「窮すれば通ず」という言葉を聞くと、なんとなく前向きな気持ちになるかもしれません。辛いときにこそ、光が見えてくるような言葉ですね。ただ、意味を明確に説明するとなると、少し自信がないという人も多いのではないでしょうか?
そこで、この記事では、「窮すれば通ず」の意味や使い方、類似のことわざとの違いを通して、「窮すれば通ず」の持つ奥行きを感じてみたいと思います。
「窮すれば通ず」とは? 意味と由来を解説
まずは「窮すれば通ず」の意味から確認していきましょう。
「窮すれば通ず」の読み方と意味
「窮すれば通ず」は「きゅうすればつうず」と読みます。辞書では次のように説明されています。
窮(きゅう)すれば通(つう)ず
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《「易経」繋辞下から》事態が行き詰まって困りきると、かえって思いがけない活路が開けてくるものである。
「窮する」は、行き詰まることや困りきった状態を指し、「通ずる」は、道が開けるような意味で使われます。つまり、「行き詰まった状況に追い込まれると、案外新たな道が開かれるものである」という意味を持ちます。困難な状況の中で、光を見出してくれるような言葉です。

「窮すれば通ず」の由来は?
「窮すれば通ず」という表現は、中国の古典『易経(えききょう)』の「繫辞下(けいじか)」にある「困窮而通」という言葉に由来します。
困難や苦境に追い込まれたときこそ、かえって新たな道が開けるという考え方が、この一節に込められています。
「窮すれば通ず」の使い方を例文でチェック!
「窮すれば通ず」の意味がわかったところで、具体的な使い方を例文を通して確認していきましょう。
窮すれば通ずとはよくいったもので、思いきって転職したら道が開けた。
思い悩んでいた状況が限界に達し、決断を下したことで前向きな展開が生まれたケースです。「窮したからこそ通じた」という展開がわかりやすいでしょう。
研究が行き詰まっていたが、別の視点から考え直したことで解決の糸口が見えた。まさに窮すれば通ず、である。
自分の力ではどうにもならない局面でも、視点を変えたことで前進できたという場面です。知的活動にも「窮すれば通ず」は使えます。
問題が山積みで気が滅入りそうだったが、一つ一つ整理して向き合っていたら、少しずつ道筋が見えてきた。窮すれば通ず、という言葉が頭をよぎった。
困難な状況の中でも、焦らず丁寧に対処する姿勢によって活路が見えた例です。努力が「通じた」と感じた瞬間を描いています。

「窮すれば通ず」に似た意味を持つ言葉は?
似たような意味を持つ言葉を知ると、「窮すれば通ず」という言葉の背景やニュアンスをより深く理解する手がかりになります。ここでは、共通する考え方を含んだ3つの表現を紹介します。
塞翁が馬(さいおうがうま)
このことわざは、「人生の幸・不幸は予測できず、何がいいことか悪いことかはすぐには判断できない」という教訓を含んでいます。
『淮南子(えなんじ)』の「人間訓」に登場する故事に由来し、不運と思えたことが思わぬ幸運に結びついたという展開が語られます。状況の変化を受け入れながら、柔軟に対応する姿勢をうながす言葉だといえるでしょう。
ピンチはチャンス
日常でも耳にすることのある「ピンチはチャンス」は、「追い込まれた苦しい状況の中にこそ、新たな可能性が眠っているかもしれない」という前向きな視点を示します。思いどおりにいかないときこそ、発想の転換が生まれたり、次の展開へのきっかけになったりすることがあります。

必要は発明の母
「必要は発明の母」は、「必要に迫られることで、これまでになかった工夫や手段が生まれる」といった考えを表しています。困難な状況の中でこそ、新しい知恵や方法が生まれるという意味では、「窮すれば通ず」と通じ合う部分があるのではないでしょうか。
「窮すれば通ず」の英語表現は?
「窮すれば通ず」と似た考え方を伝える英語表現に、“When you are in real trouble, you will find a way out.” という慣用表現があります。
直訳すると「本当に困ったときには、道が見つかる」となり、苦しい状況に直面しても、やがて打開策が見つかるという含みをもった表現です。
英語でも、困難の中から希望を見いだすという感覚は、共通して大切にされているようです。
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)
最後に
「窮すれば通ず」という言葉は、苦しい状況にある人にとって、やさしい励ましとして響くことがあるでしょう。すぐに結果が出ないときこそ、思わぬ展開が生まれることもあるかもしれません。この言葉を思い出すことで、壁の向こうにあるかもしれない変化の芽に、少しだけ目を向けられるようになるのではないでしょうか。
TOP画像/(c) Adobe Stock