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この記事のサマリー
・「ご指導いただく」は、正しい敬語表現です。
・主語が自分なら「いただく」、相手なら「くださる」を使います。
・言い換え表現としては「ご教授いただく」や「ご教示いただく」などが挙げられます。
ビジネスシーンでよく見聞きする「ご指導いただく」は、便利な表現ですが「もしかして二重敬語!?」と迷ったりしませんか? 敬語はビジネスの基本だからこそ、正しい理解が欠かせません。
この記事では、辞書に基づいた正しい意味と敬語の仕組みを整理し、場面ごとの例文や言い換え表現までわかりやすく解説します。
「ご指導いただく」は二重敬語? 意味と構造を確認
「ご指導いただく」という表現について、意味と敬語の構造、注意点を整理しましょう。

「ご指導いただく」 の意味と敬語構造
「ご指導」は「教え導いくこと」を表す「指導」という名詞に、丁寧さを加える接頭語「ご」を添えた表現です。「いただく」は相手の行為から恩恵を受ける立場で使う謙譲語であり、自分の行動をへりくだって述べることで相手への敬意を表します。
したがって、「ご指導いただく」とは、「相手から教え導いてもらう」という意味になります。
以下に、辞書での定義を確認してみましょう。
し‐どう〔‐ダウ〕【指導】
[名](スル)
1 ある目的・方向に向かって教え導くこと。「演技の―にあたる」「―を受ける」「人を―する立場」「行政―」
2 柔道の試合で、選手の軽微な違反行為に対する宣告。4回受けると反則負けとなる。組み手をいやがる、場外に出る(押し出す)など、23の事項がある。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)いただ・く【頂く/▽戴く】
(補助動詞)
(ア)(動詞の連用形に接続助詞「て」を添えた形に付いて)話し手または動作の受け手にとって恩恵となる行為を他者から受ける意を表す。「これが先生にほめて―・いた作品です」「せっかく来て―・いたのですが、主人は今おりません」「一言声をかけて―・いたらよろしかったのに」
(イ)(接頭語「お」または「御(ご)」に動詞の連用形またはサ変動詞の語幹を添えた形に付いて)8㋐に同じ。「これから先生にお話し―・きます」「お読み―・きたい」「御心配―・きまして」「御審議―・きたい」
(ウ)(動詞の未然形に使役の助動詞「せる」「させる」の連用形、接続助詞「て」を添えた形に付いて)自己がある動作をするのを、他人に許してもらう意を表す。「させてもらう」の謙譲語。「あとで読ませて―・きます」「本日は休業させて―・きます」
一部引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「二重敬語」とは、同じ種類の敬語を重ねてしまうことを指します。例えば、「おっしゃられる」は尊敬語「おっしゃる」と「れる」を二重に使った例です。
先述した通り、「ご指導」の「ご」は尊敬や丁重を示す接頭語、「いただく」は謙譲語であり、異なる組合せです。したがって「ご指導いただく」は二重敬語にはあたらず、正しい敬語だといえます。
「ご指導いただく」と「ご指導くださる」の使い分け
自分が指導を受ける立場なら「ご指導いただく」と表現し、行為の主体が相手側である場合は「ご指導くださる」を使います。
例:
・「この度はご指導いただき、ありがとうございます」(自分が指導を受けた)
・「部長が新人にご指導くださった」(相手が指導を行った)
メールやビジネス文書では、主語が省略されやすいため、文全体の流れから見て「誰が行為の主体なのか」を意識することが大切です。
まず主語を明確にし、その上で「いただく」か「くださる」かを選ぶことで、敬語表現の誤用を防ぐことができますよ。
「いただく」「くださる」は、ひらがなを推奨
「いただく」「くださる」を補助動詞として使う場合は、ひらがな表記が推奨されています。「ご指導いただく」「ご指導くださる」といった具合です。
「ご指導いただく」の正しい使い方と例文
ここでは、「ご指導いただく」の使い方を、実際のビジネスシーンでよく使われる例文とともに紹介します。文例の意図や使う場面も合わせて確認し、自然に使いこなせるようにしましょう。

この度はご指導いただき、ありがとうございました。
指導を受けたことへの感謝を伝える表現です。上司や先輩など、仕事でお世話になった相手に対して使うのが一般的です。
例:「親身にご指導いただき、誠にありがとうございました」
「親身に」や「丁寧に」などを加えることで、相手の姿勢に対する敬意と感謝の気持ちをより具体的に表せます。
今後ともご指導いただけますと幸いです。
これまでの感謝に加えて、今後の支援や助言をお願いする場面で使います。ビジネスメールの結びの言葉としてもよく用いられます。
例:「まだまだ未熟ではありますが、今後ともご指導いただけますと幸いです」
「お手を煩わせてしまうこともあるかもしれませんが」などを前に添えると、より謙虚で丁寧な印象になります。
ご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。
「ご指導」と並んで使われる「ご鞭撻」は、「努力を促す励まし」の意味を持ちます。フォーマルな挨拶や就任あいさつなど、改まった場面で使われる定型表現です。
例:「今後ともご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます」
「ご指導いただく」の類語・言い換え表現
「ご指導いただく」と同じように、相手に教えを受けることを丁寧に表す言葉はいくつかあります。ここでは、ビジネスシーンでもよく使われる3つの代表的な言い換え表現を紹介します。それぞれの使いどころの違いも押さえておきましょう。

ご教授いただく
「教授する」は「学問や技芸などを教え授ける」という意味があります。専門的・体系的な知識やスキルを長期的、組織的に教えてもらう場合に使うのが適切です。
例文:「部長は、入社したての私にプログラミングの基礎から丁寧にご教授くださいました」
ご教示いただく
「教示」とは、「具体的な方法や手順などを教え示す」ことを意味します。「ご教授」が長期的・専門的なのに対し、「ご教示」はその場で具体的なやり方を教えてもらうようなシーンで使われます。
例文:「お手数ですが、発注の手順についてご教示いただけますでしょうか?」
ご指南いただく
「指南」は多くの場合、日本の伝統芸能や武術について用いられます。
例文:「剣術のご指南をいただき、誠にありがとうございます」
参考:『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館)
「ご指導いただく」の英語表現
最後に「ご指導いただく」の英語表現を紹介します。指導、案内、手引きを表す、“guidance”を使って、場面に応じて使い分けることができる便利なフレーズを覚えておきましょう。
依頼/継続のお願い
“I would appreciate your guidance.”
(ご指導いただけますと幸いです。)
感謝の明示
“Thank you for your continued guidance.”
(変わらぬご指導に感謝いたします。)
参考:『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)
「ご指導いただく」に関するFAQ
ここでは、「ご指導いただく」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「ご指導いただく」は二重敬語ですか?
A. いいえ、正しい敬語表現です。
Q2. 「課長が新人にご指導いただいた」は正しい表現ですか?
A. いいえ。「課長が新人にご指導くださった」が正しい例文です。
「いただく」は、自分がへりくだって相手の行為を受けるときに使う謙譲語です。そのため、行為の主体(主語)が相手側である場合には、「ご指導くださる」を使うのが正解です。
Q3. 「ご指導いただく」の類語はありますか?
A. 「ご教授いただく」や「ご教示いただく」などが挙げられます。
場面に応じて、使い分けましょう。
最後に
「ご指導いただく」は正しい敬語でした。しかし、私たちが普段使っている言葉には、知らず知らずのうちに二重敬語が含まれていることもあります。細かなニュアンスの違いが相手に誤解を与えてしまうこともあるので、使う際には気をつけたいですね。
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