当て馬とは?
当て馬は、「あてうま」と読みます。 相手の反応を探るため、表面に出される仮の者のことです。ビジネスや恋愛、政治など、さまざまな場面で使われます。
本来の意味は馬の種付けで、牝馬(メスの馬)を発情させるために使われる牡馬(オスの馬)を指す言葉です。
ここでは、当てという言葉の本来の意味や、一般的に使われている意味を解説します。
本来の意味
当て馬は本来、馬の繁殖で使われる言葉です。牝馬の発情を促したり発情の有無を確認したりするための牡馬を当て馬と呼びます。実際の種付けは、当て馬ではなく本命の雄馬が行います。
牝馬が交尾できる状態になるまでが、当て馬である牡馬の役割。牝馬が発情したら本来の雄馬と代わり、交尾を成功させます。
一般的に使われる意味
本来の意味の当て馬が本命の代わりであることから転じて、当て馬の意味は、相手の反応や様子を探るために仮の者を表面に出すこと、もしくはそのような人のことを指すのが一般的になりました。
相手の出方をみるためにダミーとして用意されるのが当て馬であり、対策や戦略を練るために用いられます。当て馬は、ビジネスだけでなく幅広いシーンで使われる言葉です。
当て馬の例文
当て馬の意味を、例文をみながら理解しましょう。
・選挙では当て馬の候補が立てられることも多い。
・本命の企画をより引き立たせるため、当て馬の企画案を提出した。
・組織の内部構成を把握されないよう、実権を握っていない人物を当て馬として経営トップに据えることもある。
・彼はスターティングメンバーとして登録されたが、当て馬ではないかと噂されている。
当て馬が使われるシーン
当て馬という言葉は、ビジネスや恋愛、政治、スポーツなど、さまざまなシーンで使われます。ビジネスでは、本命の存在や真意を隠す戦略のひとつとして人や物が当て馬にされることが少なくありません。
恋愛では、本命を振り向かせるため、他の人を利用することを当て馬と表現することがあります。
当て馬が使われるシーンについて、詳しくみていきましょう。
ビジネス
ビジネスシーンでは、自分の評価を高めたり、自社の商品・サービスをよくみせるために当て馬を利用することがあります。
たとえば、商品・サービスの宣伝のため、価格が高いもしくは性能の劣る他社の商品・サービスを紹介するのも当て馬といえるでしょう。
恋愛
恋愛では、本命となる人を振り返らせるために利用される人のことをおもに当て馬と呼びます。たとえば、当て馬として仮の恋人をつくり、本命の人がどのような反応をするか様子をみるといったケースがあげられます。
これは恋愛漫画やドラマなどのフィクションでよく使われ、主人公のことが好きな2番手の人物として、当て馬キャラがよく登場します。
その他のシーン
当て馬は、政治やスポーツなどでも使われる言葉です。政治では主に選挙のシーンで、当選確率の低い人を当て馬として立候補させることが挙げられます。当て馬候補と呼ばれ、票を分散させて相手候補の勢いを落とすなどの目的で行われます。ただし、本命候補を抑えて当て馬候補が当選してしまうという、予想外の結果が出ることもあるでしょう。
スポーツでは、野球の試合で登板予定のない投手を当て馬として先発メンバーに入れる場合があります。相手チームのメンバーが発表されたあと、本命の投手に変えるという手法です。駅伝などでも当て馬の選手が登録し、当日に補欠登録している本命の選手と入れ替えることがあります。
このように、スポーツでは、競技が始まる前から相手方の状況を探るなどの目的で当て馬を利用するケースがみられます。
当て馬の類義語・言い換え表現
当て馬には複数の類義語・言い換え表現があります。あわせて覚えておけば、理解が深まるとともに、異なるシーンごとにより適した表現を使えるでしょう。当て馬の主な類義語は、以下のとおりです。
・かませ犬
・カムフラージュ
・隠れ蓑
・めくらまし
・おとり
このうち、当て馬の代表的な類義語について詳しく解説します。
かませ犬
かませ犬とは、訓練のために若い犬がかみつく相手となる闘犬のことです。そこから意味が転じ、格闘技などで引き立て役として対戦させる弱い相手のことを指します。本命ではないという点で、当て馬と似た言葉です。
ただし、当て馬のような代役という意味はなく、相手を引き立て、強く見せるという意味合いが強いです。
(例文)
・プロレスの試合をみていると、かませ犬のような対戦相手が出てくることがある。
・スポーツでは、自信をつけさせるために格下の相手をかませ犬として対戦させることがよくある。
カムフラージュ
カムフラージュとは、人の目をごまかすという意味です。本命を隠すという意味では、当て馬と共通しています。ただし、カムフラージュは主に隠すことに意味があり、当て馬のように相手の出方を探るといった意味合いはその言葉自体にはありません。
(例文)
・彼は誰に対しても笑顔で対応し、密かに抱く野望をカムフラージュした。
・その建物は、森の中で草木によってカムフラージュされている。
隠れ蓑
隠れ蓑(かくれみの)とは、鬼や天狗の持ち物であり、着ると姿を隠すことができるという想像上の蓑のことです。ここから意味が転じ、本心や悪事などの実態を隠して人の目を欺くための手段を指します。
(例文)
・彼は友情を隠れ蓑にして、裏では陰口を叩いている。
・〇〇さんの表向きの商売は隠れ蓑で、本業は別の仕事をしているらしい。
当て馬は使うシーンで覚えよう
当て馬とは相手の反応を探るため、表面に出された仮の者を指します。もともとは、馬の種付けで使われていた言葉です。ビジネスシーンをはじめ、政治やフィクション作品など、さまざまな場面で使われます。
類義語にはかませ犬やカムフラージュなどがあり、一緒に覚えておくと表現の幅が広がります。
例文も参考にして、当て馬の正しい意味を覚えましょう。
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