ものを配るときに、普段何気なく使う「はいふ」という言葉。「配布」と「配付」という同音異義語があるのをご存知ですか? 間違って使ってしまっても、日常生活ならあまり問題ないかもしれませんが、ビジネスシーンでは思わぬ大きな誤解を招いてしまう可能性もあるので注意したいですね。本記事では、そんな「配布」と「配付」の意味や違いについて解説していきます。
「配布」と「配付」
「配布」と「配付」は、どのように使い分けるのが正しいのでしょうか? まずは、それぞれの言葉の意味をチェックしましょう。
「配布」の意味は?
「配布」とは、一般に広く行きわたるように配ること。「配布」の「配」という字は訓読みで「配る」。漢字の意味も想像しやすいですが、「布」はどうでしょう?
「ぬの」と読むことから、衣服に関連する言葉に使われる印象が強いですが、「布」には「広く行き渡らせる」という意味があります。布教(ふきょう)、流布(るふ)、公布(こうふ)といった言葉を想像すると、分かりやすいかもしれませんね。
「配付」の意味は?
「配付」とは、特定の人々の手にわたるように配ること。「付」は「付ける」と読むように、ものがくっつくイメージがある言葉ですが、「ものを手渡す」という意味があります。付与(ふよ)、給付(きゅうふ)、還付(かんぷ)といった言葉からも想像できますね。
「配布」と「配付」の違いは?
つまり、「配布」と「配付」の違いは、配る対象が「広く一般」であるか「特定の人々」であるかです。対象を特定せず大勢に配るときは「配布」を、不特定多数ではなく特定の相手に配るときは「配付」を使いましょう!
「配布」の使い方を例文でチェック!
「配布」と「配付」の違いはわかりましたが、実際にはどのような場面で、どのようなものを配るときに使うのでしょうか? 具体的な例文で確認しておきましょう。まずは「配布」について。
1:駅前でティッシュを配布する
駅前でよく見かけるティッシュ配り。広告が入っていて、宣伝効果があります。人がたくさん集まる駅前で、不特定多数の人に対して広く配ることを目的としているため、「配布」を使うのが適切です。
2:イベントで化粧品の無料サンプルを配布する
イベント会場など、たくさんの人が集まる場所で無料のサンプルを配るときは「配布」が適切。無料で気軽に自社製品を試してもらい、商品の購入につなげることを目的にしています。できるだけ多くの人に試してもらいたいはずですよね。
3:全校生徒に向けてプリントを配布する
全ての生徒に対して、広く周知するために配るプリントは「配布」が適切です。これが、特定の生徒に対して、先生が手渡しするような重要なプリントは「配付」を使ったほうがいいでしょう。このように、「プリント」=「配布」など、ものによって漢字が決まるのではなく、その状況や相手によって使い分ける必要があるのが難しい点ですね。
「配付」の使い方を例文でチェック!
次は「配付」を使った具体的な例文を見ていきましょう。「配付」は、状況や相手がかなりしっかりと「特定」されているときに使います。「配布」か「配付」、どちらを使うのが正しいか迷うときは、「配付」に当てはまらないときは「配布」を使う、と考えてもいいかもしれませんね。
1:明日の会議資料を出席者に配付する
会議に参加する出席者のみに資料を配るときは、「配付」が適切。全社員に配るのではなく、特定の会議の出席者のみということで、対象が限定されています。このように、「配付」を使うものは、広く周知したいものではなく、限られた人の間でのみ共有したい内容を含んでいることもありますよ。
2:議案を印刷して各議員に配付する
国会で審議される案件のことを議案といいます。国の方針を決める国会という場で、国民から選ばれた議員が議論する内容を記載した議案は、とても大切なものですよね。「配付」は、不特定多数に配るような軽微なものではなく、議案のような重要なものに対しても使われます。
3:行列の先頭から、順番に整理券を配付する
飲食店やイベント会場などで、大勢の人を順番に案内するために整理券を配っているのをよく目にしますね。店員やスタッフなどが、一人一人手渡しをしている印象はありませんか? 整理券は、自分の順番を保証する大切な証拠です。ばらまいていいものではなく、きちんと順番通りに配られなくては意味がありません。よって「配付」が適切です。
使用する際の注意点
「配布」と「配付」の使い方を例文で確認しましたが、改めて使うときの注意点を確認しましょう。日常生活では、混同してもそれほど困らないかもしれませんが、ビジネスシーンでは思わぬ誤解を生んでしまうかも。一方で、ルールが当てはまらない例外もチェックしておきましょう。
ビジネスで注意したい点
「配付」の例文の解説でもお伝えした通り、「配付」を使うものは、会議資料のように「特定の人物の間でのみ共有したいこと」や、議案のように「重要なこと」を含んでいるものもあります。
そのため、間違って「配布」や「配布物」を使ってしまうと、それが「重要な内容を含まない軽微なもの」という印象を与えてしまう恐れがあります。重要な会議で扱う資料などは、誤解を招かないためにも「配付」を使いましょう。
公用文の場合は例外
これまで「配布」と「配付」の違いについて解説してきましたが、新聞やテレビなど、公用文や公文書は例外。一部例外はありますが、基本的に「配布」と「配付」を区別せず、「配布」で統一することが決まっているそうです。
類語や言い換え表現は?
「配布」と「配付」の他にも、「配賦(はいふ)」「頒布(はんぷ)」など、よく似た言葉があります。意味も似ていますが厳密には違うのです。「配賦」は負担金や会計など、金銭に関する場面で多く使われます。
「頒布」は「配布」とほとんど同じ意味ですが、「配布」がポケットティッシュやチラシなど無料であることが前提である一方、「頒布」は有料の場合も使用可能。同音異義語が多く混乱しますが、とっさに分からなくなってしまったときには「配る」と言い換えてしまいましょう。
英語表現は?
最後に、英語表現を確認します。英語では「配布」と「配付」の区別はなく、どちらも「distribute」という単語を用いることが可能です。他にも「hand out」「give out」なども、同じく「配る」という意味を持ちます。
最後に
混同しやすい同音異義語「配布」と「配付」について解説しました。改めて確認しなければ、違いを知らないままだった人もいるのではないでしょうか? ビジネスの場面などでは、特に気をつけて使っていきたいですね。
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