目次Contents
この記事のサマリー
・「琴線に触れる」の読み方は「きんせんにふれる」。「心が深く動かされること」を意味します。
・「怒らせる」の意味で使うのはNG!「逆鱗に触れる」と混同しないよう注意。
・類語は「感銘を受ける」「胸を打つ」、対義語は「無感動」。
「琴線に触れる」という言葉を、正しく使えていますか? 美しい日本語として知られるこの表現ですが、実は「怒りを買う」といった誤用も多く見られます。この記事では、「琴線に触れる」の正確な読み方と意味を確認し、使い方や英語表現までを解説します。日常やビジネスで安心して使える知識を身につけましょう。
「琴線に触れる」の正しい意味と、誤用例をチェック
「琴線に触れる」は感動を表現する言葉ですが、誤読や誤用も多い言葉なので、注意しましょう。最初に、正しい読み方と意味を確認し、間違った使い方も見ていきます。
「琴線に触れる」読み方と意味
「琴線に触れる」の読み方は「きんせんにふれる」です。辞書には、以下のように記されています。
琴線(きんせん)に触(ふ)・れる
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《琴線は、物事に感動しやすい心を琴の糸にたとえたもの》良いものや、素晴らしいものに触れて感銘を受けること。「心の―・れる」
「琴線に触れる」の「琴線」とは、心を琴の糸にたとえたもの。素晴らしいものに触れ、深く共鳴するような体験を表すときに使います。

「琴線」という比喩の感性|音と心のつながり
「琴線」は本来、琴やバイオリンなどの弦楽器に張った糸を指す語です。それが転じて、揺れやすく繊細な感情の比喩として使うようになりました。
美しい音色が心を揺さぶるような感動の瞬間を、「琴線に触れる」と表現し、日本語ならではの詩的な比喩として使用します。
「琴線に触れる」の誤用|「逆鱗に触れる」との違い
文化庁の『国語に関する世論調査』(2015年)によれば、「琴線に触れる」を「怒らせる」と、3割近くの人が誤った意味で認識しているという結果が出ました。誤解する背景には、「逆鱗に触れる」との混同があるようです。
「逆鱗に触れる」について、辞書で意味を確認しておきましょう。
逆鱗(げきりん)に触(ふ)・れる
天子の怒りに触れる。また、目上の人を激しくおこらせる。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
特に若年層での誤解が多い傾向にあります。「琴線」は感動、「逆鱗」は怒りを指すため、正しい使い分けが求められます。
誤用されやすい場面を確認|「琴線に触れる」のNG使用例
「琴線に触れる」を「怒りを買う」「不快にさせる」といった意味で使うのは誤りです。具体的な例を確認しましょう。
・彼の失言が上司の琴線に触れた → ×(正しくは「逆鱗に触れた」)
・お客様の琴線に触れないように注意する → ×(意味が逆転、正しくは「逆鱗に触れないように注意する」)
このような誤解は、「逆鱗に触れる」と語感が似ていることから生じやすいですが、意味は真逆です。誤用は誤解やトラブルのもとになるため、特にビジネスシーンや公的な場では細心の注意を払いましょう。
「琴線に触れる」感情表現としての使い方を例文で紹介
「琴線に触れる」は、感情が強く動かされたときに用います。芸術作品、誰かの言葉、自然の景色など、深く共鳴する体験の中で使う表現の例を見ていきましょう。
「初めて彼の歌を聴いたとき、何か琴線に触れるものがあった」
初めて耳にした歌声に、強く感情を揺さぶられた場面を描いています。「琴線に触れる」はこのように、予期せぬ感動や深い共感を伴う体験に使います。
「恩師の言葉が琴線に触れ、涙が止まらなかった」
大切な人からの言葉に感動し、心が大きく動かされた例です。相手の言葉に真心を感じたときや、人生の節目で響いた言葉にも「琴線に触れる」は使えます。
「大自然の風景が、私の琴線に触れた」
自然がもたらす感動もまた「琴線に触れる」対象になります。風景に深い感銘を受けるような場面にも、ふさわしい表現です。

「琴線に触れる」の類語・対義語を知る|表現の幅を広げよう
「琴線に触れる」に似た意味を持つ表現を知っておくと、場面に応じた言葉選びがしやすくなります。ここでは、類語や言い換え表現、反対の意味を持つ言葉を紹介します。語彙力の強化に役立ててください。
【類語】「感銘を受ける」
「感銘を受ける」は、「忘れられないほど心に深く感じること」を意味する表現です。強い感動を受けた際に使います。ビジネスシーンでも自然に使えますね。
【類語】「胸を打つ」
「胸を打つ」は、「強く感動させる」という意味を持ちます。人の行動や言葉などに強く心を動かされたときに用いますよ。日常会話から文章表現まで幅広く活用できます。
【対義語】「無感動」
「無感動」は、心が動かない、あるいは感情の動きが乏しいさまを表します。「琴線に触れる」の対義語として、冷静・無関心な態度を表す際に使います。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
「琴線に触れる」英語表現で「琴線に触れる」をどう訳す?
感動の表現を英語で的確に伝えたいとき、どのような言い回しを選ぶべきか迷ってしまいますよね。この項目では、ネイティブにも通じる自然なフレーズや文例を紹介します。
“strike [touch] a chord”
“strike a chord”または、“touch a chord”は、「(心の)琴線に触れる、共感を呼ぶ」という意味を持ちます。感動や共感の場面でよく使う表現です。
【例文】
“Her story really struck a chord with the audience.”
(彼女の話は聴衆の心に強く響いた。)
“be moved to tears”
“be moved to tears”は、「感動して涙を流す」ことを表します。深く心を揺さぶられた経験を伝えることができます。
【例文】
“His performance moved everyone to tears.”
(彼の演技は皆の心を打ち、涙を誘った。)
参考:『プログレッシブ英和中辞典』(小学館)

「琴線に触れる」に関するFAQ
ここでは、「琴線に触れる」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「琴線に触れる」と「逆鱗に触れる」の違いは?
A. 「琴線に触れる」は「感動」を表す言葉で、「逆鱗に触れる」は「怒りを買う」ことを指します。
語感が似ているため混同されがちですが、意味は真逆なので注意しましょう。
Q2. 読み方が不安です。「ことせんにふれる」ではありませんか?
A. 正しい読み方は「きんせんにふれる」です。
最後に
「琴線に触れる」という言葉には、美しく感じたときの表現として使うことができます。正しく使うことで、自分の表現力を磨くことができるでしょう。言葉の背景を知ることで、決まり文句ではなく、自分の気持ちを伝える言葉として活用できるようになりますよ。感動を分かち合う表現として、ぜひ使ってみてください。
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