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「留意」と「注意」、意味や使い方が違う?
読み方や意味合いがよく似ている印象の「留意(りゅうい)」と「注意(ちゅうい)」ですが、どのように使い分ければいいのか、迷うことはありませんか?
たとえば、取引先に「注意して欲しいこと」を伝える際、「留意」と「注意」のどちらを使う方がいいか、すぐに判断できる人は少ないかもしれません。
「留意」と「注意」は似ていますが、実は明確な違いがあります。まずはそれぞれの意味をチェックしていきましょう。
「留意」について、詳しく解説
ビジネスの場でよく使われる「留意」には、どのような意味があるのでしょうか? 使い方なども見ていきましょう。
「留意」とは、どんな意味?
▷【留意】
ある物事に心をとどめて、気をつけること
《デジタル大辞典》©SHOGAKUKAN Inc.より引用
この場合の「とどめて」は、意識して記憶に残すこと。「留意」は、気をつけたい事柄を意識して記憶に残し、注意を払うことを指します。
「留意」の使い方
「留意」はどのように使うのか、例文とあわせて紹介します。参考にしてくださいね。
・今週末が締め切りとなっております。何卒ご留意いただけますと幸いです。
・この商品にはリスクがありますことをご留意くださいませ。
・季節の変わり目ですので、健康にはくれぐれもご留意ください。
・明日は株主総会を開催いたします。服装にはご留意ください。
「ご留意ください」は敬語表現ですが、人によっては敬意がやや低めと取られることもあります。より丁寧に伝えるのであれば「ご留意くださいませ」「ご留意いただけますと幸いです」のように表現するといいでしょう。
「注意」について詳しく解説
「注意」についても見ていきましょう。「注意」にも「気をつける」という意味合いがあります。
「注意」の意味とは?
▷【注意】
1:気をつけること。気をくばること。
2:悪いことが起こらないように警戒すること。用心すること。
3:気をつけるように傍らから言うこと。
4:ある一つの対象を選択し、認知・明瞭化しようと意識を集中する心的活動。同時に、その他のものは抑制・排斥される。
《デジタル大辞典》©SHOGAKUKAN Inc.より引用
「注意」は、意識を一か所に集中させることや、第三者に対して、相手が気をつけるよう忠告することを意味します。
「注意」の使い方
「注意」はどのように使うのか、例文でチェックしていきましょう。
・パスワードの管理は、くれぐれもご注意ください。
・作業によりマニュアルが異なりますので、ご注意ください。
・この道路は子供がよく飛び出して来るため、注意を払う必要があります。
・室内にいる時でも冷房を上手く使い、熱中症にならないよう注意しましょう。
「注意」は、具体的に気をつける事柄がある場合や、集中して気をつけなければならない場合によく用いられます。
「留意」と「注意」の使い分けとは?
どちらも気をつけることを意味する「留意」と「注意」。使い分けはどのようにすればいいのでしょうか?
「留意」は覚えること、「注意」はより気をつけることを促す
「留意」と「注意」の意味は、似ているようで違います。違いを把握すると、使い分けがしやすくなるでしょう。
「留意」を使うのは、警戒までは行かないけれど、覚えておいて欲しいことがある場合です。「留意」は、「覚えておくこと」を促す言葉と捉えるといいですね。また、伝えたいことが抽象的で継続的な場合も、「留意」を使うことが多いでしょう。
「注意」は、その事柄を用心したり、警戒したりする必要がある時に使います。また、具体的かつ集中して気をつけて欲しい場合は、「注意」を使うのが一般的です。
「留意」と「注意」の使い分けを例文で紹介
「留意」と「注意」の使い分けを例文で見てみましょう。たとえば、健康に対して「留意」と「注意」を使う場合は、次のようになります。
▷健康に留意してください
悪いところはないが、念のため生活習慣などに気をつけて欲しいという意味
▷健康に注意してください
このままだと何かしらの症状が出たり、悪化したりする可能性があるため、注意を払って生活して欲しいという意味
上記の場合、「留意」だと、健康に気をつけることを意識するよう促していますが、「注意」だと、意識だけでなく対策をするよう促していることになります。
相手により強く意識して欲しい、または、意識だけでなく対策をして欲しい場合は「注意」、意識だけでもして欲しい場合は「留意」を使うというように覚えると、使い分けがしやすいかもしれません。
「留意」と「注意」、この使い方はNG
「留意」と「注意」を使う際、気をつけたいことを紹介します。間違えて使うと、相手の気分を害することもありますから、ぜひ把握しておいてくださいね。
目上の人や上司には、より丁寧に伝える
目上の人や上司に対して、「留意してください」「注意してください」と伝えると、人によっては「命令された」と受け取られることがあります。場合によっては、相手が気分を害してしまうということも。
そうならないためにも、「留意」や「注意」を使う場合は、「くれぐれもご注意くださいませ」「ご留意くださいませ」のように、より丁寧に伝えることを意識するといいですね。
「細心」は、「留意」には使わない
「注意」の場合、「細心の注意を払ってください」のように「細心」という言葉を一緒に使いますよね。「細心」は、細かな点まで注意を払うことを意味する言葉。「細心」と「注意」を一緒に使うことで、より細かいところまで意識して気をくばるよう促す意味合いになります。
しかし、「留意」の場合、「細心」は一緒に使いません。そもそも「留意」は、抽象的な事柄を覚えておくよう促すこと。意味が矛盾することから、「細心」を使うのは「注意」のみになります。
最後に
「留意」と「注意」は似たイメージを持ちますが、実は明確な違いがあります。相手に意識して欲しい・覚えておいて欲しいことは「留意」、覚えるだけでなく対策をする・集中して注意を払って欲しい場合は「注意」を使うのが適切。
ただし、どちらの言葉も、目上の人や上司に使う際は、「命令された」と受け取られないよう気をつける必要があります。それぞれの意味や使い分けを正しく把握し、より適切に使い分けができるようにしたいですね。
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