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2024.05.02

「人口に膾炙する」の意味と読み方を知っていますか? 使い方も紹介

「人口に膾炙する」は、話題になり広く知れ渡ることを表す言葉。文学作品などで登場しますが、一般的には知られていない言葉でしょう。この記事では「人口に膾炙する」について、意味や使い方などを紹介します。

「人口に膾炙する」の意味と読み方

「人口に膾炙する」という言葉を、初めて見たという人もいるでしょう。漢字を見ても、意味や読み方を推察するのは難しいかもしれません。日常的に使うことは少ないですが、由来がユニーク。意味や使い方とともに把握しておくといいですね。まずは、意味を紹介します。

辞書で調べました

人口(じんこう)に膾炙(かいしゃ)する
読み方:じんこうにかいしゃする

《膾(なます)と炙(あぶりにく)とが、だれの口にもうまく感じられるところから》人々の話題に上ってもてはやされ、広く知れ渡る。「—した名言」

『デジタル大辞泉』(小学館)より引用

この場合の「人口」は、人の噂や世間の評判という意味を表します。「膾炙」とは、世の人々の評判になり、知れ渡ることの意。みんなに知られて人気者になることや、多くの人の話題にのぼることなどを表す際に用いられる言葉です。

(c) Adobe Stock

由来を紹介

「膾炙」を構成するのは、「膾(なます)」と「炙(あぶりにく)」。いずれも見慣れない漢字ですよね。

「膾」とは、貝や魚、野菜などを刻んで生のまま調味料であえた料理のこと。「炙」は、火であぶった肉を指します。いずれも多くの人が好む料理であることから、「人の口を喜ばせる=人の口にのぼって評判になる」という使い方をするようになったとされています。

食べ物のことが人の評判を表す言葉に転じるとは、ユニークですよね。

「人口に膾炙する」と使うようになったのは、中国の故事がきっかけのようです。唐時代の詩人である林嵩(りんすう)が『周朴詩集序』で述べた一節から、このような使い方をするようになりました。

「人口に膾炙する」はどう使う?

「人口に膾炙する」の使い方を見ていきましょう。例文を紹介しますので、参考にしてくださいね。

例文をチェック

《例文》
・その作家はあらゆる年代に読まれているから、政治家より人口に膾炙している
・昨日まで無名の選手だったのに、あっという間に人口に膾炙した
・スマートフォンはすっかり人口に膾炙し、今や生活必需品になっている
・多くの人に好まれ人口に膾炙する映画と言えば、「スターウォーズ」だろうと私は思う

例文はいずれも「人々に広く知れ渡る」ことを意味します。何かしらのきっかけで作家や選手が広く知られるようになるのは、よくあることと言えるでしょう。生きる上で欠かせない存在のスマートフォンは、ある意味インフラの一つと言えるかも。また、映画や音楽など、広く知られて愛される作品に対しても「人口に膾炙する」を使うことができます。

他の表現を紹介

「人口に膾炙する」は、「人口膾炙(じんこうかいしゃ)」「膾炙人口(かいしゃじんこう)」と表すこともあります。いずれも「人口に膾炙する」と意味は同じ。使い方もほとんど同じと考えてください。

(c) Adobe Stock

会話で使う場合

「人口に膾炙する」を会話で使う場合の例を紹介します。ヤマダさんとサトウさんが将来の夢について語り合っているとイメージしてください。

ヤマダ「サトウさんの夢って何?」
サトウ「私のつくった作品を多くの人に知ってもらうことだよ」
ヤマダ「人口に膾炙するような作品をつくりたいんだね」
サトウ「その作品が100年後も残っていたら、言うことないわ」
ヤマダ「それはすごい」
サトウ「実現するかどうかはさておき、まずは願うことからはじめないとね」

サトウさんは「願うこと」の大切さを知っているようですね。夢実現に向け、すでにスタートを切っているのかもしれません。

「人口に膾炙する」に似た言葉

ここからは「人口に膾炙する」に似た言葉を紹介します。「人口に膾炙する」はあまり知られていない言葉ですので、会話などで使っても意味が通じないかもしれません。その時は次に紹介する言葉に言い換えるといいでしょう。

「脚光を浴びる」

「脚光を浴びる」は、世間の注目の的となることを示す言葉。「きゃっこうをあびる」と読みます。「人口に膾炙する」より知られている言葉ですので、言い換えに適していると言えるでしょう。

《例文》彼は¬脚光を浴びるようになったが、変わらず謙虚だ

「ブレークする」

急に人気が出ることを「ブレークする」と言います。英語の「break」がカタカナ語として浸透し、日常的に使われるようになりました。「ブレイクする」と表記するのもOK。どちらを使っても問題ありません。

《例文》昨年日本でブレークしたバンドだが、いよいよ世界進出するようだ

「持て囃される」

「持て囃される」とは、多くの人に褒め称えられたり、厚遇されたりするさまを表します。読み方は「もてはやされる」。「持て囃す」の受け身形です。

《例文》彼女が持て囃されるようになったのは、つい最近のことだ

(c) Adobe Stock

「ブームになる」

「ブーム」は英語の「boom」がカタカナ語として浸透した言葉。急に熱狂的な人気の対象になることや、一時的に盛んになることを表します。「ブームになる」「ブームを呼ぶ」「◯◯ブーム」のように使うことが多いでしょう。

《例文》フランスで「男はつらいよ」が高く評価され、「フーテンの寅さんブーム」が巻き起こった

「取り沙汰される」

「人口に膾炙する」は基本的にポジティブな意味合いで使われますが、「噂になる」という意味で用いられることがあります。この場合は、広く知られるというよりも、世間で口々に噂されることというイメージになるでしょう。

この意味で「人口に膾炙する」を使う場合は、話題に取り上げられたため処置の対象になるさまを表す「取り沙汰される」が適しています。

《例文》以前から取り沙汰されていた人気アイドルグループの解散だが、どうやら今日公式発表されるらしい

「口の端に上る」

噂になる、話の種になるという意味の「口の端に上る」も、「人口に膾炙する」の言い換えに使うことができます。「くちのはにのぼる」が正しい読み方ですので、間違えないようにしてください。

《例文》社長が退陣するらしいと社内で口の端に上りはじめ、みんなソワソワしている

最後に

「人口に膾炙する」について、意味や使い方、似た表現を紹介しました。あまり見聞きしない言葉かもしれませんが、実は文学作品によく登場します。芥川龍之介や福沢諭吉などの作品に出てきますので、意味などを把握しておくといいかもしれません。漢字の書き間違いや読み間違いをしやすい言葉ですので、注意したいですね。

TOP画像/(c)Adobe Stock

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