狼藉とは?
狼藉は「ろうぜき」と読みます。まずは、狼藉の2つの意味や、言葉の由来を見ていきます。
狼藉の2つの意味
狼藉には、次のような2つの意味があります。
・物が乱雑に取り散らかっている様子
・無法で荒々しい振る舞い
ろう‐ぜき【×狼×藉】
出典:小学館 デジタル大辞泉
《「史記」滑稽伝による。狼おおかみは寝るとき下草を藉ふみ荒らすところから》
1.[名]無法な荒々しい振る舞い。乱暴な行い。「狼藉を働く」「乱暴狼藉」
2.[ト・タル][文][形動タリ]物が乱雑に取り散らかっているさま。「落花狼藉たる公園」
狼藉という言葉が日本で浸透したあと、という意味が転じて、無法で荒々しい振る舞いという意味も持つようになったとされる説もあります。無礼な振る舞いに対し、非難のニュアンスが込められている表現といえるでしょう。
言葉の由来
狼藉は、中国の歴史書である「史記」の「滑稽伝」に由来する言葉です。狼藉の「狼」は動物の「おおかみ」のほか、「乱れる」という意味があり、「藉」には「敷く」や「踏む」という意味があります。
「滑稽伝」の中では、狼が寝るときに下草を踏み荒らす様子から、物が乱雑に取り散らかっているという意味で狼藉という言葉を使っています。
狼藉は、主に「狼藉を働く」という使い方をする言葉です。「無法で荒々しい振る舞い」という意味で使われることが多いでしょう。
狼藉を使った言葉
狼藉は、「狼藉を働く」のほか「狼藉者」「狼藉日」という使い方をすることもあります。
ここでは、それぞれの読み方や使い方を解説します。
狼藉者
狼藉者は「ろうぜきもの」と読み、乱暴な振る舞いをする者という意味です。狼藉人と呼ぶ場合もあり、意味は同じです。「狼藉者には裁きがあるだろう」といった使い方をします。
時代劇では乱暴を働く者を「狼藉者」と呼ぶ場面がよく出てきて、聞いたことがある方も多いでしょう。反対に、現代では「狼藉者」あるいは「狼藉人」と呼ぶ場面は少ないかもしれません。
狼藉日
狼藉日は「ろうじゃくにち」と読みます。狼藉日だけ「ろうぜき」ではなく、例外的に「ろうじゃく」と読むため注意しましょう。
狼藉日と書く場合、一般的な狼藉の意味ではなく「万事に凶であるという悪日」という意味で使います。
大禍日(たいかにち)・滅門日(めつもんにち)と並ぶ3悪日のひとつで、狼藉日にあたる日は仏事や重要な行事に向かないとされています。
狼藉の例文
狼藉を使った例文をいくつか紹介します。文脈を通して、狼藉の正しい使い方を押さえましょう。
・彼は仕事がよくできて優秀な社員だが、整理整頓が苦手で机の引き出しの中は狼藉を極めている
・高校時代の彼は非常に素行が悪く、教師からは狼藉者と呼ばれていた
・最近の住民は皆穏やかで平和に暮らしており、目に見えた狼藉を働く人間はいなくなった
・留守にしている間、ペットに部屋中を荒らされてしまった。本当に狼藉者だ
狼藉を使った四字熟語
狼藉は、四字熟語でも多く用いられています。一緒に覚えておけば、語彙が広がるでしょう。
落花狼藉(らっかろうぜき)
「落花」は花がバラバラに散らばることを指し、狼藉と組み合わせることで花びらが無秩序に乱れ散った様子を表しています。また、花を乱暴に散らすことから転じて、女性や子どもに乱暴を働くという意味もあります。
乱暴狼藉(らんぼうろうぜき)
乱暴と同じような意味を持つ狼藉を組み合わせることで、荒々しい振る舞いをさらに強調した表現です。
杯盤狼藉(はいばんろうぜき)
「杯盤」とは、酒を注ぐ杯や皿のことです。とり散らかっているという意味の狼藉と合わせ、酒の席で一面に杯や皿が散らかっている様子を表します。
家内狼藉(かないろうぜき)
家内とは家の中のことで、部屋がひどく散らかっている様子を表す言葉です。
狼藉の類義語
「散らかる」という意味と「乱暴な振る舞い」という2つの意味について、それぞれ類義語や言い換え表現をみていきましょう。
「散らかる」という意味の類似表現
「散らかる」という意味を持つ狼藉の類義語には「混乱」「乱雑」「無秩序」があげられます。「混乱」は、物事が入り乱れて秩序をなくすという意味です。「乱雑」は入りまじっていて無秩序な様子を表し、「混乱」ほどには乱れた状態はひどくないといえるでしょう。
「無秩序」は秩序がない状態で、「散らかる」という意味の狼藉とはほぼ同じ意味です。
「乱暴な振る舞い」という意味の類似表現
「乱暴な振る舞い」という意味の類義語は「暴行」「愚行」「愚挙」「非行」「乱行」などがあげられます。「暴行」は乱暴な行為を指し、「愚行」「愚挙」は愚かな行為という意味です。
「非行」は道理や道徳にはずれた不正な行為という意味で、「乱行」は、道に背いた乱暴な行為を指します。
それぞれの意味の違いを把握し、場面ごとに使い分けましょう。
狼藉には2つの意味がある
狼藉には、もともとの意味である「物が乱雑に取り散らかっている様子」と、日本に伝わってから派生的に使われるようになった「無法で荒々しい振る舞い」という2つの意味があります。
「狼藉を働く」「狼藉者」といった使い方をします。「狼藉日」は独自の意味があるため、覚えておくとよいでしょう。
四字熟語や類義語も一緒に覚えれば、より言葉の理解を深められるはず。例文も参考に、狼藉を正しく使えるようになりましょう。
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