この記事のサマリー
・「不手際」は、手際の悪いことを指します。
・物の故障や不足には「不具合」「不備」を使い分けます。
・「弊社の不手際により、ご不便をおかけしましたことをお詫び申し上げます」などというように使います。
仕事上のミスや連絡の行き違いを謝罪する際には、「不手際」という言葉が欠かせません。クレーム対応の場面などでは特に、曖昧なまま使ってしまうと信頼を失いかねません。
本記事では、「不手際」の定義、正しい使い方、そして状況に応じた言い換え表現の工夫を紹介します。いざというときに落ち着いて謝罪ができるよう、知識を整理します。
「不手際」とは?
まずは、「不手際」の正確な意味と、基本的な使い方を整理しておきましょう。
「不手際」の読み方と意味
「不手際(ふてぎわ)」は、手際が悪いこと、やり方がよくないことを意味します。辞書では次のように説明されていますよ。
ふ‐てぎわ〔‐てぎは〕【不手際】
[名・形動]手ぎわが悪いこと。物事の処置のしかたや結果がよくないこと。また、そのさま。
「司会の不手際で長引く」「不手際な処理」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「手際」に、打消しの接頭語「不」がついた構成で、対応や進行がスムーズでなかった場面を指す表現です。
「不手際」の使用シーン
「不手際」は、以下のような場面で用います。
【謝罪】
「弊社の不手際により、ご不便をおかけしましたことをお詫び申し上げます」
【お詫びと案内】
「先日の不手際につきましては、再発防止策を講じております」
【事前の断り】
「初めての開催につき、不手際があるかと存じますが、ご了承ください」
いずれも「自分側に不足があること」を認める表現として使います。
参考:『デジタル大辞泉』『日本国語大辞典』(ともに小学館)

「不手際」の言い換え表現と使い分け
「不手際」と似た言葉は複数あります。使い方の違いを押さえておくと、謝罪や報告の場面でも、より的確な表現が選べるようになりますよ。
「過失(かしつ)」/「落ち度(おちど)」
「過失」「落ち度」といった語は、自分の非やミスをはっきり認める場面で用います。
「過失」は不注意や怠慢による過ちを指します。法律用語としても使いますよ。
「落ち度」は、手続や仕事の上で不足や欠点があることを意味し、謝罪や反省の意図を明確に示すときに使いやすいでしょう。
例文:
「商品の誤送は、封入作業時の人的過失によるものでした」
「ご指摘のとおり、こちらの落ち度であることを確認いたしました」
「手違い(てちがい)」
「手違い」は、手順や手配のミスを指す言葉で、実務上の誤配送や連絡ミスなどで使いやすい表現です。
例文:
「ご注文内容と異なる商品をお届けしたのは、こちらの手違いによるものです」
「担当部署との連携に手違いがあり、ご連絡が遅れましたことをお詫び申し上げます」
「不備(ふび)」/「不具合(ふぐあい)」
「不備」は、必要なものがそろっていない状態を指し、書類などの内容の不足に対しても使います。
「不具合」は、状態や調子がよくない場合に使います。
例文:
「ご提出いただいた申請書に一部不備がございました」
「システムの不具合により、アクセスができない状況が続いております」
「配慮不足」/「行き届かず」
クレーム対応や丁寧な謝罪の場面では、「不手際」という表現の代わりに、「配慮不足」や「行き届かず」といった言い換え表現が効果的です。ミスを直接的に指摘せずとも、誠意や反省の気持ちを伝えることができます。
例文:
「配慮が足りず、申し訳ございません」
「行き届かない点がありましたこと、深くお詫び申し上げます」
参考:『デジタル大辞泉』『使い方の分かる 類語例解辞典』(ともに小学館)

ビジネスメールでの「不手際」の使い方
「不手際」を使った謝罪メールでは、丁寧な表現以上に、誠実な姿勢が伝わる構成が求められます。特に相手の立場を意識した文面を心がけましょう。
謝罪メールの基本構成
メールは、件名・冒頭・謝罪文・結びの順に構成すると、要点が伝わりやすくなります。
件名:先日の不手際についてのお詫び
本文:弊社の不手際により、ご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした。
結び:今後は同様の事態を防ぐよう、再発防止に努めてまいります。
お詫びの気持ちを補う一文
「ご迷惑をおかけしました」「心よりお詫び申し上げます」などの語句を添えることで、謝意や反省の気持ちがより明確になります。
例:
「ご迷惑をおかけしましたことを、心よりお詫び申し上げます」
「至らぬ点がありましたことを深く反省しております」
避けたい表現
「このような不手際があるとは思いませんでした」といった言い回しは、責任逃れや言い訳と受け取られる可能性があるため避けましょう。
また、「不手際のほどご容赦いただけますようお願い申し上げます」といった、敬語を重ねすぎた表現も、かえって回りくどく感じられることがあります。
謝罪文では、丁寧でありながらも簡潔で明瞭な表現が、相手からの信頼につながります。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)

「不手際」に関するFAQ
ここでは、「不手際」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「不手際」と「手違い」はどのように使い分けるのが適切ですか?
A. 「不手際」は手際が悪いことに対して使い、「手違い」は手順や手配のミスに使います。
Q2. 「不手際」は口頭でも使えますか?
A. 会話でも「先ほどは不手際があり、申し訳ありません」などと使えます。丁寧な口調を保つことが大切です。
最後に
「不手際」は、自分側の対応や処理の不十分さを伝える表現です。意味や使い方を正しく理解し、適切な言い換え表現を用いたり、さらに言葉を補ったりすることで、誠実さを伝えることもできます。今後のメールや会話で、ぜひ活用してみてください。
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