「手洗いを励行する」などのように使われる「励行」という言葉。なんと読むかご存知ですか? また、似た言葉に、「遂行」や「奨励」などがあり、意味の違いがわからないという方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、「励行」の意味や使い方、類語や「奨励」との違いについて解説します。
励行とは?
「励行」は、「れいこう」と読みます。「れいぎょう」や「げいこう」などと誤読しやすいため、気をつけましょう。辞書には、以下のような意味が記載されています。
[名](スル)決めたこと、決められたことをその通りに実行すること。「早寝早起きを―する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「励行」とは、「決められた規則などを、忠実に実行すること」。「励」は、「励む(はげむ)」と読むように、「精を出して物事に取り組む」というような意味があります。このことから、規則や命令通りにきっちりと実行する時に「励行」が使われます。
使い方を例文でチェック!
「励行」という言葉は、基本的に「〜を励行する」という形で使われます。どんな場面で使われるのか一緒に確認していきましょう。
1:最近風邪が流行っているため、手洗い・うがいを励行しています。
毎年冬になると風邪やインフルエンザなどが流行しますね。学校や職場は、同じ空間に多くの人がいるため、風邪になりやすい環境でもあります。体調を崩しやすい人は、体調管理のために、学校のルール通り手洗いやうがいを行なっていることも多いはず。このように、自ら積極的に実行していることに「励行」を使います。
2:彼は、毎朝3kmのジョギングをすることを励行している。
教育機関や企業などが定めた規則を行なうだけでなく、自分自身が決めたことを実行する際にも、「励行」を使います。「体を鍛えたい」「冬までに5キロ痩せたい」などの目標を達成するために、「毎朝ジョギングする」というマイルールを設けている方もいるのでは? ただ単に行なうのではなく、目的を達成するために熱心に行なうことが、「励行」の特徴です。
類語や言い換え表現はある?
「励行」とよく似た意味を持つ言葉に、「厳守」や「遵守」「遂行」などがあります。共通する部分は多いですが、決まりの範囲や強調される意味合いがそれぞれ異なります。言葉の意味をひとつずつ確認していきましょう。
1:厳守
「厳守(げんしゅ)」の意味は、以下の通りです。
[名](スル)命令や約束などを、きびしく守ること。「規則を―する」「時間―」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「厳守」とは文字通り、決まりを厳しく守ること。「時間厳守」「締切厳守」などと言いますよね。社会では、「約束の10分前には到着する」「締切日前には、必ず書類を提出する」などのルールが定められているもの。そのような決まりを徹底的に守る時に「厳守」が使われます。
自分自身が決めることもある「励行」に対して、「厳守」は上が一方的に定めた規則に従うことが多いでしょう。会社が決めた規則を破ると、何かしらのペナルティが発生する可能性もありえます。
(例文)
・その日は、朝から会議があるので、時間厳守でお願いします。
・隊長は、チームに入隊したからには規則を厳守するよう隊員に伝えた。
2:遵守
「遵守」は、「じゅんしゅ」と読みます。意味は、以下の通りです。
[名](スル)法律や道徳・習慣を守り、従うこと。循守。「古い伝統を―する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
自分の属する企業や、教育機関のルールを守るときに使われる「励行」や「厳守」に対して、「遵守」の対象は、「法律や道徳、習慣」などのより広範囲に及びます。古い伝統や人としてこうあるべきという手本を忠実に守り、従うという意味合いが込められている言葉です。
(例文)
・酒造りにおいて、古い伝統を遵守することは大切だ。
・父は裁判官ということもあり、格別に法律を遵守している。
3:遂行
「遂行」は「すいこう」と読みます。「ついこう」と読むのは誤りなので気をつけてください。字面が「励行」と似ているため、意味が混同しやすい言葉です。早速確認してみましょう。
[名](スル)任務や仕事をやりとげること。「業務を―する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
物事を最後までやり通すことが「遂行」です。仕事など決められたことを実行することにおいては、「励行」と似ていますが、「励行」には、最後までやり遂げるという意味は含まれません。あくまでも、熱心に実行することに重きが置かれているところが「遂行」との違いです。
(例文)
・後輩は業務を遂行した。
・スパイが計画の遂行を阻んだ。
励行と奨励の違いとは?
「励行」と同じ意味だと勘違いされやすいのが、「奨励(しょうれい)」です。2つはよく似ていますが、比べてみるとその意味合いは異なります。まずは、「奨励」の意味を辞書で確認してみましょう。
[名](スル)ある事柄を、よいこととして、それをするように人に強く勧めること。「貯蓄を―する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
ある事柄を、「〜してみたら?」「〜してみましょう」と人に勧めることが「奨励」です。あくまでも、実行するのは相手で、自分はそれを行ないません。「奨」と「励」は、どちらも「すすめること」「励ますこと」という意味があります。
例えば、銀行が顧客に貯蓄を奨励したり、学校が子供に読書を奨励することが当てはまりますね。すすめる側である企業や団体が主語になり、「〜を奨励した」というように使います。
一方で、「励行」は、先述したように「決めたこと・決められたことを実行すること」。実行する側である、自分自身が主語になるところが違いです。もし2つの意味の使い分け方がわからなくなってしまった時は、「奨励」は「仕向ける」「すすめること」。「励行」は「実行すること」と覚えておくと、わかりやすいでしょう。
最後に
「励行」は、読み方も意味も勘違いしやすい言葉です。今まで、間違って使っていたという場合は、この機会に正しい意味と使い方を覚えてみてください。「厳守」や「遵守」もビジネスシーンでよく登場する言葉なので、違いを押さえておくと役立つはずです。
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