「目出度い」とは?
「目出度い(めでたい)」とは、喜ばしいこと、祝うべきことなどで使われる言葉です。ただし、使い方によってはネガティブな意味になることも。
ここでは、「目出度い」の意味や語源などを解説します。
2つの意味
「目出度い」は、文脈によって2つの異なる意味で使われる言葉です。一般的には、結婚や出産・昇進など、喜ばしい出来事や祝うべき事柄を表すポジティブな意味で使われます。お祝いの場や、あらたまった文章でも用いられる言葉です。
一方「目出度い」は、「お人よし」「物事を深く考えずに単純すぎる」といった皮肉を込めたネガティブな意味で使われることも。文脈によっては批判や軽蔑を含む表現になるため、言葉のニュアンスをよく考え、適切に使うことが大切です。

言葉の語源
「目出度い」という言葉は当て字で「芽出度い」と表記されることもあります。もともと「目が出る=芽が出る」という表現から生まれたとされ、芽が地面から顔を出し、順調に育っていく様子を、良いことの始まりや幸運の兆しにたとえているようです。
そのため「芽出度い」には、新しい節目を迎えたことや努力が実を結び始めたことを喜ぶ気持ちが込められているといえるでしょう。人生の新しい一歩を踏み出すことや、新年を迎えて希望を持つことを表す言葉として、次第にお祝いの意味で使われるようになりました。
また、人や動植物などをかわいがるという意味の「愛でる(めでる)」にも由来するとされています。そのため「愛でたい」と表記されることもあり、美しいものやすばらしい出来事を心から喜ぶ気持ちを表すニュアンスが含まれています。
こうした語源の背景から「目出度い」という言葉には、単なる祝いや幸運を示すだけでなく、成長や生命の尊さ、喜びを伝える日本語ならではの深みが感じられるといえるでしょう。
めでた・い
出典:小学館 デジタル大辞泉
[形][文]めでた・し[ク]《動詞「め(愛)ず」の連用形「めで」に形容詞「いたし」の付いた「めでいたし」の音変化》
1 喜び祝うに値するさま。喜ばしい。「―・く成功する」「―・い席」
2 評価・評判などがよい。「社長の覚えが―・い」
3 (多く「おめでたい」の形で)お人よしである。人がよすぎてだまされやすい。「これで承知するなんて―・い人だね」
4 賞美する価値があるさま。みごとである。
「散ればこそいとど桜は―・けれうき世になにか久しかるべき」〈伊勢・八二〉
[補説]「目出度い」「芽出度い」などと当てて書く。
[派生]めでたがる[動ラ五]めでたげ[形動]めでたさ[名]
「おめでたい」との違い
「おめでたい」は、「目出度い」に接頭語の「お」をつけた表現です。意味はほぼ同じですが、ニュアンスや使用される場面にやや違いがあります。「目出度い」は古風で文語的な響きがあり、正式な文章や儀礼的な挨拶、祝辞などで用いられることが多いでしょう。
一方で「おめでたい」は、日常会話や手紙、メールなどでも自然に使えるやわらかく親しみやすい表現として使われる傾向に。また「おめでとうございます」という、お祝いの気持ちを伝える際の表現として定着しています。
また「おめでたい」は「お人よし」といった皮肉を込めた表現にも使われやすいでしょう。
「目出度い」の使い方・例文
「目出度い」は、お祝い事などの喜ばしい場面で使われる一方で、皮肉を込めて使われることも。ここでは、ポジティブな使い方とネガティブな使い方、それぞれの例文を紹介します。

ポジティブな意味で使う場合
「目出度い」は、結婚・出産・昇進・合格などの喜ばしい出来事を祝う際に用いられます。また、フォーマルな挨拶文などにもよく登場する言葉です。
〈例文〉
・新しい命の誕生とは、まさに目出度い出来事だ
・彼の努力が実を結び、志望校に合格したのは目出度い知らせだった
・社員全員の協力で業績が回復し、会社にとって目出度い一年となった
・友人の結婚報告を受け、心から目出度い気持ちになった
・新社屋完成のお知らせ、まことに目出度いことでございます
・ご結婚、本当に目出度く、心よりお祝い申し上げます
・お子様のご誕生、目出度く慶ばしい限りです
ネガティブな意味で使う場合
「目出度い」は「物事を深く考えずに喜んでいる」「能天気すぎる」といった皮肉を込めて使う場合もあります。
〈例文〉
・あの人は人の冗談を本気にするなんて、まったく目出度い人だ
・相手の言葉をそのまま信じるとは、目出度いにもほどがある
・そんな簡単な説明を信じて行動するなんて、ずいぶん目出度い人だ
・問題の深刻さを理解せずに楽観的に構えているとは、目出度い話だ
・他人の失敗を笑ってばかりいる彼の考え方は、少し目出度いとしかいいようがない
・彼はまだ自分の立場に気づいていないようで、まったく目出度いものだ
・何も準備せずにうまくいくと思っているなんて、なんと目出度い考えだろう
「目出度い」の言い換え表現
使う場面や文脈に応じて「目出度い」という言葉は別の表現に言い換えられます。
ここでは、結婚や出産などのお祝いの場面や、日常生活でのちょっとした喜びや感謝を表す場面で使える言い換え表現を紹介します。

お祝い事のシーン
祝い事などの正式な場では、以下のような言い換え表現が使われます。
・喜ばしい
・記念すべき
・祝うべき
・祝福すべき
・喜ぶべき
・慶賀のいたり
〈例文〉
・新たな門出を迎えられたことは、喜ばしい限りだ
・今日は創立50周年の記念すべき日だ
・彼の昇進は、本当に祝うべき出来事である
・彼らの結婚は、まさに祝福すべき出来事だ
・子どもたちの成長ぶりは、親として喜ぶべきことだ
・御社の創業10周年を迎えられましたこと、まことに慶賀のいたりに存じます
日常的なシーン
日常的な会話では、以下のようなやわらかい言い換え表現があげられます。
【ポジティブな意味】
・うれしい
・よかった
・ありがたい
【ネガティブな意味】
・楽天的だ
・能天気だ
〈例文〉
【ポジティブな意味】
・引越しが無事に終わって、うれしい限りだ
・彼が無事に合格して、本当によかったね
・今回のサポートは、忙しいなかで非常にありがたいことだった
【ネガティブな意味】
・彼は問題の深刻さを理解せず、あまりに楽天的だ
・そんな簡単な話を信じるなんて、ずいぶん能天気だ
「目出度い」を正しく使おう
「目出度い」は、「芽が出る」ことを指した当て字です。幸運や成長を祝う意味で使われます。使い方によっては皮肉の意味にもなり得るため、文脈に注意して使うことが大切です。
フォーマルな場では古風な「目出度い」、日常では親しみやすい「おめでたい」を使い分けるとよいでしょう。また、シーンに応じて言い換え表現を使えば、より自然な表現ができます。
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