「あしからず」の意味とは?
「あしからず」は、ビジネスや日常生活の中でよく目にする言葉。でも、いざ自分が使うとなると難しいと感じませんか? 中には、冷たい、高飛車、など、あまりいいイメージを持っていない方も。本記事では 「あしからず」を正しく普段使いできるよう、使い方のポイントをしっかりおさえましょう。
意味について
「あしからず」は、「悪く思わないように」「気を悪くしないでください」という意味。漢字では「悪しからず」と書きます。やむを得ない事情で、相手の意向に添えない時など、何かを断る文章の中で用いられる表現。「ご希望に添えませんが、気を悪くしないでくださいね」と相手を気遣う気持ちの表れです。
使い方次第では、相手に不快な印象を与えることもあるでしょう。明らかに相手のミスなのに、「あしからず = 気を悪くしないでください」と言われたら、モヤモヤした気持ちになりますよね。仕方のない事情があったとしても、背景をきちんと説明した上で、「あしからずご了承くださいませ」などというように断りを入れましょう。
また、「あしからず」に対する返事は「お気になさらないでください」などが挙げられます。受け取った方は「こちらは不快な思いをしていないよ」ということを伝えられたら、相手も安心できますね。
「あしからず」を使った例文で使い方をチェック
「あしからず」の意味や注意点がわかったところで、例文を見て使い方を確認しましょう。
1:天候や天災などの不可抗力により、やむを得ず到着が遅れてしまう可能性がございます。あしからずご了承ください。
やむを得ない事情で相手に迷惑をかける可能性があることを、事前に伝える時に使います。「了承」は、「事情をくんで納得すること」ということ。つまり、「気を悪くせずにご理解ご納得ください」という意味になります。
2:本状と行き違いでお振込いただいた際には、あしからずご容赦ください。
期日が過ぎた代金などの支払いを催促する場合に、必ず入れる文言です。相手が行き違いで振込をした後に、催促を受け取ると気分を害することもあります。この一文を入れることで、失礼にならないよう配慮するわけです。
3:別の予定が入っているため、出席できません。どうぞ、あしからず。
「あしからず」で締めくくる例ですが、上の2つの例文に比べると丁寧さに欠けます。一方的で冷たい印象を与えることがありますので、親しい間柄でのみ使う方がよいでしょう。
「あしからず」の類語や言い換え表現は?
ここでは「あしからず」の言い換え表現をいくつか見ていきます。使う相手や場面に合わせて、使い分けてみてくださいね。
1:恐れ入りますが
相手に失礼なことや、迷惑をかけたりすることに対して、本題に入る前に添える言葉。ここでは、相手に迷惑をかけることに対して、申し訳なく思う気持ちを表します。
例文:「恐れ入りますが、定員に達したため、募集を締め切らせていただきました」
2:お含みおきください
心に留めておく、了解しておく、という意味の「含み置く(ふくみおく)」に「お」を付けた、「了解しておいてください」という気持ちを表す丁寧な表現です。
例文:「審査の結果、ご希望に添いかねる場合もございますので、お含みおきください」
3:申し訳ありませんが
本題に入る前に添えて、まずは謝罪の意を表します。
例文:「申し訳ありませんが、何卒ご了承いただきますようお願いいたします」
4:せっかくですが
「せっかく(折角)」とは「無理をして。わざわざ」という意味があり、わざわざしてくれたのに申し訳ない、という気持ちを伝えます。また、相手の気遣いに対して敬意を表す文を添えると、さらに丁寧になりますよ。
例文:「せっかくですが、当日は出張のため参加が叶いません。今回はお気持ちだけ頂戴いたします」
失礼にならない使い方とは
上記で説明してきたように「あしからず」は、主に断る際の文章で使われ、申し訳ない気持ちを表す言葉です。しかしながら、「あしからず」を不快だと感じる人も少なくありません。ここでは、失礼にならない使い方を紹介します。
1: 目上の人へは使える?
結論からいうと、目上の人には積極的に使わない方がいいでしょう。「あしからず」は便利な言葉ですが、「気を悪くしないで」と一方的に相手の感情を抑え込むように思われるかもしれません。
なお、不特定多数に向けた文章では、常識的にわかってもらえる内容について「あしからず」が使われているので問題はありません。しかしながら、個人のコミュニケーションでは、断りの内容とともに使われるので、角が立たないように気をつけたいですね。
2:「あしからず」のNG例
NG例を参考に、失礼にならない使い方を見ていきましょう。
NG例文: 本件は対応できません、あしからず。
修正例文:大変恐れ入りますが、本件はこちらでは対応しておりません。あしからずご了承ください。
文末を「あしからず」で締めくくると、断定的でこれ以上やりとりを続けたくないような、冷たい印象を与えてしまうことがあります。文末に使う場合は、気心の知れた人とのやりとりに限定した方がいいでしょう。
NG例文:こちらの不手際でご迷惑をおかけしました。あしからずご了承ください。
修正例文:こちらの不手際でご迷惑をおかけし、大変申し訳ございませんでした。心よりお詫び申し上げます。
明らかにこちらが悪い時に「あしからず」は使えません。丁寧な謝罪をするようにしましょう。
最後に
「あしからず」は断りを入れる時に相手を気遣う言葉ですが、使い方を誤ると失礼に受け取られる可能性のある言葉でもあります。そうした事態にならないよう、使用上の注意点をしっかりおさえておきたいですね。
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