「あたたかい服装」や「あたたかい食事」などを文字で書くとき、「暖かい、温かいどっちだっけ?」と迷うことはありませんか? どちらかわからず、結局ひらがなで書く方も多いかもしれませんが、知識として使い分けるポイントを知っておきたいものですよね。
そこで本記事では、「暖かい」と「温かい」の意味の違いや、それぞれの使い方、英語表現などを解説します。“あたたかい”に関する、日常生活のふとした疑問を解決しておきましょう。
「暖かい」と「温かい」の意味
2つの言葉の違いを理解するために、それぞれの意味をチェックしておきましょう。
「暖かい」の意味
まず、「暖かい」の意味を辞書で確認してみましょう。
[形][文]あたたか・し[ク]《形容動詞「あたたか」の形容詞化》
1.寒すぎもせず、暑すぎもせず、程よい気温である。あったかい。「―・い部屋」「―・い地方」
2.金銭が十分にある。「今日は懐が―・い」⇔寒い。
3.色感がやわらかく、冷たい感じがしない。「―・い色調の壁紙」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「暖」という漢字は、「日光があたたかい」という意味をもつことから、ほどよい気候や気温に対して「暖かい」を使います。また、財布の中に金銭がたくさん入っているときに、「今日は懐(ふところ)があたたかい」と言ったりしますが、この場合も「暖かい」を使うのが正解です。
また、暖色という言葉があるように、やわらかく暖かみのある色合いにもこの漢字を使います。
「温かい」の意味
続いて、「温かい」の意味は以下の通りです。
1. 物が冷たくなく、また熱すぎもせず、程よい状態である。「―・い御飯」
2. 思いやりがある。いたわりの心がある。「―・くもてなす」⇔冷たい。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
一方、「温かい」は、「温かい食事」など、ほどよい温度に対して使われます。また、「温かい目」や「温かい言葉」など、思いやりの心や感情に対しても、「温かい」が使われるので覚えておきましょう。
どちらを使うか迷った時のポイント
意味を理解してもなお、「暖かい」と「温かい」、どちらを使ったらいいかわからない! と思うこともあるはず。判断するポイントとしては、気温のように体全体で感じるあたたかさには、「暖かい」を使う傾向があります。反対に、心で感じたり、部分的にあたたかさを感じるときには、「温かい」が使われることが一般的です。
もし、それでも迷った際には、「暖」と「温」の反対語を思い浮かべてみるといいでしょう。例えば、「暖」の反対語は、「寒」。「気温が寒い」というように、天気や気候に対して使われます。また、「温」の反対語は、「冷」。「冷たい水」「冷たい言葉」というように、物の温度や感情に対して使われますね。
「暖かい」の使い方
日常生活で「暖かい」が使われるシーンは、意外とたくさんあります。その時の状況を思い浮かべながらみていきましょう。
1:去年に比べて、今年の冬は暖かいな。
「今日は晴れていて暖かいね」というように、気候や気温について話すときは「暖かい」を使います。また、冬がなく温暖な気候の場所を「暖かい地域」と表現したり、ちょうどいい気温の部屋のことを「暖かい部屋」と言いますね。
2:今日は寒いので、暖かい服装でお出かけください。
天気予報などでよく耳にする「あたたかい服装」には、「暖かい」を使います。これは先述した、反対語をイメージするとわかりやすいでしょう。「暖かい」の反対は「寒い」。「寒い服装」とは言えますが、「冷たい服装」とは言えません。そのため、服装については「暖かい」が適切です。
3:外が寒くなってきたので、部屋を暖めておいたよ。
部屋や空間全体に対しては「暖かい」を使います。先ほど気温についても「暖かい」を使うとお話ししましたが、人工的に暖房などで部屋を暖めた時にも同じ漢字を使います。また、反対語では「部屋が寒い」というので、「部屋が暖かい」が正解です。
「温かい」の使い方
続いて、「温かい」の例文を紹介します。「温かい」は、人の気持ちや態度に対して使われる傾向があります。具体例を確認しておきましょう。
1:母は、夜ご飯に温かいスープを作ってくれた。
食べ物や飲み物には、「温かい」を使いましょう。熱すぎず、冷たくないちょうどいい温度のスープは飲みやすいですよね。迷ったときは、反対語を思い出してください。「冷たいスープ」はあっても、「寒いスープ」はないですよね。
2:家族の温かい笑顔を見たら、また明日も仕事を頑張ろうと思った。
人の表情や言葉遣いにも「温かい」を使います。家族からのエールや笑顔には元気がもらえるものですよね。ちなみに「温かなまなざし」や「温かい言葉をかける」にも、この漢字を使うので覚えておいてくださいね。
3:ホストファミリーは、私のことを温かく迎えてくれた。
温かい対応や好意的な態度には、「温かい」を使います。笑顔で出迎えてくれたり、ハグをしてくれたりすると、相手からの愛情を受けて、心がほっこりしますよね。コミュニケーション1つで気持ちが前向きになれることもあるため、日頃から大切にしたいものです。
英語表現をチェック
「暖かい」や「温かい」と似たような意味合いを持つ単語は、「warm」や「hot」です。日本語とはまた違った使い分けをされているため、英語の意味もよく理解してみてくださいね。
「warm」の意味
「warm」には、さまざまな意味があるので、どのような場面で使われる言葉なのか1つずつチェックしてみてください。
1.温度や気温があたたかい
「warm」は、「暖かい」と同じように、暑くもなく寒くもないちょうどいい温度を表します。英語で言うと、「cold」と「hot」の間の温度のことです。
(例文)
・My sister lives in a warm climate country because she doesn’t like the cold.(姉は寒さが苦手なので、温暖な気候の国に住んでいる)
2.衣類があたたかい
あたたかい服装にも「warm」を使います。「a warm overcoat(あたたかいオーバー)」「warm bedclothes(あたたかい布団)」。
(例文)
・Grandmother prepared warm clothing for her grandson.(祖母は孫のために、あたたかい衣類を用意した)
3. 色彩があたたかい
暖色やあたたかみを感じさせるものにも、この単語を使います。オレンジ色や赤みのある色はあたたかみがあるので、寒くなると手に取りたくなる色合いですね。また、ふわふわした手触りのニットや毛布などもあたたかみを感じさせます。
(例文)
・She was wearing a warm scarf.(彼女はあたたかいマフラーを巻いていた)
4. あたたかい言葉や行為
心のこもった対応や笑顔、言葉遣いにも「warm」が適切です。人の優しさが伝わってくる様子には広範囲で使うことができそうです。「a warm person(心の温かい人)」「a warm greeting(心のこもった挨拶)」。
(例文)
・They welcomed me warmly, even though I was shy.(人見知りの私を温かく歓迎してくれた)
・My grandmother gave me a warm smile.(祖母は私に温かい笑顔をくれた)
「hot」の意味
「hot」は、気温が暑いことや、料理の温度が熱いこと、激しい感情などに対して使われます。日本語の「あたたかい」がもつ「ちょうど良い」、というニュアンスはあまりないため、使うシーンをよく理解しておきましょう。
(例文)
・It is hot and humid today.(今日は蒸し暑い)
・The sauce was hot.(そのソースは辛かった)
・He is hot on tennis.(彼はテニスに熱中している)
最後に
「暖かい」と「温かい」、違いはお分かりいただけましたか? 日本語では、気温や空間などの状況の変化によって、うまく使い分けがされているようですね。もし迷った際には紹介したポイントを参考にしてみてください。
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