「秋波を送る」とはどういう意味? 読み方は?
「秋波を送る」は、おもに次の2つの意味で使われる言葉です。
1. 色目を使う
2. 自分の利益のために関心を引こうとする
「あきなみをおくる」と読んでしまいそうになりますが、「しゅうはをおくる」が正解です。それぞれの意味を見ていきましょう。
【意味1】色目を使う
「秋波を送る」は色目を使うことを意味する言葉です。おもに異性の関心を引こうとするときに使います。
・向かい側に座っている男性に秋波を送った
・彼女が彼に気があるのは間違いない。先ほどから秋波を送っているのが傍目にも明らかだ
・彼女はわたしに秋波を送っていたようだが、当時のわたしは鈍感で、まったく気が付かなかった
「色目を使う」という表現は少しストレートな表現のため、時と場合によっては不適切になる可能性も。どちらかといえば詩的な表現の「秋波を送る」のほうが、幅広いシチュエーションで使えることもあるでしょう。
【意味2】自分の利益のために関心を引こうとする
「秋波を送る」は、自分の利益のために相手の関心を引こうとするという意味でも使われます。「色目を使う」も自分の利益(相手と恋仲になる。相手に恋愛感情を抱かせて自分の思い通りに物事を運ぶなど)のために相手の関心を引くことですが、恋愛を超えてより広義に使われることがあります。
・少しでも自分に有利に話を進めようと、彼は何度も秋波を送った
・彼はわたしと話したいのか、先ほどから繰り返し秋波を送っている
・あまりあからさまに秋波を送ると、かえって印象が悪くなるよ
秋波を送・る
出典:小学館 デジタル大辞泉
1 異性の関心をひこうとして色目を使う。「向かい側の男性に―・る」
2 自分の利益のために相手の関心をひこうとする。「大国に―・る」

「秋波を送る」はビジネスや政治でも使われることがあります。例文を通して使い方を見ていきましょう。
ビジネスで「秋波を送る」
ビジネスシーンではさまざまな「秋波」が送られることがあります。自分側に有利な取引を進めようとするときや、昇進や採用を目指すときなどには「秋波を送る」の言葉も飛び交うかもしれません。
・彼は部長にあからさまな秋波を送っている。空席となっているチーム長の座を狙っているのだろう
・「ぜひ一緒に仕事をしたいですね」と何年も秋波を送っているが、一向に進展がない
・彼女の取引先への気遣いは尋常ではない。気を遣いすぎて秋波を送っていると勘違いされそうだ
「秋波を送る」自体はネガティブな意味はありませんが、相手に対して媚びを売るといったニュアンスもあるため、使う場面を選ぶようにしましょう。「秋波を送っている」と指摘された側が、不快に感じる可能性があります。
政治で「秋波を送る」
政治の世界において、さまざまな「秋波」が送られることも。個人や政党にとって有利に話を進めようとするときや利権が絡むときは、「秋波を送る」の表現がしっくりとくるような出来事が起こるかもしれません。
・外務大臣があからさまに秋波を送っているのは、何か裏があるのではないだろうか
・彼女のクリーンなイメージを利用しようと、何度も秋波を送り、立候補を促している
「秋波を送る」は自分の利益のための行為といえます。公共のための行為とは言い難いため、もしかしたらネガティブなニュアンスで受け取られるかもしれません。誤解を生みたくないときは、使わないほうが賢明でしょう。
「秋波を送る」の語源
「秋波」とは、秋の澄んだ水面に立つ波のことです。澄んだ美しさが、美人の涼しげな目元にたとえられました。

字義通りにいえば「秋波を送る」は流し目を送ることを指しますが、そこから転じて、媚びを含んだ目つきで見ることや利益のために関心を引こうとすることを指すようになったとか。もともとは「水面に立つ波」や「美人の目元」といった爽やかな意味の言葉でしたが、いつの間にか「色目」や「自分の利益」といった、あまり爽やかではない意味で使われるようになってたようです。
なお、秋と男女といえば、人の心が変わりやすいことを意味する「男心と秋の空」や「女心と秋の空」という言葉を思い出すかもしれません。秋の天候は移ろいやすいことから、すぐに変わるものや信頼できないものといった意味で使われることがあります。
また、秋の空がころころと様子を変える様子から、「秋の空は七度半変わる」という表現も。意味は「女心と秋の空」と同じで、人の心の移ろいやすさを表した言葉です。
「秋波を送る」の言い換えに使える表現
「秋波を送る」のように、相手に意味ありげな目線を送ったり態度を取ったりする意味を指す言葉としては、次のものが挙げられます。
・色目を使う
・片目をつぶる
・目くばせをする
それぞれの意味やニュアンスを例文を通して紹介します。
色目を使う
「色目を使う」とは、異性の気を引くような目つき・そぶりをすることや、何か下心を持って媚びるような態度を取ることです。
・彼女は誰彼かまわず色目を使っている
・色目を使っているのかと思いきや、わたしの勘違いだった
・役人に色目を使い、通行手形なしに国境を越えた
「秋波を送る」と言い換えられますが、「色目を使う」のほうがより媚びているようなニュアンスを与えるかもしれません。

片目をつぶる
「片目をつぶる」とは人に合図をするときに片目を閉じるしぐさです。
・彼は思わせぶりに片目をつぶった
・先ほどから何度も片目をつぶっているが、何の合図だろうか
・「わかっているよ」と知らせるつもりで、大きく片目をつぶる
目くばせをする
目くばせをするとは目を動かして意思や合図を伝えることです。「目配せ」とも表記します。
・プレゼンを終える前に、彼は部長に目配せをした
・目くばせをして、異論がないと示した
・目くばせをしているのか、目がかゆいのかわからない
適切な場面で「秋波を送る」を使おう
「秋波を送る」は秋の澄んだ水面に立つ波から生まれた言葉で、風雅な表現です。また、美人の目元を連想させるため、詩的な表現ともいえます。
しかし、「色目」や「媚び」といった意味で使われることもあるため、使うシチュエーションを選ぶようにしましょう。
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