皆さんは、ギリギリのところで命が助かった…! というような危機的な体験をしたことはありますか? 事故や病気などで命拾いしたことを「九死に一生を得る」と表現します。本記事では、「九死に一生を得る」の意味や使い方、「一命を取り留める」などの類語、英語表現を解説します。
「九死に一生を得る」の意味
「九死に一生を得る」は、「きゅうしにいっしょうをえる」と読みます。意味を辞書で確認していきましょう。
ほとんど命が助かりそうもないところをかろうじて助かる。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
10のうち9まで死ぬと思われていた中で、死なずに助かったことを「九死に一生を得る」と表現します。とても命が助からないと思われるような事件や事故、病気などの災難に遭った人に対して使われることが大半です。
使い方を例文でチェック!
一体どのような状況で「九死に一生を得る」が使われるのか、一緒に確認していきましょう。
1:猟師の田中さんは、山でクマに襲われたが九死に一生を得た。
山の中で野生のクマに襲われたにも関わらず、命が助かったのは、奇跡的なこととも言えるでしょう。山は助けてくれる人が周囲にいない環境であり、警察や救急隊が来るまで時間もかかるため、命が助かる確率はより低くなります。そんな状況で生き延びたことは、まさに「九死に一生を得た」経験ではないでしょうか?
2:部長は自宅で心筋梗塞で倒れたが、九死に一生を得たそうだ。
重い病や突発的な事故などに遭った時にも、「九死に一生を得る」は使われます。突然胸の痛みが襲う急性心筋梗塞は、死亡のリスクが高い病気の1つでもあります。それにもかかわらず、なんとか命を取り留めたことは幸運なことですね。
3:10年前ビル火災に遭いましたが、救急隊に助けられたおかげで九死に一生を得ました。
過去の危機的な状況を振り返って、「あの時は、九死に一生を得ました」と語ることもあります。医師や救急隊、家族などに助けられたおかげで今があるということですね。「九死に一生を得る」を使うことで、当時を知らない人が聞いても、非常に危ない状況だったということが想像できます。
類語や言い換え表現は?
「九死に一生を得る」のように、奇跡的に命が助かったというような意味合いのある言葉は、「一命を取り留める」「命拾い」などがあります。それぞれの意味をチェックしていきましょう。
1:一命を取り留める
失いかけた命を失わずに済んだことを「一命を取り留める」と言います。「取り留める」には、「引き留める、押さえ留める」という意味があるので、なんとか死から引き留めることができた、というような意味合いになりますね。医師や看護師からの、「一命を取り留めました」という言葉を聞いてホッとするシーンが思い浮かびます。
(例文)
・医師たちの懸命な治療のおかげで、父はなんとか一命を取り留めました。
・事故に遭い、一時は死を覚悟しましたが一命を取り留めました。
2:命拾い
「命拾い(いのちびろい)」の意味は、以下の通りです。
[名](スル)危うく命が助かること。また、窮地を脱すること。「適切な手当てで―した」「係員の機転のおかげで―した」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「命拾い」は、病気や怪我を直してもらって助かったという場面で使われる以外にも、窮地を脱した時にも使われます。たとえば、誰かに助けてもらったおかげで大事なものを無くさずに済んだ、という時にも「あの時は命拾いしたよ…」と言ったりすることも。「九死に一生を得る」に比べると、日常会話ではやや広い範囲で用いられる表現です。
(例文)
・海で溺れかけたが、救命士のおかげで命拾いした。
・海外でスリにあったけど、キャッシュカードは盗まれずに済んで命拾いしたよ。
3:生き延びる
「生き延びる」の意味は、以下の通りです。
[動バ上一][文]いきの・ぶ[バ上二]死ぬはずのところを助かって命を長らえる。長生きする。「戦火を逃れて―・びる」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
命が危ない状況を切り抜けて助かったことを、「生き延びる」と言います。例えば、災害で食糧や支援物資が十分にない中1週間を乗り切ったという場合に、「苦しい中1週間生き延びた」と表現することも。生と死ギリギリの危機的な状況を経験したことが窺えますね。
(例文)
・祖父は戦火の中を生き延びたそうだ。
・無人島でのサバイバル生活をなんとか生き延びた。
英語表現は?
「九死に一生を得る」を英語で表現したい場合、どのような言葉が適切なのでしょうか? 例えば、「narrow escape」は、「命拾い」「九死に一生を得る」などの意味があります。「narrow」は「かろうじて、やっとの」という意味があり、「escape」は、「逃げる、免れる」などの意味があることから、かろうじて死を免れるというようなニュアンスになりますね。
(例文)
・He had a narrow escape from death.(彼は、九死に一生を得ました)
・He met with a traffic accident and had a narrow escape from death.(彼は交通事故で命拾いした)
・I congratulate myself on my narrow escape.(私が九死に一生を得たのは、実に運がいいと思っている)
最後に
「九死に一生を得る」は、「ほとんど命が助かりそうもないところを、かろうじて助かる」という意味です。100%中90%は死んでもおかしくない状況の中、奇跡的に生還したというような場面で用いられることが多いでしょう。病気や事故などで、壮絶な体験をしたということが窺い知ることができる表現です。
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