここでは2つ紹介します。
1:子どもの頃の親子の関係性
子どもにとって両親の存在は、とても大きいものですよね。子どものころに親からほめられない、言動を理解してもらえない、という環境で育つと、その子どもは自己否定が強まることが多いようです。また、親から放ったらかしにされて、愛情を持って育てられていない場合や、心身の虐待を受けた経験がある場合、自己否定が高くなる傾向にあるのだそう。
一方で、必要以上に保護されて育てられたり、親の意のままにコントロールされて育てられたりした場合も、自己否定が強くなる傾向にあります。
2:失敗や挫折を経験していない
生まれ育った環境に関係なく、社会人になるとさまざまなストレスから、自己否定をしてしまう場合も…。職場の人間関係のもつれ、仕事上の思いがけないトラブルや失敗といった、ネガティブな要因が自己否定を生んでしまうことがあります。
「学生時代は何もかも順調だったのに」と過去の自分と比較して、落ち込んでしまう人もいるでしょう。学生時代に大きな失敗や挫折を経験せず、社会人になって、初めて敗北感を経験する人の中には、自己否定を強く感じる人が多いかもしれません。
自己否定してしまう人の特徴は?
どんなタイプの人が、自己否定してしまうのでしょうか。ここではその特徴を解説します。
1:自信がなく後ろ向き
自己否定してしまう人は、自分に自信がなく、起きてもいない結果を、悪い方向に想像してしまう傾向にあります。積極的に行動できないばかりではなく、指示されたことでさえ、やる気が起きにくくなることも。「自分には無理だ」「どうせ失敗するから、やらない方がいい」と、行動を起こさないことが多くあります。
2:他人と比べてしまう
他人と自分を比較して、そのギャップの大きさに、ネガティブな気持ちを抱いてしまうのも、自己否定が強い人の特徴です。上司や同僚、友人など周りの人の優れた才能と、自分が劣っていることを比較してしまいます。
その結果、「自分は、あの人のようにできるわけがない」とあきらめてしまう場合も多いようです。また、自己否定してしまう人は、劣等感が強いのも特徴と言えるでしょう。
3:完璧主義者の傾向が強い
自己否定が強い人は物事に対して、完璧でなければならない、という思いが強い傾向にあります。自分が完璧ではないことが、許せないと思ってしまう人が多いようです。例えば、仕事がうまく進まなかった時、「スケジュールを完璧にしなかった、自分が悪い」と自己否定してしまいます。
たとえ、誰かにほめられたとしても「自分はまだまだ」と思いがち。完璧主義が強すぎて、自分に合格点が出せないのです。
自己否定を改善する⽅法とは?
自己否定を少しでも和らげるには、どうすればいいのでしょうか。まずは、無理のない範囲で自分にできそうなことから始めてみましょう。ここでは改善法を3つ紹介します。一緒に見ていきましょう。
1:自分で自分をほめる
自己否定をしてしまう人は、自分を肯定することが苦手です。まずは、自分をほめることから始めてみましょう。その日、自分ができたことを自分でほめてみます。どんな些細なことでも構いません。
5分早く会社に着いた、電車で席を譲ってあげた、観葉植物に水をあげた、といった何気ない行動でも、「わたし、よく頑張った」とほめてくださいね。自分をほめる習慣を身につけることで、少しずつ自信がつくようになります。
2:感謝をする
他人への「ありがとう」の気持ちを持つことも、自己否定を和らげます。その日の終わりに、その日起こった出来事で、3人の人への感謝の気持ちを、書き出してみてください。相手を思いやり、感謝することは、ポジティブな気持ちを呼び起こします。
3:リフレーミングする
リフレーミングとは、物の見方・視点を変えるとことをいいます。例えば「失敗ばかりする」は、「失敗した分、フィードバックがたくさん得られた!」といったように、ネガティブなことをポジティブに捉え直します。自分で自分を否定する前に、少し立ち止まって、リフレーミングする時間を取りましょう。
最後に
今回は、自己否定について詳しく解説しました。つい自己否定してしまう人は、小さなことでも構わないので、自分で自分をほめることを心掛けてくださいね。もし、仕事がうまくいかなくても、「そういうこともあるよね」と少し気楽に構えてみましょう。
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※本記事はOggiブレーン会員に対して2022年10月に行った「働き方アンケート」に回答いただいたOggi読者の回答をもとにしています。
キャリアコンサルタント 櫻井 宏美
2017年国家資格キャリアコンサルタント取得。保険薬局・薬剤師の新卒採用を担当。Well-beingが高まる働き方を模索&実践中。