「ご注意ください」を使う場面と使い方
「ご注意ください」は、相手に注意を促す言葉です。ビジネスシーンでも使えますが、「ください」は動詞「くださる」の命令形であり、目上の人には失礼にあたることもあるため注意が必要です。
・床にワックスをかけたばかりのため、滑りやすくなっています。ご注意ください。
・頭上が低くなっています。ご通行の際は、ご注意ください。
身近に危険が迫っているときなどの緊急事態には、丁寧な表現をしつつも軽く命令するニュアンスもある「ご注意ください」は適切な表現といえます。通行人や来場者などの不特定多数の第三者に注意するときなどには、「ご注意ください」を使って注意を換気しても問題はないでしょう。
しかし、相手の立場がかなり上のときには、「ご注意ください」と命令形で注意を促すことは適切とはいえません。次の言葉で言い換えてみてはいかがでしょうか。
・ご注意くださいませ
・ご注意いただければと存じます
・ご注意くださいますようお願い申し上げます
ご注意くださいませ
「ご注意ください」に丁寧の助動詞「ます」の命令形である「ませ」を付けることで、命令形ではありつつも、丁寧な気持ちを込めて表現できます。
・アンケートは裏にも続いています。ご注意くださいませ。
・明日のセミナーではボールペン以外の筆記用具が必要です。ご注意くださいませ。
「ませ」は、「いらっしゃる」や「くださる」「なさる」の後に付けて使うことが一般的です。また、「まし」も同じ意味で使えます。状況に合った言葉を選んで使いましょう。
ご注意いただければと存じます
命令形を使わないで注意を喚起したいときは、「ご注意」に「いただければと存じます」を語尾に付けて表現できます。「思う」や「考える」の謙譲語である「存じます」を使うことで、丁寧かつ相手への敬意を示しましょう。
・明日は定休日のため、明後日以降の対応です。ご注意いただければと存じます。
・チケットを切り離すと無効扱いです。ご注意いただければと存じます。
ご注意くださいますようお願い申し上げます
さらに丁寧なニュアンスを出したいときには、「ご注意ください」に「お願い申し上げます」をプラスしてみましょう。「注意して」と命令するのではなく、注意することをお願いすることで、相手への敬意を表現できます。
・赤い値札がついている商品は返品不可です。ご注意くださいますようお願い申し上げます。
・割引が適用されるのは今日までです。ご注意くださいますようお願い申し上げます。
「ご注意ください」の言い換えと注意点
注意を喚起するケースは多いため、1日に何度も、「ご注意ください」や「ご注意くださいますようお願い申し上げます」などの表現を使うことがあります。あまりにも何度も同じ言葉を繰り返すのは、表現力に乏しい印象を与えてしまうかもしれません。類似している言葉で言い換えてみてはいかがでしょうか。
「ご注意ください」の言い換えに使える表現としては、次のものが挙げられます。
・ご配慮ください
・ご用心ください
・ご留意ください
・ご理解ください
それぞれの使い方やニュアンスの違いについて見ていきましょう。
ご配慮ください
「配慮」とは、心を配ることや心づかいを表す言葉です。こちら側の立場などに心を配ってほしいときなどには「ご配慮ください」と伝えられます。
・これから来場される方もいます。なるべく前方のお席に座るようにご配慮ください。
・多くの方にご来場いただき、お席が不足する恐れがあります。荷物は床かひざ上に置くようにご配慮ください。
ご用心ください
「用心」も、心を配ることや心づかいを表す言葉です。「要心」と表記することもあります。相手に注意を促すときには「ご用心ください」「ご要心ください」と表現してみましょう。
・お足元が滑りやすくなっています。お帰りの際はご用心くださいませ。
・当社の名前を騙った詐欺事件が横行しているようです。ご用心くださいますようお願い申し上げます。
ご留意ください
「留意」とは、ある物事に心をとどめて、気を付けることを意味する言葉です。大切なことを覚えておいてほしいときなどに使います。また、注意事項を列挙するときなどにも、最初や最後に「ご留意ください」と付け加え、注意を促せます。
・ご送付の際には、以下の点にご留意くださいませ。
・不良品に関しては着払いでお送りくださいませ。発送元払いでお送りいただくと、後日、送料をご返金できない点にご留意ください。
ご理解ください
「理解」とは、物事の道理や道筋が正しくわかることですが、他人の気持ちや立場を察するときにも使います。相手にこちら側の気持ちや立場を察してほしいときには、「ご理解ください」と伝えましょう。
・このメールは送信専用です。ご意見やご質問は電話で受け付けております。ご理解くださいますようお願い申し上げます。
・ただいま増産体制を構築していますが、対応までに時間がかかるかもしれません。何卒ご理解くださいませ。
また、「了解」も同じ意味で使えます。
・記念スタンプは搭乗口でのみ押していただけます。何卒ご了解くださいませ。
・ソースは1回のみ、付けてください。ご了解くださいますようお願い申し上げます。
適切な言葉で注意を喚起しよう
「ご注意ください」という表現は、丁寧なニュアンスのある命令形です。注意を喚起するときに用いますが、相手の立場がかなり上のときは、「ご注意くださいませ」や「ご注意くださいますようお願い申し上げます」のように、語尾に「ませ」や「お願い申し上げます」を付けましょう。
また、注意を喚起することが多いときは、何度も「ご注意ください」と表現することになり、語彙不足の印象を与えるかもしれません。「ご配慮ください」や「ご理解ください」などの言葉で言い換えて、表現が単調にならないようにしましょう。
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