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この記事のサマリー
・「勧める」は行動や行為を促すときに使い、「薦める」は人や物を推すときに使います。
・行動を促すなら「勧める」、気に入った商品や人を推すなら「薦める」と覚えると迷わず使えます。
・「奨める」は「勧める」の同義語で、「進める」は物事を進行させる意味です。
「本をすすめる」「転職をすすめる」、こうした日常的な表現について、どの漢字を使えばいいか迷った経験はありませんか?「すすめる」を表す漢字は複数あるため、ふと迷ってしまうものです。
本記事では「勧める」と「薦める」の違いを、辞書の定義・使い方の観点から整理します。
「勧める」と「薦める」の違いとは?
「勧める」と「薦める」について、まずはそれぞれの意味を辞書で確認しながら、混同を避けるポイントを整理していきましょう。
「勧める」の意味|行動をうながす「勧誘」に使う言葉
「勧める」は、相手が何かの行動を起こすように促す場面で使います。
辞書で正確な意味を確認しましょう。
【すす・める【勧める/▽奨める】
[動マ下一][文]すす・む[マ下二]《「進める」と同語源》
1 人がその事を行うように誘いかける。勧誘する。「辞任を―・める」「加入を―・める」
2 物を供して、飲食または使用してもらおうとする。「茶菓を―・める」「風呂を―・める」
3 積極的に実行するようにたすけ励ます。奨励する。「資源の有効利用を―・める行政」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
このように、辞書では「人がその事を行うように誘いかける。勧誘する。」と定義されています。
熟語の「勧誘」「勧学」からも汲み取れるように、「勧める」には「誘う」「励ます」の意味を含みます。「早めに休むことを勧める」のように、特定の行動を助言・提案する言葉です。
例文:「積極的に留学をするよう勧める」
「薦める」の意味|いいと思う人や物を紹介する場面で使う言葉
一方の「薦める」は、人や物そのものを、いいものとして推す場面で使います。
すす・める【薦める】
[動マ下一][文]すす・む[マ下二]《「進める」と同語源》ある人や物をほめて、採用するように説く。推薦する。「有望株を―・める」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
熟語の「推薦」「推挙」からもわかるとおり、特定の人や物の採用・選択を提案する意味があります。
例文:「この本、お薦め!」
判断のポイントは「行動」か「人・物」か
判断に迷ったときは、「何かをすること(行動)」なのか、それとも「何かを選ぶこと(人・物)」なのかを意識してください。
例1:「転職をすすめる」→「行動」を促すため、「勧める」
例2:「この化粧水をすすめる」→「物」を推すため、「薦める」
参考:『デジタル大辞泉』・『日本国語大辞典』・『使い方の分かる 類語例解辞典』(すべて小学館)

関連語との違い|「奨める」と「進める」
「すすめる」と読む言葉には、「勧める」「薦める」だけでなく、「奨める」「進める」といった同音異義語も存在します。それぞれの違いを整理していきましょう。
「奨める」との違い|「勧める」の同義語
「奨める」は「勧める」と辞書で同義語として扱われます。いずれも、「相手に何かをするとよいと伝える」という意味で、「すすめる」という行為に違いはありません。
熟語「奨励」の意味が「いいこととして、それをするように人に強く勧める」であるように、啓発活動などで使うことがあります。
例文:「農業の近代化を奨める」
「進める」との違い|物事を前に進める行為を表す
「進める」は、「物を前へ動かす」「物事を前へ進行させる」といった動作や進行の意味を持ちます。
これは、人に対して何かを促す「勧める」や推薦する「薦める」とは意味が異なり、物事の「進行」、「前進」、または位置・時間の「移動」を表します。
例文:「時計を5分進める」
参考:『デジタル大辞泉』・『日本国語大辞典』(ともに小学館)
使い分けに自信が持てる「勧める」と「薦める」の例文・言い換え表現
日常やビジネスで迷いやすい具体的な場面を例に挙げ、「勧める」と「薦める」の適切な使い方を整理します。
例文でチェック|「勧める」は行動、「薦める」は物・人
漢字の選び方を見極めるには、「行動を促すのか」それとも「物や人を推薦するのか」に注目しましょう。
行動を促す(勧める)例文
「彼に転職を勧めた」
「本を読むことを勧められた」
物・人を推薦する(薦める)例文
「上司にこの本を薦めた」
「プレゼントに地元のワインを薦められた」
「プロジェクトのリーダーとして彼を薦めたい」
「勧める」と「薦める」の言い換え表現
以下のような言い換え表現を使うことで、表現に幅が生まれます。
「勧める」に近い言い換え表現
「勧める」は、「提案する」や「促す」といった言葉に置き換えることができます。
「提案する」|例文:「上司に転職を提案する」
「促す」|例文:「健康診断を受けるよう促す」
「勧告する」|例文:「専門家として勧告する(やや公的な場面で)」
「薦める」に近い言い換え表現
「薦める」は、「紹介する」や「推薦する」といった言葉に置き換えることができます。
「紹介する」|例文:「おすすめの書籍を紹介する」
「推薦する」|例文:「部下を昇進候補に推薦する」
「挙げる」「推挙する」|例文:「候補者としてAさんを挙げる」「候補者としてAさんを推挙する」

英語で「勧める」「薦める」はどう表す?
英語では、“recommend” という単語が、「勧める」と「薦める」両方の意味を持っています。
“recommend”
“recommend”は、あるものや行動を強く勧めるときに使い、レストラン、商品、映画などを「自信を持って紹介する」といった、ありえる利益について述べる前向きな勧告に用いられることが多いです。
例文:
“This book is definitely worth reading. I recommend it.”
(この本は読む価値があります。おすすめですよ。)
“Could you recommend a nice café around here?”
(このあたりでおすすめのカフェを教えていただけますか?)
参考:『オックスフォード英語類語辞典』・『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)

「勧める」と「薦める」の違いに関するFAQ
ここでは、「勧める」と「薦める」の違いに関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「勧める」と「薦める」の違いが分かりづらいのですが、簡単に説明できますか?
A. 「勧める」は行動や行為をうながす場合、「薦める」は物や人を推す場合に使います。
迷ったときは、まず「行動」か「人・物」のどちらをすすめているのかを判断してみてください。
Q2. 「勧める」の敬語表現は何がありますか?
A. 「お勧めいたします」「ご案内申し上げます」などが敬語表現として挙げられます。
場面に応じて、「ご参考までに〜をご紹介いたします」など、柔らかい表現を選ぶことも適しています。
最後に
「勧める」と「薦める」は、どちらも「すすめる」と読みますが、その対象が「行動」なのか「人・物」なのかによって漢字を使い分けることができます。
丁寧で正確な言葉選びは、あなたの信頼感のあるやり取りに直結します。ぜひこの記事の内容を生かして、言葉の選択に自信を持ってくださいね。
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