「本をすすめる」「転職をすすめる」と文章で書くとき、どの漢字を使えばいいか迷ったことはありませんか? 日本語の「すすめる」には、「勧める」や「薦める」などさまざまな漢字があります。しかし、正しく意味を理解して、使い分けられている人は案外少ないのではないでしょうか。そこで本記事では、「勧める」と「薦める」の違いや使い方、英語表現などを解説します。
「勧める」と「薦める」の意味
まずは、「勧める」と「薦める」の意味をそれぞれ見ていきましょう。
「勧める」の意味
「勧める」には、「人がそのことを行なうように誘いかける」という意味があります。わかりやすく言えば、相手に対して「〜してみたら?」と行動するよう促すということです。「勧誘」という熟語に使われていることからも、その意味合いが理解できますよね。
「勧」という漢字には、力という文字が含まれていることから、「合わせて揃うように力を尽くすこと」を意味します。一緒に力を合わせて何かに取り組んだり、相手を励ましながら教え導くという意味合いが込められた言葉です。
「薦める」の意味
「薦める」には、「ある人物やものを褒めて、採用するように説く」という意味があります。わかりやすく言えば、「この本、面白くておすすめなんだ」と自分が良いと思うものを相手に薦める時に使います。「推薦」という熟語からも、その意味合いが理解できることでしょう。
「薦」という漢字には、「さしあげる」「人物を選び、推す」という意味があります。もともとは、神聖な動物である神獣やそれが食べる草を意味しました。神様が食すものをきちんとそろえてお供えしたことから、それがやがて「良いものを差し上げる、すすめる」というニュアンスで用いられるようになったとも考えられますね。
「勧める」の使い方を例文でチェック!
「勧める」は、どのようなシーンで使われるのでしょうか? 「勧める」が持つ、「行動を促す」という特徴を頭に入れて見ていきましょう。
1:足腰が弱ってきた母にスイミングクラブへの入会を勧めた。
何かのグループや組織に加入するように促す時にも、「勧める」を使います。体力をつけたい、同じ趣味を持つ人と出会いたいなどの気持ちからクラブへ入会する人も多いでしょう。新しいことに挑戦することは誰でも勇気がいるもの。相手からの一言がきっかけで、行動に移すことも珍しくありません。
2:不祥事を起こした大臣に周囲は辞任を勧めた。
女性問題でスキャンダルを起こしたり、会社の金品を横領したりするなどのニュースはよく耳にするもの。市民からの投票で選ばれた議員であれば、その行為を糾弾されるのは尚更です。なかなか当事者が認めない場合、周囲が責任をとって辞任するよう勧めることもあるでしょう。
3:息子は父親に対して生命保険への加入を勧めた。
家族や友人に、「〜してみたら?」と行動するよう促す機会は多いはず。例文だと、息子が父親の健康や将来を案じて、保険への加入を勧めている様子がイメージできますよね。歳をとると慣れない手続きをしたり、新しいことに挑戦することが億劫になるもの。なかなか行動に移さない相手を説得するのは骨が折れますよね。
「薦める」の使い方を例文でチェック!
続いて、「薦める」の使い方を見ていきましょう。
1:夏休みに、先生から薦められた本を読むことにした。
自分または相手が「良い」と思ったものを、紹介するときに「薦める」を使います。この例文だと、先生から「この本はためになるから読んだ方が良い」と薦められたのかもしれませんね。大人になっても、自分が好きなものは誰かにおすすめしたくなるものです。
2:先輩は、今回のプロジェクトのリーダーとしてAさんを薦めた。
ビジネスシーンでは、面接で人を採用したり、チームのリーダーを決めるなど、人を選ぶ機会が多いものです。誰かの働きぶりを見て、「この人は優秀だから、この部署にぴったりだと思う」と推薦することもしばしばあるでしょう。このように、採用すると良いと思う人を相手に伝える場合にも「薦める」が適切です。
英語表現
英語では、「recommend」という単語が、「勧める」と「薦める」両方の意味を持っています。ここでは、「recommend」の2つの意味について詳しく紹介しましょう。
「勧める」という意味での「recommend」
「recommend」は、「(すべきことを)勧める」という意味があります。そのため、日本語の「勧める」と同じように、「相手に行動するよう促す」際にも使うことができるでしょう。
(例文)
・It is strongly recommended that the machines be checked every year.(機械を毎年点検することを強くお勧めします)
・He recommended reading the book before seeing the movie.(彼はその映画を見る前に、原作を読むことを勧めた)
「薦める」という意味での「recommend」
「recommend」には、他にも「(人や物事を)推薦する」という意味があります。まさに日本語の「薦める」と同じですね。相手の人柄や、物が持っている背景などをよく理解した上で、「あなたにこれを薦めたい」と思った時に使うのがポイントです。
(例文)
・I recommend the book to all my students.(その本を自分のすべての学生に薦めています)
・The hotel’s new restaurant comes highly recommended.(そのホテルの新しいレストランは、たいへんお薦めです)
・Can you recommend a good hotel?(いいホテルを推薦していただけますか?)
最後に
「勧める」と「薦める」の違いは理解できましたか? 両者の違いは「すすめる対象」であり、行動するようすすめる時には「勧める」を。人やもの自体をおすすめする時には、「薦める」を使います。迷った時には、その行動が「勧誘しているのか?」「推薦しているのか?」と考えると、正しい漢字を導き出せるでしょう。この機会に、正しい意味と使い方を覚えて、自信を持って使い分けてみてくださいね。
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