事後報告とは?
事後報告とは、「仕事がすべて終了してから、経過を含めて結果を伝えること」。仕事は多くの人が関わるため、それぞれの状況を確認し合う必要があります。その情報共有のひとつとして、「報告」という行動があります。
報告とは、「告げ知らせること。特に、ある任務を与えられた者が、その経過や結果などを述べること。また、その内容」のこと。結果を述べることという点でいけば、報告はすべて「事後」ということになります。
仕事を進めていく上で、報告は必須です。とはいえ「事後報告」ばかりだと、上司からの評価が下がってしまうこともあります。なぜ、事後報告だけだと評価が下がるのでしょうか。それは、報告のもう一つの側面、「経過を知らせる」ことを怠っているから。
上司は多くの部下を持ち、それぞれに仕事を任せながら、全体を統括しています。ビジネスの現場では、日々さまざまな変化がある中、当初任せた指示とは変更があることも。上司や周囲とうまく連携をとることは、成果を上げるために大切なこと。そのためにも、事後報告だけでなく、経過報告も意識して行なう必要があります。
事後報告する人の心理は?
チームで仕事をする中で、事後報告ばかりという人もいます。事後報告をする人の心理として、どのようなものがあるのでしょうか。
1:周囲に余計な心配をさせたくない
責任感が強く、上司や周囲に余計な心配をかけたくないと思うことがあります。先回りの気遣いから、人の手を煩わせたくないとの思いもあるかもしれません。また、頼りないと思われることへの懸念もあるようです。
2:出鼻をくじかれたくない
自分のペースや、裁量で物事を進めたいというタイプの人もいます。結果が出る前に報告をすることで、自分の思い通りに進めることができなくなるのが嫌だと思うケースも。
「報告」と「連絡」「相談」の違いは?
仕事を進めるための情報共有には、「報告」「連絡」「相談」があります。「相手に対して、自分は今、何をしようとしているのか」を明確にせずにコミュニケーションをとろうとすると、混乱が生じます。ここで一度、「報告」「連絡」「相談」について確認をしておきましょう。
1:報告
仕事の区切りや終了時に、依頼者に現在の状況や進捗を伝えること。
2:連絡
日々の行動や作業の内容を仕事に関わる人に伝えて、情報共有をすること。
3:相談
わからないことや困ったことに対して、助言や助力を求めること。
状況によっては、「報告」「連絡」「相談」を合わせて行うこともあります。その時には「以上が報告です。つきましては、先程のことをふまえてご相談があります」というように、区別をして伝えるように心がけましょう。
事後報告で良い場合は?
経過報告が必要な場合と、事後報告で大丈夫なこともあります。事後報告でOKかの判断をするポイントは、「緊急性」と「重要度」。仕事を進めていく上で、「緊急性がなく、重要度も低いこと」は事後報告でOK。具体的には、次の3つをクリアしているものです。
1:指示されたこととの相違がない場合
上司やクライアントなど、依頼者から指示をされたことと変わりない場合は事後報告でもOKです。
なお、実際に着手してみて、最初の指示や想定と現実がずれていることや、時間の経過とともに変化が出てくる場合もあります。当初と違うことが想定された時点で、経過報告が必要となります。
2:納期内に終了できる場合
仕事は必ず複数の人が関わっています。ひとりの遅れが全体に大きな影響を与えることになりかねません。仕事は、期限を守ることはマスト! 少しでも遅延が予測された場合には、進捗状況を報告し、リカバリーの指示を仰ぐ必要があります。
3:リスクが低い場合
リスクとは、「不確実性」と「その影響」のことです。危険が生じる可能性もありますが、予想を超える可能性があれば、それはリスクと言えます。自分が任されている裁量の範囲内で、確実性が高いく、自分が全責任を負えるのであれば、事後報告でOK。誰かに判断を仰がなければならない場合は、報告が必要となります。
仕事を円滑に進めるための、報告のポイントは?
事後報告も経過報告も、仕事を円滑に進めていく上で欠かせないことです。報告内容が適切であると、周囲からの評価も上がります。中途半端な報告で、二度手間にならないように、次の4点を意識しましょう。
1:事実に基づいたものであるか確認する
報告内容が「事実」であるかを確認することは、非常に重要なことです。「事実」とは、実際にあった事柄であり、現実に存在する事柄。「~だと思う」「~と感じた」などの情報は個人の主観や推察です。報告においてまず大事なことは、正確な事実情報を伝えること。報告内容が誤っていたり、個人の推察であった場合、誤解や混乱のもとになります。
まずは、誰が聞いても誤解を与えない「事実情報」を伝えることを心がけましょう。
2:事実をもとに、自分の見解を入れること
事実情報のみの伝達だと、仕事をその人に任せた意味がありません。その事実をもとに、「どのように感じたのか」「どのように推察をしたのか」「どのように進めていきたいのか」などの、自分の見解を入れましょう。事実情報と主観情報。どちらかに偏り過ぎていると、報告を受けた人はさまざまな判断がしづらくなります。バランスのとれた報告を意識しましょう。
3:相手が知りたいことを、まとめられているか確認する
例えば、「競合商品について調べてください」と言われたとき。相手はマーケットシェアや口コミの評判などを知りたいのに、機能や性能の情報を報告しても、見当違いとなります。報告をするということは、依頼相手の要望があるということ。その要望を叶える情報であるかを確認します。
4:簡潔でわかりやすい表現で伝える
報告時以外でも、仕事でのコミュニケーションは、「簡潔」「明瞭」「分かりやすさ」を意識します。ポイントは次の3点です。
・結論から伝える。
・一文を短く、主語を明確に。
・専門用語や流行言葉、略語などはなるべく避けるか、注釈を入れる。
最後に
事後報告で良いというシチュエーションは、限定されるようですね。小まめな経過報告をすることでコミュニケーションが増え、相手には安心感を与えることになり、信頼関係も築きやすくなるでしょう。
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キャリアコーチ 菊池啓子(きくち・ひろこ)さん
2003年から企業研修トレーナー・人材育成コンサルタントとして活動。国家資格キャリアコンサルタント。研修登壇回数は年間100回を超え、これまでに5つの大学でキャリアデザインを教える。現在「社外上司」として多くのビジネスパーソンの悩みに寄りそい成長をサポート。趣味は出張先での御朱印集め。家族は夫と猫2匹。
Twitter:@lotus_kikuhime
ライター所属:京都メディアライン