ビジネスや学術など、数多くの分野で耳にする「定量的」という言葉。「定量的評価」「定量的分析」といった表現で目にすることがあるかもしれません。
しかし、その正確な意味や使い方、さらには「定性的」という似た言葉との使い分けについては、不明瞭だという人もいるのではないでしょうか?
そこで、この記事では、「定量的」という言葉の基本的な意味・使い方・「定性的」との使い分けについても、わかりやすく解説します。
定量的の意味
「定量的」という言葉の意味ですが、「数値・数量で表現するさまや数量に関するさま」を意味します。例えば、化学で「成分の定量的な分析」といったように使用。この場合、ある成分がどれくらい含まれているかを、数値で調べるということです。
なお、「定量的」は英語では「quantitative」と表記。「quantitative goal(定量的目標)」「quantitative evaluation(定量的評価)」などと表現します。
また、副詞として「quantitatively」があり、「This phenomenon can be expressed quantitatively.(この現象は定量的に表現できる)」などと表現することも可能です。
定性的の意味
「定量的」の対義語として、「定性的」という言葉もあります。「定性的」は、「性質に関するさま、数値・数量で表せないさま」という意味です。ある成分が含まれているかを示す場合などに用いられます。「成分の定性検査」というと、ある成分が含まれるか否かを判断すること。
なお、「定性的」は英語では「qualitative」と表記します。「qualitative analysis(定性分析)」「qualitative economics(定性経済学)」などと表すことが可能。副詞では「qualitatively」となり、「see what is happening qualitatively(起きていることを定性的に見る)」などと表すこともできます。
「定量的」と「定性的」の違いと使い分け
次に「定量的」と「定性的」の使い分けについて、見ていきましょう。どのように情報を取得するかによって、使い分けられます。
「定量的」は、「5%」「21.07kg」「234人」といったように、数値・数量でデータを表現。そのため、統計表・アンケート調査・実験などで多く用いられます。客観性が高いです。
「定性的」は、「がんばっている」「面白かった」「楽しかった」といったように、数値で表すのが難しいことを表現。そのため、主観的要素が強いです。インタビューの回答・商品のレビュー・芸術作品の評価といったものは、数値での表現が難しいので「定性的」であると言えるでしょう。
「定量的」の類義語
「定量的」の類似表現には、以下のような表現があります。
1:「量的」
「量的」は「りょうてき」と読みます。量(計ることができる)に関することです。「量的に測定する」といったように使われます。
2:「客観的」
「客観的」の読みは「きゃっかんてき」。特定の立場によらず、物事を見たり判断したりするさまを意味します。「客観的に表現する」などと表現することができますね。
3:「数的」
「数的」は「すうてき」と読み、数量・数値にかかわるさまを意味します。「数的処理」「数的優位」といったように表現することができますね。
分析・目標・評価における「定量的」と「定性的」
次に、具体的に「定量的」と「定性的」を使い分け方について、見ていきます。
1:分析において
定量的分析では、数値に基づくデータを元にして分析を行ないます。売上の増加率・観光客数の増加数・サイトへのアクセス数などの定量的データから、状況を分析。数値に依拠しているので、売上がどれくらい増えたか、作業時間がどれくらい削減したかなどを明確に伝えることができ、説得力が増します。
ただし、数値だけ見ていては気がつかないこともあるので、注意が必要です。
定性的分析では、 意見や感想といった質的データに依拠して、分析を行ないます。商品に対する意見やブランドに対する印象といったものは、数値化が困難です。そのため、心理や行動形式を調べることで、定性的にデータにアプローチしていきます。
2:目標において
定量的目標は、具体的な数値の達成を目標とするものです。売上の10%増加、契約件数の月100件達成といったように、ある数値を設定し、これを達成することを目指します。目標がわかりやすく、目標達成のための逆算もしやすいでしょう。
定性的目標は、数値化できないものを目標として設定します。例えば、「チーム内のコミュニケーションの円滑化」「チーム内の雰囲気を明るいものにする」といったようなもの。目標達成できたかどうか、数値では表現できないので、主観によるところが大きいと言えます。また、目標達成に至るまでのプロセスも重要です。
3:評価において
定量的評価は、数値に基づいて評価がなされます。「売上が何万円上がったか」「契約件数は何件だったか」といったことです。数値による評価なので、判断基準も明確。はっきりとしています。また、過去の業績や競合相手などと比較しやすいですね。
ただし、判断基準が数値だけであるので、それ以外の要素(プロセスなど)が評価されないこともあります。また、あまりにも数値重視になりすぎると、極端な成果主義・ノルマ主義になりかねません。
定性的評価は、プロジェクトへの貢献度や行動様式など、数値が難しいことを評価します。メンバーの成果によっては、数値だけで判断してしまうと、評価があまりよくないことになるかもしれません。そんな時、そのメンバーの努力や貢献度など、数値化できないものも判断することによって、メンバーのモチベーションを高めることにつながります。
なお、評価者の主観によるところが大きいので、評価には偏りが生じるかもしれません。
最後に
定量的に物事を判断することで、合理的・科学的に行動することが可能になります。また、客観的であるので、多くの人に納得されやすいもの。
しかし、物事は全てを数値化できるとは限りません。感性によるところが大きい分野も存在します。そんな時は定性的に物事を判断することが必要です。うまく「定量的」と「定性的」を使い分けて、日頃の生活に役立ててみてください。
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