「以前」とは?
「以前」の意味や使い方について、じっくり考えたことのある人はあまりいないのではないでしょうか? そう考えると「以前」は、いつのまにか覚えて、いつのまにか使っている言葉だと言えますね。
本記事では、「以前」が示す範囲や使い方について、あらためて紹介します。普段何気なく使っている言葉と向き合う機会にしてみませんか?
「以前」の意味
「以前」には、以下の3つの意味があります。辞書で言葉の意味を確認してみましょう。
い‐ぜん【以前/×已前】
1 その時よりも前。「一二時―に到着する」⇔以後。
2 今より前の時点。現在から見て近い過去。副詞的にも用いる。「―と違って今では」「―会ったことがある
3 ある状態に達する前の段階。「結婚―の住所」「能力―の問題だ」
[補説]「以」は基準となる数値を含むのが普通であるが、例えば「明治以前」というときに、明治時代を除いて、その前をさす場合もある。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
1つ目の「その時よりも前」という意味における「一二時以前に到着する」という例文は、言い換えると「11時59分までに到着する」ということになります。
2つ目の意味の「今より前の時点」や「現在から見て近い過去」というのは、過去にあった出来事を指し示す使い方です。
そして、3つ目の「ある状態に達する前の段階」という意味での使い方は、例えば「膝をケガする以前」など。この場合の「以前」は、「ケガをしている状態よりも前」を指します。
「以前」の使い方を例文を用いて紹介
「以前」は抽象的な表現なので、例文を見ながら具体的に考えると理解が深まります。意味合いを意識しつつ、使い方も押さえていきましょう。
1:「15時以前に到着できるように、早めに家を出た」
「15時以前」は、「15時よりも前」の時間を指します。「以前」は、日にちや時間とセットで使われることが多い表現です。
2:「以前の私は毎日泣いてばかりいた。しかし今では笑いが絶えない毎日を送っている」
この例文における「以前」は、「今よりも前の時点」を表しています。「以前はネガティブな性格だった」などからも分かるように、比較的近い過去を表しているところもポイントです。
3:「彼女が今の会社に就職する以前の勤め先を私は知りません」
「今の会社に就職するよりも前」の段階を、「以前」という言葉で表しています。
「以前」と似た意味を持つ言葉を紹介
「以前」と似た意味を持つ言葉を見ていきましょう。言葉は、相手やシーンにあわせて使い分けると、好印象に繋がります。
1:先般(せんぱん)
「先般」とは、「このあいだ」という意味です。現在から比較的近い過去を表すことができます。ビジネスシーンなど、丁寧な言葉遣いをしたい場合におすすめの表現です。
「以前に申し上げた通り…」と同じ意味で、「先般申し上げた通り…」などと置き換えができます。
2:かねて
意味は「前からずっと」。「かねてから」「かねてより」という表現もあります。「かねてよりお会いしたいと思っていました」などといった使い方が可能です。
3:今しがた
「今しがた」は、「ついさっき」というとても近い過去を表す言い方です。「今しがたお帰りになったところです」というように使うことが多く、やや仰々しい印象になります。もう少しカジュアルな表現をしたい場合は、「先ほど」と言い換えて、「先ほどお帰りになったところです」とするといいですね。
4:前々
「前々」とは「ずっと前」という意味です。「前々からお会いしたいと思っていました」などというように使うことができます。
「前前」と書いて「ぜんぜん」とも読みますが、「まえまえ」という読み方をすることのほうが多いです。
5:〇〇よりも前
「〇〇よりも前」は、「以前」と同じ意味で使うことができるカジュアルな言い方。
例えば、「15時よりも前に待ち合わせ場所に着くようにするね」というように、会話のなかで使われることが多いです。
6:前に
「前に」というシンプルな表現を使うのも〇。カジュアルなシーンでは、「以前にもこんなことあったよね!」というよりも「前にもこんなことあったよね!」と言ったほうがナチュラルな感じがしませんか?
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
「以前」の対義語は?
最後に、「以前」の対義語「以後」と、「以後」の類語表現を紹介します。
対義語「以後」の意味
「以後」の意味を辞書で確認してみましょう。
い‐ご【以後/×已後】
1 これから先。今からのち。今後。副詞的にも用いる。「─は班別に行動する」「─気をつけます」
2 その時よりのち。その後。「三時─は在宅しています」⇔以前。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「以後」は、分かりやすく言うと「この後」や「この後すぐ」という意味合いで使われることが多いです。また、「以後このようなことがないように気を付けます」や「以後注意します」という言い回しは、「これからは同じことを繰り返さないようにする」という反省の気持ちを表すことができる表現です。
「以後」の類語表現「以降」の意味
「以降」の意味は、「ある時から後」。
「明日以降の予定は考えていません」などと言うときには、「明日」を含んでさらに明日よりも後のことを表します。
「以後」の類語表現「今後」の意味
「今後」は、漢字の通り「今から後」という意味。「今後は体調にも気を付けるつもりだ」、「今後ともよろしくお願いいたします」などという言い回しができます。
最後に
「以前」は、様々な場面で使う機会が多い言葉です。だからこそ、正しい意味を知っておくことが大切になります。また、類語表現もたくさんあるので、相手やシーンに応じて表現を使い分けるように心がけてみてはいかがでしょうか?
普段意識せずに使っている言葉も、折に触れて確認していく姿勢を忘れずにいたいですね!
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