皆さんは「嗤う(わらう)」という漢字を見て、どのようなイメージが思い浮かびますか? 「笑う」とは違い、どこか不気味な印象を持っている方も多いのではないでしょうか。言葉の意味を理解せずに使ってしまうと思わぬ誤解を招いてしまう可能性も。そこで今回は、「嗤う」の意味や使い方、類語、英語表現などを解説します。
「嗤う」の意味とは?
「嗤う(わらう)」とは、「人を見下してあざけり笑う」という意味。相手を馬鹿にして「フンっ」と鼻で嗤ったり、相手の失敗を見てニヤニヤ嗤いながら面白がっているというニュアンスがありあります。基本的に他人のことを馬鹿にしているというネガティブな意味合いを持つ言葉です。
「嗤」という漢字には、「蔑みわらう」「愚か」「ものを破く音」などの意味が含まれています。主な熟語には、あざけり笑うことを指す「嗤笑(ししょう)」、あざけり馬鹿にすることを指す「嗤侮(しぶ)」など、耳慣れない熟語が多いといえるしれませんね。いずれも、あまりいい意味ではありません。
使い方を例文でチェック!
「嗤う」はどちらかというと小説やドラマの中で使われることが多い表現です。一体どのようなシーンで使うのが正しいのでしょうか。例文をみていきましょう。
・彼女は友達のことを心配しているように見えるが、心の中では嗤っているに違いない。
・彼は優秀だが、人のことをすぐに嗤う癖がある。
・兄はいつも友達を見下して嗤っていたので、誰も寄り付かなくなった。
「嗤う」は、基本的に誰かを馬鹿にしているときに使われます。大きく声を出して「ワッハッハ」と笑うのではなく、ニヤニヤとほくそ笑んでいるようなイメージです。口先では心配しているように見せかけて、心の中で馬鹿にして楽しんでいるような卑しさが感じられます。
「笑う」や「哂う」との違いとは?
日本語には、「笑う」や「嗤う」「哂う」など様々な種類の「わらい」があります。それぞれどのような感情を表す言葉なのでしょうか? 一緒にみていきましょう。
1:「笑う」の意味
「笑う」は、喜びや嬉しさを感じてにっこりと笑うときに使います。友達の冗談を聞いて「あはは」と声を上げて笑うときや、写真を撮るときに笑顔になることなど幅広いシーンで使われることが多いです。基本的にはポジティブな意味がありますが、人をからかって笑うなどネガティブな意味として使うこともあります。
2:「哂う」の意味
あまり普段見ることがない、「哂う」という漢字も「わらう」と読みます。「哂う」は、「ほほえむ」「あざ笑う」という意味。「嗤う」ほど馬鹿にしているニュアンスは強くありませんが、失笑したり、少しニヤッとするような笑いを指します。
3:「呵う」の意味
「呵」という漢字は、「呵々大笑」という四字熟語に使われるように、「大声で笑う」という意味があります。「アッハッハ」と大声で笑い飛ばすというようなニュアンスです。
類語や言い換え表現とは?
人を馬鹿にした笑いを表す言葉は、「嗤う」以外にもいくつかあります。それぞれの意味や違いに着目してみていきましょう。
1:嘲笑
「嘲笑(ちょうしょう)」とは、「あざけり笑うこと」。軽蔑の気持ちを込めて笑うことです。人のことをからかって面白がったり、揚げ足をとるようなことも当てはまります。「せせら笑い」と言い換えることもできますね。
・「そんなマイナーな趣味を持っているなんて変人だ」といって嘲笑された。
・マナー違反ばかり繰り返していたら、世の嘲笑を買った。
2:冷笑
「冷笑(れいしょう)」とは、文字通り「冷ややかに笑うこと」。相手のことを冷やかして笑ったり、見下したりすることをいいます。
・他人の失敗を見て、唇に冷笑を浮かべた。
・彼女はいつも冷笑を浮かべている。
3:子馬鹿にする
「いかにも人を馬鹿にした態度をとって軽蔑すること」を「子馬鹿にする」と言います。「ふふん」と鼻で笑ったり、相手を侮辱するようなことを言ったりすると「人を小馬鹿にするな」と怒られることもあるでしょう。
・人を小馬鹿にするのもいい加減にしろと父親に怒鳴られた。
・あの子はいつも人を小馬鹿にして、尊敬の念がない。
4:笑い物
「人から嘲笑される対象や笑いぐさ」のことを「笑い物」といいます。大抵は「○○の笑い物にされる」というように誰かから馬鹿にされるときに使うことが多いです。
・事業に失敗し、世間の笑い物になった。
・人の笑い物にならないようにしなさい。
5:ほくそ笑む
「ほくそ笑む」とは、「うまくいって満足し、一人ひそかに笑うこと」。例えば、誰かを罠にはめてしめしめと笑ったり、計画通りことが進んで満足した時などに使用します。誰かのためではなく、あくまでも自分のために行っていることがポイントです。
・ライバルをうまく蹴落として、してやったりとほくそ笑んだ。
・これで手柄は自分のものだとほくそ笑んだ。
英語表現とは?
「嗤う」と近いニュアンスを持つ英語表現には、「sneer(冷笑する)」「make a fool of(馬鹿にする)」などがあります。「sneer」は、あざ笑う、せせら笑うなど人を馬鹿にする笑いに対して使われます。
・They sneered at his pretensions.(彼らは見栄っ張りぶりをあざ笑った)
・They sneered her down.(彼らは彼女をこき下ろした)
また、「fool」には、「馬鹿者、愚か者」という意味があることから、「make a fool of(馬鹿にする)」も使えます。
・She made a fool of me about scratching my car.(車を擦ったことを彼女に嗤われた)
・Everyone made a fool of making a mistake in the match.(試合でミスしたことをみんなに馬鹿にされた)
最後に
「嗤う」とは、「人を見下して、あざけり笑う」こと。他人を嘲笑の対象にして、貶めるときに使われます。嬉しいときや楽しい時などポジティブな感情から「わらう」ときには使用しません。小説などで不気味なイメージを伝える効果がありますが、日常生活で他人に使うのは控えた方がいいでしょう。この機会に「笑う」や「哂う」「冷笑」など、笑いの種類や違いについて理解を深めてみてはいかがでしょうか?
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