「させていただきたく存じます」の意味とは?
ビジネスシーンで「あれ、この敬語は合ってる?」と不安になることはあると思います。「なんとなく丁寧だから」と雰囲気で敬語を使う人も少なくありません。今回は「させていただきたく存じます」という言い回しにフォーカスして、解説します。
意味
「させていただきたく存じます」は「させてもらいたいと思う」「させて欲しいと思う」という意味の敬語表現です。相手に対して自分の願望を伝える時に用いられます。
「させていただきたく存じます」は「させていただきたく」(=「~させて欲しい」)と「存じます」(=「思う」)が組み合わさった言い回しです。謙譲表現を用いて自分がへりくだることで、相手を敬う気持ちを伝えることができます。
二重敬語?
敬語を使う時に注意しなければならないのは、敬語を重ねてしまう二重敬語。謙譲語と謙譲語を重ねたり、尊敬語と尊敬語を重ねたりした場合、くどい言い回しになってしまいます。
「させていただきたく存じます」の場合は、この二重敬語には該当しません。まず、上述したように「させていただきたく存じます」は「させていただきたく」と「存じます」の2つの敬語が組み合わさっています。「させていただきたく」は「させてもらう」という意味、「存じます」は「思います」という意味であり、それぞれの意味が異なっているため、二重敬語ではないのです。
ただ、他の言葉と組み合わせることで二重敬語になってしまうケースがあります。それは謙譲語と一緒に使った場合です。例えば「見る」の謙譲語である「拝見」と組み合わせて「拝見させていただきたく存じます」という言葉遣いをした場合、「拝見」と「させていただく」がどちらも謙譲語で、へりくだりの意図が重なってしまいます。
このように「させていただきたく存じます」の前には謙譲語を用いないよう、注意しましょう。ちなみに「拝見したく存じます」とすれば、二重敬語は回避できます。
ビジネスシーンでの注意点
「させていただきたく存じます」には自分がへりくだる意図があるため、目上の方や上司、クライアントや取引先の人に対して使います。自分の願望(「~させて欲しい」)を伝え、相手にそれを許可してもらう、という形を取っているため、そのような状況で用いましょう。
ただ「させていただきたく存じます」は、少々丁寧過ぎるように受け取られることも。上司などに簡単な許可を取る場面では、丁寧過ぎて嫌味に聞こえてしまう場合もあります。この特徴を理解した上で、状況に応じて判断をするようにしましょう。
使い⽅を例⽂でチェック
ビジネスシーンでの注意点を確認したところで、実際の用例とともに使い方をチェックしていきましょう。
◆「大変恐縮ではございますが、出席を辞退させていただきたく存じます」
これは、相手の誘いを断る時の言葉。「させていただきたく存じます」を使えば、丁重に断りを入れることができます。単に「遠慮します」だけだと角が立ってしまいますが、「させていただく」という謙譲表現を使えば丁寧な言い回しになります。
◆「今回は私○○ がご案内させていただきたく存じます」
自分がやることを伝える際にも「させていただきたく存じます」を使うことができます。「自分が~をします」を丁寧にした言い方です。他にも「ご対応させていただきたく存じます」など、自分が行うことを謙虚に伝えられます。
ただ、少し丁寧すぎるため、逆に嫌味な印象を与えてしまう可能性もあります。単に「~いたします」とシンプルな言い回しの方が合っている場面もあるので、使い分けを意識しましょう。
◆「お休みをさせていただきたく存じます」
相手に許可を求めつつ、自分の願望を伝える場面です。嚙み砕くと「休ませてほしいと思う」という意味になります。この文意の場合は、他にも「お休みをいただきたいのですが、よろしいでしょうか?」と伺いの表現を使って表すことも可能です。
⾔い換え表現は?
最後に「させていただきたく存じます」の言い換え表現をみていきましょう。
◆「~していただければ幸いです」
「~していただければ幸いです」は「~して欲しい」という自分の願望を婉曲的に伝える表現です。「幸いです」は、相手が何かをしてくれたら嬉しい、という気持ちを表しています。「ご確認いただければ幸いです」や「ご連絡いただければ幸いです」などというように使います。
「~していただければ幸いです」の注意点は、「させていただきたく存じます」よりも「お願い」のニュアンスが弱くなる、という点です。相手への強制力が弱くなるため、確実に動いてほしい場合には避けた方が無難でしょう。
◆「~のほどよろしくお願いします」
「~のほどよろしくお願いします」は、自分が相手にしてもらいたいことを依頼する表現になります。「~のほど」は「~を」と伝えるより、柔らかな印象を与えるためビジネスシーンではおすすめ。「ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」や「ご理解のほどよろしくお願いしまう」といった風に使います。
ただ「~のほどよろしくお願いします」は、「させていただきたく存じます」よりも依頼が一方的な印象を与えてしまいやすく、「~して欲しい」という「お願い」ではなく「~してくれ」と依頼の意味合いが強く出てしまうので、使う際には注意しましょう。
◆「~なさってください」
「~なさってください」は「~してください」を丁寧にした表現です。こちらも「させていただきたく存じます」と同様、相手にお願いをするときに使うことができます。
ちなみに「~なさってください」と混同して使われる表現として「~されてください」が挙げられます。「~されてください」の「される」は「する」の尊敬語です。同様に「なさる」も「する」の尊敬語に当たりますが、「する」と「~ください」が接続する場合は「される」ではなく「なさる」になります。「~されてください」は誤った表現なので注意しましょう。
最後に
今回は「させていただきたく存じます」という敬語表現を取り上げて、その使い方や言い換え表現などを紹介していきました。仕事を円滑に進めるためには、正しい言葉遣いの知識が必須です。一気に覚えるのは難しいかもしれませんが、こうして特定の言い回しを一つずつマスターし、活用していけると良いですね。
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