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「ヤマアラシのジレンマ」の意味
皆さんは、「ヤマアラシのジレンマ」という言葉を知っていますか? まず、「ヤマアラシ」とは何か説明します。「ヤマアラシ」というのは、体中が鋭いトゲに覆われた夜行性の哺乳動物のこと。見た目はネズミに似ており、長い尻尾も含めると60センチから70センチくらいの大きさの可愛らしい動物です。
「ジレンマ」というのは、ふたつの事柄に板挟みになってしまい、どちらを選ぶこともできなくなってしまう状態のことを意味しています。
「ヤマアラシのジレンマ」は、それを人間関係に当てはめて考えられた心理学用語のことです。二匹のヤマアラシが、親しくなろうとして近づくと、お互いのトゲで傷つけてしまうことから名づけられました。
つまり、「ヤマアラシのジレンマ」とは、「相手と親しくなりたいのに、近づきすぎて傷つけたくない・傷つきたくない」という矛盾と葛藤を意味しているのです。
「ヤマアラシのジレンマ」の語源
このような対人関係における矛盾や葛藤を「ヤマアラシのジレンマ」と名付けたのは、アルトゥールー・ショーペンハウエルというドイツ出身の哲学者です。ショーペンハウエルは、ヤマアラシの姿からこのような寓話を作って説明したとされています。
具体的な「ヤマアラシのジレンマ」の例を紹介
続いては、「ヤマアラシのジレンマ」の具体例を一緒に見ていきましょう。「ヤマアラシのジレンマ」は、特に恋愛関係において起こりやすい現象です。もしかしたら当てはまる人も多いのではないでしょうか。
1:本音で話し合うことが怖くてできない
「本音で話をすると嫌われてしまうのではないか…」、「自分の本心を否定されるのが怖い…」という意識から、本音を隠してしまうことってありますよね。特に、恋人という特別な関係であれば余計本音を言いにくいものです。加えて、本音で話すことによって自分が傷つくだけでなく、相手を傷つけてしまうという恐れも。
ずっと仲良くいたいからこそ、本音で話すことを避けてしまうのです。
2:本当の気持ちと真逆の対応をしてしまう
「ヤマアラシのジレンマ」は、「嫌われたくない」、「傷つけたくない」という気持ちから起こります。例えば、恋人が飲み会に参加しなければならなくなった際に、本当は行かないで欲しいと思っているのにも関わらず、気にしていないように笑って許してしまった経験はありませんか?
他にも、喧嘩をした友人に対して、本当は仲直りしたいのに素直になれず突き放してしまうなど、思っていることと行動が一致しないことも「ヤマアラシのジレンマ」と言えます。
3:すれ違いが起きやすい
「ヤマアラシのジレンマ」に陥ると、誤解やすれ違いが起きやすくなります。先に紹介した例でも分かる通り、思っている事を素直に表現できなくなってしまうため、思ってもいないことで誤解されてしまうのです。
極端な例だと、こちらは好意を寄せていたのに、相手側からしたら嫌われていると勘違いされていたなんてこともあります。
「ヤマアラシのジレンマ」に陥りやすい人の特徴
「ヤマアラシのジレンマ」には、陥りやすい人とそうでない人がいます。「ヤマアラシのジレンマ」に陥りやすい人にはどのような特徴があるのでしょうか。
1:ネガティブ思考
基本的にネガティブ思考の人は「ヤマアラシのジレンマ」に陥りやすいです。何をするにも悪い方向に考えてしまう癖がついているため、思ったことを素直に話すことができずに取り繕ってしまいます。
2:自分に自信が無い
自分に自信が無い人は要注意です。これはネガティブ思考とも関係していますが、「自分が何かをすると、相手に悪影響を及ぼしてしまうのではないか」とマイナスな方向へ考えてしまうため「ヤマアラシのジレンマ」になりやすくなります。
3:プライドが高く頑固
例えば、喧嘩をした際に自分が悪いと思ってはいても自分から謝れない人っていますよね。謝りたいのに謝れない、悪いと思っていても自分の過ちを認めることができない、そういうプライドが高いタイプの人は「ヤマアラシのジレンマ」に陥りやすくなります。
負けず嫌いな人や、完璧主義の人もこの傾向が当てはまるため注意が必要です。
「ヤマアラシのジレンマ」を解決する方法とは?
感情の板挟みになっているのは辛いですよね。「ヤマアラシのジレンマ」に陥ってしまった時は、どのように対処するのが良いのでしょうか。いくつか紹介しますので参考にしてください。
1:思い込みに囚われない
マイナス思考の人は、悪い方向に考えがちなうえ、「こうに違いない」と思い込んでしまうことがあります。だからこそ「ヤマアラシのジレンマ」に陥りやすいのです。
そこで、相手のことに関して神経質になりすぎないように心がけましょう。相手の気持ちは相手にしか分かりません。
分からないことを考え続けても自分が苦しいだけなので、「自分が相手だったらどう思うか」を考えて行動することで「ヤマアラシのジレンマ」を防ぐことができます。
2:焦らない
「ヤマアラシのジレンマ」になるときは、気持ちに余裕が無い時が多いです。相手との距離を縮めようと焦ってしまうと周りが見えなくなったり、自分の気持ちを優先させて相手の気持ちをおざなりにしてしまうことがあります。
そうならないために、焦ってしまう時こそ一呼吸おくようにしましょう。
3:一度にすべてを伝えようとしない
すべて本音をさらけ出さなければならないなんてことはありません。良い人間関係を構築していくには時間がかかります。そして長いスパンでお互いをゆっくりと知っていけばいいのです。少しずつ自分の意見や本当の気持ちを伝えることを意識するようにしましょう。
最後に
「人は人、自分は自分」と適度に人との距離感を保つことが「ヤマアラシのジレンマ」に陥らないようにするうえで重要です。一人の人に固執すると「この人に嫌われたら生きていけない」という気持ちに囚われ、「ヤマアラシのジレンマ」をかえって加速させてしまうことに。
人は、少し本音を言ったくらいで簡単に人を嫌ったりしません。自分の気持ちを尊重して信じてあげること、そして相手を信じる気持ちを大切にしてあげてください。
「ヤマアラシのジレンマ」は寓話ですが、このヤマアラシたちはお互いのトゲがお互いを傷つけない距離はどのくらいかを測り、適切な距離を見つけることで仲良くなります。本音を言うことと距離を保つこと、2つのバランスを取るのはとても難しいです。
しかし、だからこそおざなりにしないで大切にしていきたいですよね。
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