「顛末書」とは? 何のため?
「顛末書」というビジネス文書をご存じですか? ミスなどでトラブルが発生した時に作成する報告書の一つです。ビジネスにミスやトラブルはつきもの。「顛末書」を作成する場面は、不意にやってきます。また、上司として部下から提出されることもあるでしょう。たかが「顛末書」、されど「顛末書」。
内容次第では、評価や今後のキャリアに影響が出るかもしれません。本記事では「顛末書」の目的と書き方について理解を深めましょう!
『顛末書』とは?
はじめに「顛末(てんまつ)」という言葉の成り立ちについてご紹介します。てっぺんや先端を表す「顛(てん)」と、末端を意味する「末」の二文字で「顛末」となりました。意味は、「はじめから終わりまでのいきさつ」のことです。
つまり、「顛末書」は「問題が発生してから、その結果までのいきさつすべてを報告する書類」を指します。
何のため? 誰が見る?
ミスやトラブルが発生した時、状況や経緯、対応について報告するのが「顛末書」です。これを元に状況を客観的に把握・理解し、再発防止策や改善策を検討します。基本的に当事者が作成しますが、組織的なトラブルの場合は、状況を聞き取りの上、上司などが取りまとめて作成する場合もあるでしょう。
「顛末書」の提出先は、上司や社長など事態を把握すべき人物となるのが一般的です。提出後は、上層部や会社で共有され、再発防止策の資料として使われることになります。
書き方のポイントと作成例
「顛末書」の目的がわかったところで、一般的な書き方を見ていきましょう。起きたことをしっかり振り返り、中立の視点で作成することがポイントです。
1:必須記載項目を確認
一般的なビジネス文書と同じく、日付(提出日または作成日)、宛名(報告書を受け取る人物)、作成者(部署、名前など)が必要。タイトルは「顛末書」もしくは「〇〇に関する顛末書」などとなります。
内容に関する主な必須記載項目は、
・発生した日時・場所
・状況・内容
・原因
・対応状況
・再発防止策
です。企業独自のフォーマットがある場合は、それに従い作成します。
2:顛末書の作成例
上記で説明した必須記載項目に沿って、顛末書の具体的な作成例を紹介します。事実のみを粛々と記載しましょう。
発生日時 2023年〇月〇日 14時~15時ころ
発生場所:本社 〇〇部〇〇課
状況・内容:
〇〇部〇〇課Aがお客様へ新商品案内のメールを送信。直後からお客様より電話、メールにて問い合わせがあり、既に実施期間が終了しているイベント情報が含まれた内容を送信していたことが判明した。
原因:送信前の内容確認の不備
対応状況:15時に、誤配信に関するお詫びと訂正メールを配信。一部のお客様から電話にて、厳しい叱責を受けたが丁寧にお詫びと説明をしたところ、最終的に納得頂いた。
再発防止策:
・本業務は主にAが担当し、チェック体制に不備があった。今後は2人以上でのチェックを徹底する。
・データ送信前に上長が確認、承認の上、送信する体制を検討する。
3:書き方のポイント
「顛末書」は報告書の一つです。「事実のみを記載すること」「箇条書きで簡潔にすること」「個人の見解は入れてもよいが事実と混同させないこと」の3つのポイントに気をつけて作成しましょう。また、提出を先送りにすると余計に心証が悪くなることも。提出を要求された場合には、できるだけ早く提出しましょう。
始末書や経緯報告書との違いは?
ビジネスシーンでは顛末書の他にも、始末書や経緯報告書などの提出を求められるケースもあります。それぞれの違いは何でしょうか? この機会に確認しておきましょう。
1:始末書とは?
「顛末書」と混同されることが多い「始末書」。こちらは、ミスやトラブルの当事者が一部始終を書き記した上で、謝罪と反省のため提出する書類になります。過ちを詫びる点が、顛末書と異なる点です。
始末書は会社に提出するものです。まず本文冒頭で、自身が起こした不始末について謝罪。続けて「顛末書」同様、経緯と原因を総括し、自分なりの再発防止策を示します。そして最後に、再発防止のための施策を記載。
なお、労働関係における懲戒の中で、「始末書提出」は戒告・譴責(けんせき)に当たり、一般的には軽い処分と言えるでしょう。とはいえ、処分を受けた事実は人事評価に結びつく可能性も。始末書では、保身に走ることなく自分の非を認め、素直に謝罪と反省の気持ちを伝えることで、信頼の回復に努めましょう。
2:経緯報告書
「経緯報告書」は、ミスやトラブルが発生した際、その状況や経緯について報告するための書類です。こちらも「顛末書」と似ているようですが、作成される時期が異なります。「顛末書」は問題解決後、「経緯報告書」は問題が発生している最中に作成されるものです。発生時の状況、対応、原因などをいち早く報告する、いわば速報版のような役割になります。
3:反省文
「反省文」の提出先は、一般的に直属の上司です。反省文提出の目的は、本人の反省の気持ちと同じ過ちを繰り返さないという意思を確認すること。「始末書」のような処分ではなく、指導の一つと言えるでしょう。会社に報告されるほどでもない軽微なミスなどに適用され、上司の承認で完結となります。
最後に
ビジネスにおいて、どんなに注意してもミスやトラブルをゼロにすることはできません。しかしながら、減らす努力は必要です。もし過去に同様の問題が発生しているなら、当事者だけの問題ではなく、就業環境や組織自体に問題があるのかもしれません。
顛末書の作成という事態はできるだけ避けたいものですが、組織にとって今後の貴重な資料になります。顛末書を書かなければならない事態になった場合は、再発防止のための書類であることを意識して、経緯や原因を正しく客観的に書くよう意識できるといいですね。
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