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「ご指導いただく」の意味と敬語の使い方
私達は、普段から何気なく「ご指導いただく」という言葉を使っていますよね。しかし、実際のところ正しい使い方をできているのでしょうか? 少し不安だという方のために、まずは「ご指導いただく」の意味や使い方から確認していきましょう。
意味
「ご指導いただく」の元になっている「指導」は、決まっている目的や方向に向けて、助言を与え導くという意味があります。そして「いただく」というのは、自分のために相手に何かしてもらう時の謙譲表現。「見ていただく」「聞いていただく」など、動詞の連用形に「て」をつけて使いますよね。
その他にも、「ご指導いただく」「ご検討いただく」などの動作性の敬語名詞に繋げて使われる場合があります。
つまり、「ご指導いただく」は「教え導いてもらう」の敬語表現ということになりますね。
「ご指導いただく」は敬語として正しい?
「ご指導いただく」って二重敬語じゃないの? と思われる方もいるかもしれません。まずは二重敬語とは何かについて解説しましょう。
二重敬語の定義は、「1つの語に同じ種類の敬語を2回使うこと」。具体的な例として「おっしゃられる」を挙げてみましょう。「言う」の尊敬語である「おっしゃる」に「られる」という尊敬の助動詞をくっつけたこの言葉。これは1つの言葉に尊敬語を2回使っているため、二重敬語となります。二重敬語は一般的に、適切ではないとされています。
では、本題の「ご指導いただく」はどうなのでしょうか。「指導」に「ご」という接頭語をつけて「ご指導」という尊敬の意を表します。さらに、「もらう」を「いただく」という謙譲語にした言葉です。違う種類の敬語を用いているため二重敬語ではありません。
つまり、「ご指導いただく」は正しい敬語表現ということになります。
「ご指導くださる」との使い分けは?
「ご指導いただく」は、「自分が指導してもらう」という意味で、自らをへりくだらせた謙譲表現でした。それに対して「ご指導くださる」は尊敬語にあたります。「○○が指導してくれた」という意味を持ち、相手の立場を上げる尊敬表現として使うので、その点が「ご指導いただく」との違いと言えるでしょう。
「ご指導いただく」の使い方
続いて、「ご指導いただく」の使い方について紹介します。具体的な例文として紹介しますので、ぜひ実際の会話でも取り入れてみてください。
1:この度はご指導いただき、ありがとうございました。
指導してもらったことへの感謝を述べる時に使う、このフレーズ。仕事でお世話になった上司などに使うと良いでしょう。「親身にご指導いただき、ありがとうございました」と述べると、相手からの誠意や熱意を受け取ったことを表現できますね。
2:今後ともご指導いただけますと、幸いです。
今まで指導してもらったことへの感謝を述べた後に、「これからもよろしくお願いします」というニュアンスを込めて使うことが多いでしょう。「お手を煩わせてしまうこともあるかもしれませんが」や「まだまだ未熟ではありますが」などと一言前に添えても良いですね。
3:ご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。
「ご指導いただく」と一緒に使われることの多い「ご鞭撻」という言葉。努力をするよう励ますといった意味があります。自己紹介をする時や役員就任時の挨拶などで使うことが多いでしょう。
ビジネス等で使う時の注意点
敬語は使い方が難しいため、使い方や相手によっては失礼に当たることも。そこで、ビジネス等で使う時の注意点を紹介しましょう。
1:「ご指導いただきました」とは使わない
「ご指導いただく」は「ご指導いただきありがとうございます」など、その後に文を繋げて使うことが一般的です。「ご指導いただきます」や「ご指導いただきました」とは、あまり言いません。そう表現したい時は、「ご指導していただきました」とする方が丁寧な印象になるでしょう。
2:主語に気をつけよう
「ご指導いただく」は謙譲表現なので、自分をへりくだって言う場合に使います。そのため、敬う人を主語にする場合は「○○さんがご指導してくださった」とするのが一般的でしょう。主語によって、謙譲表現にするか尊敬表現にするかを変える必要があります。
3:「ご指摘」との違いに注意
「ご指導」と「ご指摘」は、度々似たニュアンスで使われることがあります。「指摘」の意味は、過失や欠点を取り上げて注意すること。教え導くという意味の「指導」とは、少し違った意味であることを理解しておく必要があります。
この2つを混同して使ってしまうと、相手を不快にさせてしまうケースも。使い分けに気をつけたいところですね。
類語や言い換え表現にはどのようなものがある?
さて、「ご指導いただく」の意味や使い方について理解を深めたところで、次は類語を紹介していきます。3つの言い換え表現があるのでこの機会にぜひ覚えてしまいましょう。
1:ご教授(ごきょうじゅ)
教授と聞くと大学の先生を思い浮かべるかもしれませんが、「教授する」という動詞の形でもよく使われています。「教授する」というのは、学問や技芸などを身につけさせるという意味。専門的な知識やスキルを、長期に継続して教えてもらう時に使うと良いでしょう。
「部長は、入社したての私にわかりやすくプログラミングのやり方を教授してくださった」というような例文が挙げられます。
2:ご教示(ごきょうじ)
方法や手順を分かりやすく教え示すことを、「教示する」と言います。「教授する」は、専門的な知識を長期的に教え込むというニュアンスなのに対し、「教示する」は、その場で簡単な内容について教えるというようなニュアンス。
「お手数ですが、発注の手順についてご教示いただけますでしょうか?」というように使うことができるでしょう。
3:ご指南(ごしなん)
上の2つに比べると使用頻度は低いかもしれません。「指南する」は、教え導くという意味で使います。ただし厳密には、柔道や剣道などの武術や芸能を教えてもらう時に使うことが一般的。ビジネスでは、「ご教授」や「ご教示」を用いる方が良いでしょう。
最後に
「ご指導いただく」の意味や使い方について理解できましたか? 「ご指導いただく」は正しい敬語表現でしたね。しかし、私達が普段使っている言葉には、知らず知らずのうちに二重敬語が含まれていることもあります。細かなニュアンスの違いが相手に不快な印象を与えてしまうこともよくあるので、使う際には気をつけましょう。
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